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一九九九年、七の月

作者: 鈴本耕太郎

 一九九九年、七の月。


 これだけで何の話か分かる人も多いと思う。

 最近の若い人達は知らないかもしれないけれど、当時は知らない人がいないくらいに有名な話だった。

 人類が滅亡するとか、恐怖の大王が現れるだとか、そんな話。


 もちろん本気で信じている人なんて、ほとんどいなかったと思う。実際、俺も話のネタ程度にしか思っていなかった。

 でも本音を言えば、少しだけ期待はしていたんだ。

 あり得ないと思っていながらも、心のどこかで願っていた。退屈な日常が終わりを迎え、世界が終末に向う事を。

 たぶん同じような考えの人は、それなりにいたんじゃないかな。知らないけど。

 因みに俺は、今だって日常が壊れる事を本気で願い続けちゃってる訳だ。自分でも自覚してるよ。頭がイカれてるって事くらい。


 とにかく。

 誰もが知っての通り、予言は外れた。


 表面的には。


 ん? 

 なんて思ったかな?

 今このタイミングで気付いている人が、どれだけいるかは分からないけれど、予言は的中していたんだ。


 一九九九年、七の月。

 人類は滅亡し、恐怖の大王が現れた。


 何言ってんだ? そう思うかもしれない。

 でもあんた、証明できるかい?

 それ以前の自分と全く変わっていないと。今も前と同じ人間だと。

 自分の知らない所で、何かが変わってしまった可能性を完全に否定できるかな?

 できないよな?

 ってこれは意地悪が過ぎるか。

 俗に言う悪魔の証明だったかな?

 違ってたらごめん。軽く流してくれ。


 まぁつまり、何が言いたいかと言えばさ、予言にあったあのタイミングで普通の人間はいなくなってしまったって訳。

 全ての人類に、種が植え付けられたんだ。

 恐怖の大王の種がね。


 当然信じられないよな。

 俺だって突然そんな事を言われても、絶対に信じない自信がある。


 でも、事実なんだ。

 今はまだ信じられないかもしれないけれど、あんたも理解する時が来る。あんたの中に植え付けられた種が芽吹いたら、嫌でも信じざるを得ないんだから。


 ビビったか?

 え? そんな事ない?

 そうか、そうだよな。そもそも信じてないんだから、当然か。

 だけど、覚えておいて欲しい。

 いつかあんたの中にある種が芽吹いた時、今まで知らなかった多くの事を理解させられるはずだ。そして同時にあんたは能力を得る事になる。どんな能力を得るかは知らないが、その能力は大いにあんたを助けてくれるはずだ。


 だから。

 

 もしその時、この世界が終末に向かい始めていても決して悲観してはダメだ。

 あんたが手に入れる能力は、これから始まる世界規模のイベントを、盛り上げる為に必要になるかもしれないんだから。

 一緒に荒廃していく世界を楽しもうや。

 化け物共が闊歩する世界を、手に入れた能力でもって切り開いていこうぜ。

 それで、どっかで出会ったら、その時はさ。


 楽しく殺し合おうや。


 まぁ、俺が勝つと思うけどな。


 おっといけない。

 話が逸れちまった。

 

 これから書く事は重要だから、しっかりと覚えておけよ。 

 あんたがどんな能力を得るとしても、それを使用するには原動力が必要だ。その原動力の事を魔力と言うらしい。由来は分からないけれど【解析】の能力を持っている奴がそう言っていたんだから、そういうもんだと思ってくれ。


 さて、その魔力だけど、種が芽吹くと同時に身体の中に溢れてくる。だから心配しなくても大丈夫だ。え? 心配してない? 

 ああ、そうか。そもそも信じてなかったもんな。

 まぁ良いさ。とりあえず最後まで聞けって。


 それでその魔力についてだ。

 実はさ、能力を使用する以外にも使い道があるんだ。むしろこっちの方がメインになる可能性の方が高いかもしれない。

 なに?

 どうしてそんな事を教えるのかって?

 そんなの決まってる。俺が終末世界を楽しむ為だ。自分だけ無双した所で楽しくなんかないからな。実際あんたらより先に、種が芽吹いて能力に目覚めちまったんだ。それだけでも十分有利なのに、持っている情報にまで格差があったらやってられないだろ?

 だから今は素直に聞いとけって。な?


 でだ。

 魔力の使い道は能力以外で、大きく三種類に分類される。


 一つ目は放出。名前の通り、魔力を放出する事が出来る。用途は攻撃がほとんどだと思う。俺は他の使い方を思い付けない。因みに今の俺だと、アスファルトを数十センチ抉るくらいの威力を出せる。


 二つ目は実体化。形のない魔力に実体を持たせる事が出来る。盾のようにする事も、刃のようにする事も可能だ。使い方は発想次第でいくらでも幅は広がる。但し、慣れていない形を作るのには苦労するから、何度も繰り返して身体に覚えさせる必要があるって事を覚えておけよ。


 三つ目は強化。表面を覆って強度を上げたり、体内を循環させて身体能力を上げる事が出来る。因みに強化出来るのは自分だけじゃないからな。


 さて、以上だ。

 まるで漫画みたいだろ?

 俺もそう思う。だけどこれは現実だ。

 あんたはまだ信じる事すら出来ないだろうけど、もうじき分かるさ。後少しで世界中の人達の種が一斉に芽吹くはずなんだ。

 そうなった時、世界は変わる。

 どこからともなく現れた化け物共によって、この文明社会は滅ぼされるんだ。考えただけで、ワクワクしてくるだろ?

 え? そんな事ない?

 それは残念だ。

 俺は今から楽しみで仕方ないんだけどな。


 とにかくさ、近い将来、この世界は終末に向かう事になる。

 今の内から準備をしておいた方が良い。


 信じる信じないは、あんたの自由だけどな。


 そうそう、最後に俺の能力を教えてやるよ。

 俺の能力は【感覚強化】って言って全ての感覚が強化されるんだ。

 ショボいって思ったか?

 まぁ実際地味だとは思うが、かなり使える能力なんだ。五感だけじゃなくて、魔力を感じる第六感っていうのかな? それもしっかり強化されているみたいでさ、魔力の扱いに関しては少々自信がある訳だ。それだけじゃないぞ。臭いとか音なんかが強すぎた時、危険域に達する前に自動でシャットアウトしてくれる優れものなんだ。もし俺と戦う事になったらその事をしっかりと頭に入れておいてくれよな。でないと勝負にすらならないかもしれないからさ。

 自信過剰?

 かもしれないな。一足先に能力を手に入れて浮かれているのかもしれない。反省するよ。


 ああ因みにだけど、俺の能力は自動発動型に分類されていて、意識しなくても常に使用している状態なんだ。このタイプは消費魔力が少ないのが特徴だ。

 もう一つのタイプは、任意発動型。先に少し話した【解析】なんかがこれに当たる。こっちは少しばかり魔力の消費が多いみたいだ。でも自分で発動タイミングを決められるってのはデカいよな。魔力を無駄遣いしなくていいんだからさ。


 さて、これで終わりだ。

 少しばかり情報を開示し過ぎた気もするけれど、どうせ近いうちに分かる事だから大丈夫だろう。


 終末世界であんたに会えるのを楽しみにしているよ。

 せいぜい頑張って生き延びてくれ。


 じゃあな!



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― 新着の感想 ―
[一言] あまりにも評価されなくて病んでしまったのかい?キミもなろうの独自性のレールに組み敷かれることを是としてファンタジー路線を書くの? 気になった点を指摘するなら現代の現実寄りに沿った話の展開にす…
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