貸し切りプール
上上手取は、誰もいないプール が舞台で『ハンバーガー』が出てくるトキメク話を2000文字以内で書いてみましょう。持ち時間は一時間。
深く深呼吸をし、呼吸を整える。足は片方だけ軽く上げクラウチングスタートの姿勢だ。ドックンドックンと心臓の音が頭のなかで鳴り響く。ターンと陸上部が使うピストルの音が鳴り響くと同時に俺は駈け出した。
タッタッタッタ
目標地点まで後数メートルとなったところで俺は身体を深く沈め込みエネルギーを溜め込んだ。そしてそれを解き放った時、走っていた慣性も加わり俺は空中へ投げ出された。投げ出された俺の眼下にはキラキラと輝く……
ドボーンと大きな音を立てて水柱が上がる。そう、俺はいまプールにいる。しかもこの広いプールを独り占めだ。かっかっか、まるでお金持ちにでもなった気分だ。
プールからは運動部が練習しているグラウンドがよく見える。ぷーっ、この暑い中必死にご苦労さん。そっちに比べたらこっちは天国だぜ。
おっと勘違いしてもらってはいけないがこれは正当な報酬というやつだ。この前生徒会でちょっと立て込んだ案件を手伝わされたのだがそれを無事解決したお礼として午前中だけプールを自由に使っていい権利を手に入れたのだ。一週間だけだけどな。
「まったく君というやつは……あそこにいる皆は大会に向けて切磋琢磨しているというのにそのような見下す視線で見やるとは」
「ぷぷう、だってさ~俺はあれだけ苦労したんだぜ? なら報酬としてこれくらいはなぁ?」
「だっ、だから報酬の水着美女として私がいるのじゃないか。しかもこんな紐のような格好で……ああ、お祖父様になんと言いわけすればいいのか……」
俺に遅れて入ってきたこいつは俺が報酬として提示した”水着美女と一緒にプール三昧”というのについてきた水着少女だ。勘違いしてもらってはいけないが紐のような水着と行っているのはただのビキニだからな? まぁ人によってはそう見えなくもないが。
まぁ体型的にはもっとスタイルのいい連中が生徒会にはゴロゴロいやがるんだがなぜか担当になったのがこいつというのは納得がいかない。俺としてはもっとボイーンな感じでキャッキャウフフしたかったんだが。
「おまえ、何か失礼なこと考えなかったか?」
「イイエ、ナニモ」
ふう、あぶないあぶない。胸の事とかって何故か考えてると女子にはバレそうになるんだよなぁ。気をつけねば。
こいつも高校生の標準的なラインは突破してるんだけど他の奴らが”爆”がつくぐらいすごい奴らばかりだからなぁ。
「それはさておきプールを楽しもうぜ! グラウンドの皆を見下しながらな!」
「見下すかどうかはともかく、まぁせっかくだし楽しませてもらうとするか」
この後無茶苦茶泳ぎまくった。
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「あ~遊んだ遊んだ。って、そろそろ飯時か」
「ああそうだな……と、ところで昼食は準備しているのかっ? よければ私が作ってきたんだが……」
「え! うそ、まじまじ? いやー昼飯代浮いたわー。帰りに”ジャング”のコミックス買って帰ろ」
「め、飯代が浮いたって……こうもっと他にないのか? こう……女子高生の手作り弁当だぞ?」
「いやそんなこと言われても……ところで料理できるの?」
「……身内びいきで悪いが家族には好評をもらっている」
そう言って取り出されたものを見ればハンバーガーだった。手作りでハンバーガーってすごいなおい。
「実はサンドイッチを作ろうとしていたんだが気が付いたらこんな形に……」
おい、それを聞いてむっちゃ不安になったんですけど。
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……味は問題なかった。不安にさせておいてこれとはなんか悔しい。
「あ、おい。口元、ケチャップが付いてるぞ」
ハンバーガーを食べ終えまったりしていると横からそんな声がかけられた。
「まったくしょうがないやつだな。ちょっとじっとしてろ」
お、ハンカチで拭ってくれるのか? 女の子にこうゆうことしてもらうのってちょっと憧れるよね。
そしてそのままじっとしてたらこいつは指で頬を拭いあろうことかそれを自分の口元へ運び入れやがった。
「ちょっ、おまっ、自分が何したかわかってんの?」
「ん? 頬についていたものを拭っただけだろ?」
突然のことにドギマギしている俺に対しどこ吹く風と涼し気なこいつになんだか自分が負けたような気分になる。
「そろそろ水泳部の生徒が来る頃だな。おいどうした? そんなにたそがれて」
くっ、いいだろう。今回の報酬期間はまだ後一週間はある。その間に今回の件を倍以上にして返してやる!
後片付けをするこいつの背を見ながら俺はそんなことを決意するのだった。