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黄金の林檎

上上手取は、静寂に包まれた街角 が舞台で『林檎』が出てくる頑張る話を3000文字以内で書いてみましょう。持ち時間は一時間。

 カツン、カツンと誰かが路地裏を歩く音が響き渡る。犬も、猫も、そして人すらもいない静寂に包まれた街中。そのとある交差点の片隅でその出来事は起こった。


「ここがその場所か」


 俺はとある魔術結社に所属するいわゆる魔法使いというやつだ。今のこの世の中には科学が溢れているが魔術が完全に駆逐されたわけではない。無論中には胡散臭い眉唾ものもあるが少なくとも俺の所属する組織では今の科学では説明の付かない不思議な出来事を行使する術を扱っている。


 ある日その魔術結社にとある情報が舞い込んだ。古の悪魔が封印されている場所を見つけた。この情報が敵対組織に漏れ悪魔が開放されようとしている。至急応援を頼む。というものだ。


 悪魔なんてものはよくある対価と引き換えに願いを叶えるというものだが俺達の間では少し意味が異なる。

 我々の間では悪魔というのは純自然エネルギーの塊のことを指すのだ。利用できれば莫大な見返りを得ることができるが制御に失敗すれば手痛いしっぺ返しをくらう。要するに死だ。

 それ故簡単に利用できないように要所要所に封印を行いその力を封じているのだが今回は個人が封印しその所属を組織に報告しなかったものらしい。


 交差点という街角を魔力を通した目で見ると複雑な魔法陣が刻まれているのがわかる。取り立てて目立つことのない”調和”の術式だ。本当にここに悪魔が封印されているのだろうか?


 ザッザッザッザッと人が集団でこちらに近づいてくる音が聞こえる。その音を聞いた俺はひっそりと物陰に身を隠した。


「ここがその場所か」

「はい、そのとおりでございます」

「確かに術式が刻まれているようだが何の変哲もない一般的なものではないか」

「いえいえ、それがですねとあるものを用意すればほうらこのとおり」


 男の一人が胸元から何かを取り出すのが見える。あれは果物のように見えるがなにかおかしい。なんで金色に輝いているんだ?


「古来よりイプシャムの丘で育て上げられた林檎の木の原始種です。これに魔術的な加工をちょちょいと施してやればこのとおり、ここの封印を解くための鍵となるわけです。はい。」


 俺が聞いているとも知らずペラペラと説明ありがとさん。要はあの林檎をどうにかすればこの場はしのげるわけだ。封印関係は俺の専門外だから他の奴らが来るのを待つとしてそれまでこいつらの相手をしますかね。


――――


「そこまでだ。その林檎を渡してもらおうか」


 俺は物陰からゆらりと姿を現すとそう言い放つ。


「何だお前は」

「結社の手のものか? それにしては対応が早過ぎる」


 そうざわめくなよ旦那さん方。この情報は俺の親友がお前たちを撒きながら命をかけて持ち込んだものなんだ。親友の分も合わせて存分に暴れさせてもらうぜ。


 右手に魔装式拳銃、左手に積層障壁杖を携え構えを取る。相手がそれに合わせて動こうとしている間に右手の銃が一撃を放つ。これでまず一人。残りはざっと見て12,3人ってところか。


「ええい、相手はたかが一人だ! 囲み込んでやってしまえ!」


 そう発破をかけるリーダー格の男に向かって一撃を放つ。呪術の弾は男の右頬をかすめて後ろへ飛んでいった。もちろんわざと外した。情報によると敵対組織は呪術で部下を縛り、頭を潰すと残されたものは暴れまわる狂戦士バーサーカーと化す。厄介なことだ。俺が捕縛術式でも使えればよかったんだがあいにくとそんな器用な真似はできない。叩いて壊す。俺ができるのはそれだけだ。結局壊すのだから頭から潰しても良かったんだが手間を考えると手足から潰したほうが効率が良い。


 しばしのにらみ合いの後動き出したのは相手の方からだった。警棒によく似た魔術具を振りかざし俺に襲い掛かってくる。最初の二、三人は楽に倒せたが残りの奴らはこしゃくにもコンビネーションを組んできやがる。後厄介なのが林檎を持っていた奴が放つ魔法だ。遠距離からこちらの隙を突いて襲い掛かってくる。そんな中杖でいなし銃で止めをさしてようやく相手の人数は5人にまで減らすことができた。


「個人の技量はそれほどでもないが統率をとられると厄介だな。ま、残り3人みたいだが」


 残っている内訳は頭と林檎を持っていたやつそして下っ端が3人。頭の男には戦闘能力がなさそうだしこうなればよほどのことがない限り負けることはないだろう。


「どうする? いまなら鍵の林檎を引き渡せば見逃してやってもいいぜ」


 封印という扉に対して鍵の現物があるのなら解析も捗るというものだ。


「ああ、おしまいだ。ならばいっそのこと……」


 林檎を持っていた男がおもむろに林檎を掲げてその手で握りつぶした。

 途端に微弱な振動があたりに響き渡りそしてそれはだんだん力を増してゆく。


「ふはははは。私の手にはいらないのならばこの場で暴走させてくれるわー!」


 見る間に男の体は干からびてゆき砂となって崩れ落ちた。


「な、なにをかってなことを! この場にはまだわしもいるんだぞ!」


 喚き散らす頭の男をほおっておいて俺は術式を再確認する。

 術式は”調和”から”滅び”に書き換えられておりこのままではこの街が一つ瓦礫の山と化すだろう。


 やれやれ、仕方がないな。


 俺は懐からパイプほどの太さの針を一本取り出した。周りの振動はもはや立っているのが難しいほどであり街の滅亡までのカウントダウンは残り僅かと言えた。


 俺にできるのは壊すことだけだからな。


 握りこんだ針に魔力を通す。俺専用に作られた魔術礼装”破壊の穿穴”。その起動を確認し俺は”滅び”に変更された封印の術式にそいつを叩き込んだ。


――――


 あ~ぼろぼろだなぁ。

 あれから数日後。件の街角をみやり俺はそんな感想を漏らす。

 封印されていた悪魔は術式の影響かその力の大半を減じており再封印の必要はないようだ。ただ属性が”滅び”に固定されてしまったため誰が面倒を見るかでもめているらしい。


 とりあえず


――終わったぜ親友


 そう、俺は天国にいる友に黙祷を捧げた……って死んでないけどな!!



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