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動物コンサート

上上手取は、朝陽のあたるコンサートホール が舞台で『コーヒー』が出てくる楽しい話を3500文字以内で書いてみましょう。持ち時間は一時間。

「ふふん~ふん~ふん~」


 ごきげんな鼻歌を奏でながら今日の舞台を一人歩く。ここはKARASUMAコンサートホール。さほど有名ではないがそれでも僕達の初めての舞台となる場所だ。自然と気分が高揚してくる。


「お、はやいな」


 そんなことを言いながら仲間の一人がホールに入ってきた。たしかに今の時間は早朝といっていい。ここが開放されてからいの一番に乗り込んだのだ。空を見上げればいまだ輝かんとばかりに朝陽が照り返している。


「おう、どうにも興奮してしまってな」


 わかる、とメンバーが相槌を打つ。やはりこいつも待ちきれずにここへ来た口か。俺たちの演奏は午後から始まるがどうにも落ち着かない。いかんな、こんな心境おれはまともに演奏ができるのだろうか?


「ほい、缶コーヒー」


 コーヒーの缶が俺めがけて投げつけられる。メンバーの手を見れば缶コーヒーの入った袋がぶら下がっていた。その中にはコーヒーの缶が3つ。俺たち二人が持っている分を合わせればちょうどメンバーの数になる。


「みんな待ちきれずにここに来てると思ったんでな」


 そう行ってニヒルに笑う。こいつはバンドのビジュアル担当でテツという。女の子の受けもいいのでそれを妬むこともあるがそれを差し引いてもこのように気配りのできるいいやつだ。


「あいつらだってきっともうすぐくるさ」


 俺はそう言いながらプルタブをぱちりとひねった。


――――


 コンサートは大盛況のうちに終了した。


「いや~今日のコンサートは楽しかったねぇ。最初はどうなることかと思ったけど」


 そう言うのはボーカル担当のよっちゃん。巧みな話術で周りの場を盛り上げてくれる。今日のコンサートがいい結果に終わったのも彼の話術で盛り上げてくれた部分も大きいだろう。


「……(コクコク)」


 言葉少なげに頷くのはドラム担当のあつし。普段は無口だが全くしゃべらないというわけではない。


「だがまぁ不満がなかったというわけ……いややめておこう。この場では無粋だな」


 そういったのは少し皮肉屋の入ったキーボードのよしろー。いつもひとこと多いのだが今日は珍しく気を利かせたようだ。


「うん、コンサートは大盛況に終わった。ならば次にやることは決まっているな」


 俺は全員を見回しながらそう告げる。


「もちろん」

「当然だろ」

「……(コクコク)」

「当たり前のことを聞かないでください」


「全員で打ち上げに行くぞー!」


――――


 次の日の朝、俺はまたコンサートホールに足を運んでいた。昨日の興奮が収まりきれないのだ。頭上からは朝陽が照り返し朝の清浄な空気が俺の身を引き締める。


 俺は一人舞台の上に立つと楽器も持たずエア演奏を始めた。


 音楽、それは心の叫びだ。俺の魂が世界に向けて吠えている。もっと俺を見てくれと。

 老人、子供、おっちゃん、キャル。様々な人間に向かって語りかけるおれの道具ツールだ。

 俺が語りかければ周りもそれに答えてくれる。声を発せば歓声が帰ってくる。

 そんな昨日のコンサート。あれは楽しかったなー。またやりたいものだ。次はいつできるだろうか?


 一通り演奏が終わるとパチパチパチと拍手が聞こえてきた。おやだれかいたのか。俺は少し恥ずかしくなりながらそちらを見やるとそこには信じられないことにリスが二本の足でたって拍手をしていた。


「やぁやぁ音楽家さん。どうです、私達のために一曲奏でてくれませんか?」


 周りを見れば様々な動物が集まって来ていた。犬猫鳥、馬牛豚、おいおい、ヒョウやライオンとかなんで動物園にいるような奴らまでいるんだよ。


 俺はこの不思議な光景にしばし唖然としていたが気を取り直すとリスのリクエストに応えることにした。音楽家たるもの求められれば答えねばなるまい。


「何かリクエストはあるかい?」

「それじゃぁ楽しい曲をお願いします」


 楽しい曲か。メタルのようなのはあれは激しい曲だろうからダメだろうな。アップテンポでキンキン鳴らさないそんな感じのがいいんだろうが……


 そこでふと俺は気づいた。俺楽器持ってない。今までエア演奏をしていたんだった。そのことに無性に恥ずかしくなる。

 ええい、どうせ見ているのは動物たちだけなんだいけるとこまでやってやるぜ。


「今日は俺達のコンサートに来てくれてありがとう!」


 そう昨日のライブの口上を述べて俺の一人ライブは始まった。


――――


 俺のエア演奏に合わせて動物たちから鳴き声が合わさる。


「ワンワン」

「ニャァニャァ」

「カァカァ」

「ブヒブヒ」

「ヒヒ~ン」

「モー」


 鳴っていない・・・・・・音楽に一体どうやって合わせているのかわからないがいまこのコンサートから発せられている鳴き声は規則性を持って一つの音楽として奏でられている。


「なにこれ! おもしれぇ!」


 俺の意志に合わせて動物たちが合唱を奏でている。最も俺の意志と言ってもただただ魂のままに叫んでいるだけなのだが。


 今までメンバー五人でしか奏でたことのなかった楽曲がこの場にいる動物たちによって全く違う新しい音楽に作り変えられていく。

 それは俺が今まで感じたことのない感覚もので俺の歓声はビンビンに刺激されていた。


「へっ、それじゃぁつぎは新曲いってみようか!」


 気分の高ぶった俺はまだ書きかけの曲を口にする。

 最近俺は行き詰まりを感じ新しい曲が書けなくなっていた。でもこの場所、この雰囲気なら……


「~~♪~~~~♪♪」


 俺の中で納得の行かなかった部分が動物たちの鳴き声で氷のように溶かされてゆく。そう、そうだ! 俺の叫びはこうなんだ!


「~~♪! ~~~~♪!♪!」


――――


 俺が歌い終わると周りの動物たちはいつの間にか消えていた。あれは一体何だったんだ?


 後日、新曲をメンバーに見せると大絶賛された。

 まるで殻を破ったようだとはよっちゃんの語。


 あの日コンサートホールで見た動物たちは一体何だったのだろうか。もしかしたらあのコンサートホールに住む精霊とかだったりしてね。



7ツイートとでたので3500文字。しょっぱなこんなのが出てなげーよ! となった

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