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由衣と祐也  作者: 雪月花
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夏は部活の季節

 期末テストが終われば夏休みまでは部活が忙しい。夏は運動系部活にとっては天王山。重要な大会が目白押しだからね。

 とは言っても、うちの学校は進学校だけあって、それほど強い部はない。それでも、やれるとこまでは頑張るのが高校生ってものです。


 私は地区大会を勝ち抜いて、なんとか県大会には出たものの、1回戦で負けてしまって早々に夏の大会コースが終わってしまった。しかし、去年はそこまで行かなかったことを考えると、ずいぶん頑張ったと思う。ちなみにみどりちゃんは県大会まで届かず、佳代ちゃんは県大会2回戦で敗退という結果だった。


 さて、祐也の野球部だが、こちらは勝ち残っていた。なんと次に勝ったら、準々決勝というところまで来てるもんね、すごい。うちの学校始まって以来じゃないか? これは奇跡でも起きて、甲子園まで行っちゃったりして……とまでは思わないが、快挙なことは確かである。

 私は祐也に、


 「すごいね! 今度勝ったら、準々決勝だね。がんばれ!」


とメッセージを送っておいた。

 すると、少したって祐也から、


 「応援に来てくれるか?」


と返信があった。

 応援? え、野球場まで? と、ちょっとびっくりしたが、


 「うん、行くよ」


と返した。

 祐也からは、


 「がんばる」


と一言だけ返ってきた。うん、がんばれ。

 翌日、佳代ちゃんに応援に行く話をすると、「へーえ」と言ったあと、


 「うん、でもせっかく仲良くなったんだし、頑張ってるから応援に行くか!」


と言ってくれて、結局、みどりちゃんも誘って3人で出かけることになった。


 当日、駅で待ち合わせたところ、私を見て二人はため息をついた。

 なんだろう、この麦わら帽子がいけなかったんだろうか。それとも、クーラーボックスがちょっと古びているのがまずかった?


 「大層な持ち物だけど、由衣、日焼け止めは塗ってきたわよね?」

 「……え? あ、そういえば、塗ってない」

 「あんたって子は。部活の時もいつも言ってるでしょ? 日焼け止めだけは塗れって」

 「う、そういえば、今朝、お母さんもそう言ってた。でも、ほら、帽子もあるし」

 「……仕方ない。小学生みたいだけど、今日は日差しが強いから許す。しかし、女子高生がこんな可愛げの無いクーラーボックスって」


 盛大なため息をつく二人を励まし(?)、駅の改札を抜ける。ホームで佳代ちゃんに日焼け止めを顔に塗りたくられ、やっと電車に乗った。


 球場近くのコンビニで飲み物を買い込み、クーラーボックスに入れたあと、3塁側の応援席に急ぐ。試合はもう始まっていた。3回表、相手の攻撃だった。

 相手は前回準決勝までいった学校。うちのメンバーより選手のガタイもいい気がする。

 みどりちゃんはあまり野球に興味がなかったらしく、ルールもよくわからないと言っていた。佳代ちゃんはお父さんが野球ファンで、よくプロ野球中継を見ているせいで、ルールぐらいはわかるという。

 私は弟が少年野球をやっていたせいもあって(今も中学の野球部だし)、野球は好きだ。野球だけでなく、スポーツ全体「見る」のが好き。このスポーツ観戦好きは、父親の影響だと思う。よく日曜日に二人でマラソンの中継なんか見てると、母に「そんなのよく飽きないわね」と言われる。


 さて、祐也の試合だが、強い学校相手に頑張っていた。1-1だ。


 「あ、がんばってる」


と私が言うと、みどりちゃんが


 「そうなの? 同点でしょ?」


というので、


 「うん、でも相手の学校、強いんだよ。たぶん、うまい子をスカウトして作ったチームだと思うよ。みんな大きいし、リトルリーグやシニアリーグで4番打ってたような子たちなんじゃないかな」


というと、みどりちゃんは、


 「よくわからないけど、強い相手に善戦してることはわかった。相手はスポーツ推薦で入ったような子だらけのキラキラチームなわけね。じゃ、応援してあげなきゃね」


と姉御肌の気質をどーんと出して力強く言った。

 実際、相手方はチアや吹奏楽部なんかが出ちゃって、派手な応援席なんだけど、うちの応援席たるや、選手の家族と友だちが前の方に固まって座ってるぐらいでさびしい限り。なんというか、さすが進学校とでも言おうか……。


 あ、3回表は守りきったらしい。うちのピッチャーは3年生で、別に球が速いとかではないけれど、あまり打たれてないみたい。昨日、県予選のHPで今までの試合経過をチェックしてきたんだけど、大量得点はされていなかった(うちも大量に得点できた試合はなかったけどね)。

コントロールがいいんじゃないかな。それに、きっとキャッチャーが頭がいいんだろう、うまいところに投げているらしく、派手に空振りする選手が多いのだ。


 さて、うちの攻撃。あ、圭くんだ。うまい! 1球目、3塁線ぎりぎりを抜けたヒット。やったね!

 そして、祐也が出てきた。

 う~、粘ってる、粘ってる。こうファールをいっぱい打たれると、ピッチャーはいらつくよね……あ、打った。とられちゃうかな……お、やった! ポテンヒットだ! 祐也、えらい!


 突然、みどりちゃんが立ち上がった。そして、まわりの人に向かって、


 「次のバッター、誰ですか?」


と大きな声で聞く。「大谷だ」と誰かが叫ぶと、彼女は大きな声で、


 「お~おたにっ! お~おたにっ!」


とリズムをつけて応援し出した。それにならって、周りも声を出す。


 「お~おたにっ! お~おたにっ!」


 今まで、あまり声が出なかった3塁側から応援っぽい声が出たことで、選手たちはびっくりして、揃ってこちらを振り返った。

 当の大谷くんも、えっというと顔で振り返ったあと、ちょっと恥ずかしそうに笑った。

 そして、彼はその応援に応えて、ちゃんとヒットを打ち、1点を返した。その後もみんな応援に応えてくれて、なんとうちの学校は強豪校に勝ってしまった。もちろん、5対4という辛勝だったけどね。


 終わったあと、選手は応援席の前に整列して、一礼した。その時、監督の先生は日本史の鈴木先生であることがわかった。あまりスポーツをやりそうな感じの先生じゃなかったので、意外だった。


 私たちは声が枯れそうだったけど、いい気分で帰ることができた。ほんと、勝ちが決まった時は、3人ともじ~んとしてしまったのだ。佳代ちゃんもみどりちゃんも、絶対、次も応援に行くと言っていた。



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