21 キスからはじまるエトセトラ.
瞳をパチパチ音が鳴るんじゃないかってくらいしばたかせた。
いま私は――――。
ぼふん、と頭のてっぺんが噴火しているような音がした。言葉になんてできない、この状況。
「ほんと可愛いね」
額が熱い。どうして熱いのかはわからない。ただ私の鼓動がいつもよりものすごく早く鳴っているのはわかる。
「ねぇ、もっかいしてもいい?」
「え?」
あっ、と思ったときにはまた顔に影ができていた。ふぁさっと、エイヴォンのグレーの髪が私の髪に触れて――――。
何度も私の顔の角度が変わっていく。なぜ?
でも甘くて、少し冷たくて思わず目を閉じてしまう自分がいる。
目を閉じる? だめだ、閉じちゃだめだっ!! 私は慌てて瞼を押し上げて驚いた。ものすごく近くに……。鼻先と鼻先が触れ合うくらいの距離にエイヴォンの顔がある。あるっていうか、これは!!
「ん――――っ!」
声がエイヴォンに呑まれて言葉にできない。私はなにをやってるんだっ!?
「ねぇ、サルファー家の知ってること教えて?」
解放されたかと思いきや、すぐに問いかけられた。
「ほんと……に知らないんだ」
息があがってうまく言葉がでない。
「本当?」
覗いてくる瞳は澄んでいて吸い込まれそうだ。今起きたことを忘れてしまいそうなほどに。
「正直に答えてくれるかな? じゃないと泣かせたくなっちゃう」
笑い声がとても近い。ふわっと私の前髪が浮く。泣かせたくなるとはどういうことだろう。肩を掴んでいるエイヴォンの手の平が心なしか熱い?
「さすが皇女さまだね。このへんも艶があるし滑らか」
「うわっ、ちょ、なっなっ」
肩をさすってきたかと思うとつつーと襟ぐりをずらしてきた。
「やっ、ちょっとなに、やめっ」
慌ててエイヴォンの手を払った。
「もう少し先に進もう?」
払ったはずなのに、再び肩に手をかけてくる。
「エ、エイヴォン、ど、どこかに頭でも打ったのか? さっきから行動がおかしいぞ」
鷲掴みにはされていないので、私はもう一度エイヴォンの手から逃れようと、熱を含んだ指先を摘まんで元の位置に戻そうとした。
「おかしくありませんよ。弱ってるときに失礼、と思ってるけど、こういうときじゃないとシエスタに触れられないから。触れられるときに、触れて触れまくりたいから」
逆にギュッとエイヴォンに指を絡められ握られていた。触れ合ってる場所がとても熱い。どうしてだ?
「そ、それはエイヴォンの勝手じゃないか。私の、私の気持ちは考えないのか?」
「シエスタの気持ち? いやですよ。シエスタの気持ちなんて聞いていたら前に進めないでしょ?」
ため息まじりに言われた。
「前に進めない? なにが?」
キョトンと首を傾げた。なにを前に進めたいというのだろう。
「ほら、あなたはわからない顔をする。直接的に言わないと、行動で示さないと伝わらないじゃないですか」
「だからな……」
絡んだ右手、無防備な左手、どちらもきゅうっとエイヴォンにいっしょくたにされたかと思うと、目の前が薄暗くなった。
頭では嫌だと、結婚を約束した相手でないと許されるべきことではないのに、と認識しているのに――――。
確かに思っているのに。
私の体と心はバラバラになってしまったのだろうか。舌でも唇でも噛んで拒めばいいのにできない自分がいることに気づいてしまった。
「好きなんだ、シエスタ」
「なっ」
「返事は領地の主、ユーガン・サルファーの件が解決したら聞かせてほしい」
「な、あ、ちょっと待て」
すっと視界が晴れて、エイヴォンが離れようとしたので私は思わず裾を掴んでいた。
「なんです?」
「……好きってなんだ?」
私の問いかけにエイヴォンはへなへなと膝から崩れていってしまった。
どうしたというのだろう?
座り込むエイヴォンを首を傾げて見つめるしかなかった。
こ、この内容は「なろう」的に大丈夫でしょうか?(震え




