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17 ここがシャムロック 

 ようやく道が緩やかになり、落ち着いて会話できるほどになったが、三人とも口を開こうとしなかった。


 さっきドクターが言った"お偉方えらがたが牛耳ってる"と緑が少ないことになにか関係があるのか?

 疑問に思ったが、話せる雰囲気がもうそこにはなかったのだ。



 ◇  ◆  ◇  ◆


「シエスタ? 眠っていた? シャムロックに着いたよ」


「え? あ、あぁ」


 いつの間に目を閉じていたのだろう。エイヴォンに肩を叩かれて慌てて目を開けた。馬車の扉は既に開かれて、外の景色が目に映った。

 ――――。そこは寂しい所だった。


 風に砂が巻きあげられて、砂埃がひどい。そしてその風がひどく乾いているように感じる。


「こんなさびれた土地があって驚きました?」


 先に降りていたドクターが乾いた笑いと共に声をかけてきて、言葉の通り、驚いた表情になってしまった……かもしれない。

 どうしてこんなに土地が痩せているのだ?


 緑豊かなことがヘリックス皇国の誇るべきことだというのに。


「わけがわからない、っていう顔ですね。まぁそのことについては、おいおいお話しますが、とりあえず旅の疲れを取りましょう。妻がまだかまだかと準備して待っていますので」


「つ、妻!?」


 声が裏返ってしまった。こんな男に伴侶がいるなんて。


「シエスタ、驚きすぎ」


 ぷぷぷぷ、とエイヴォンに笑われようがどうでもいい。

 蛇のような目で見つめられても平気でいられる女性なんているのだろうか? 早くその人の顔を見てみたい!

 はやる気持ちが抑えられなくて、私は馬車から飛び降りた。

 そこまではよかったのだが、捕縛糸で拘束されたり、痺れさせられたりでどうやら体にあまり力が入らなかったようだ。

 ……不甲斐なく、膝から派手に転んでしまい――――。

 エイヴォンに抱えられてしまっている。

 恥ずかしい。どこかの穴に入ってしまいたいっ!!


「ふふ。役得ですね」


 という嬉しそうな声をもらすエイヴォンにパンチをお見舞いしたい。でも、膝の痛みで小さくジタバタすることしか叶わなかった。


 あぁ、こんな情けない姿を兄やラスチェ、スピノザやシャノンに見られたら、と思うと寒気がする。ニヤついた彼らの顔が思い浮かんで私は慌てて首を振った。


 


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