愛重
ガチャリと玄関の戸が開く音がした。
白夜くんが帰ってきたんだと、咄嗟に私は判断出来た。
「おかえりなさい!白夜くん、お疲れ様です」
「あぁ、ただいま」
白夜くんはいつにも増して疲れているようだった。
今日はゆっくり休ませてあげよう
そう思った私は、彼に食事が出来ている事を伝えた。
彼は、「おう」とだけ言い放ち食卓へと向かう
その数歩後ろを彼の背中を見つめながら
私は歩きついて行った。
「美味しかったですか?」
「あぁ」
「そうですか、よかった」
食事も終わり食器を片づけながらの少しの会話
私にはそれが幸せに思えた。
「白夜くん、好きです」
「おう、ありがとな」
ニコリと笑いながら言うと、
彼はチラリとこちらを見て礼を言う。
「白夜くん」
「何や」
「愛しています」
「・・・・」
いつもなら素っ気ない返事の一つでも返ってくるのに。
今日はよほど疲れているのか。
そう思っていた矢先の事だった。
「俺はお前に、その言葉は返せへんで?」
「別に返して欲しくて言ってるんじゃありません。私が貴方を愛しているから、それを伝えたくて・・・」
「愛だの何だのは、そんな軽い言葉やない」
私は愛も好きも、そんな簡単に言った事などなかった。
何度も彼に言って来た言葉は、
ちゃんと心の底から告げていた。
「お前はその言葉の重さをわかっとらん」
「それは私の愛が、言葉が、重いと言うのですか?」
「あ?せやからな、そう言う意味やのーて」
「じゃあ何故・・・ッ」
そう思っていないなら、重く無いと思うのなら、
何故そんな言葉が彼の口から出たのか。
彼にとって私の言葉が重荷だと言うのなら・・・。
「もういいです。分かりました」
「何がもういいんや、分かってへんやろ」
「もう言いませんし、伝えたりしませんから」
その日から私は、彼に愛を告げ無くなった。
続きませんよ?w