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【祝い】投稿作品100作品達成祝い小説。お嬢様。平民の自分ができるのはここまでです。どうかお幸せに。

作者: naturalsoft
掲載日:2026/10/27

まさか短編で一万文字を軽く超える大作になりました。投稿に時間を頂き申し訳ありませんでした。

時間が掛かったぶんボリュームがあり、楽しめると思います。

(書いていて色々と矛盾がでて書き足したらこうなったのは秘密です!)



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


今、目の前で私の一番の親友が処刑されようとしている。

彼は平民で、私の為に『怨敵』である『貴族の令嬢の顔』を傷つけた罪で処刑されるのだ。

何度も正当防衛あり、処刑はやり過ぎだと訴えたが、向こうには王子も付いていて、覆すことができなかった。


でも、大丈夫。

私を唯一信じてくれた私の親友『カイン』

あなたを絶対に死なせない!

あなたが笑顔で私の幸せを願ってくれるのなら、私もカインの幸せを全力で守るから!


だから諦めないでっ!


「お嬢様。平民の自分ができるのはここまでです。どうかお幸せに」



・

・

・

・

・

・

・

・

・

・

・

・

・



どうしてこんな事になったのか───

この私、シオン・クローバー公爵令嬢は上位貴族として幸せな人生を歩んでいた。


この国の第二王子バルーカ殿下との婚約も決まり順風満帆だった。


私が十歳の時だった。

母の『妹夫婦』が事故で亡くなり、その娘である従姉妹を引き取る事になったのは。


意外な事に母が一番引き取る事に難色を示していた。どうやら姉妹で仲が悪かったらしい。

母の両親は他界しており、仕方なく母が折れた形で受け入れる事になった。


その時、いくつかの【【条件】】を飲ませて仕方なくと言った感じだった。


どうして母があんなに否定していたのか理解出来なかった。最初は姉妹が増えることに喜んだくらいだ。


そして、『ヤツ』がクローバー公爵家にやってきた。

そう『セレン』と言う悪魔がやってきたのだ。


最初は小さな違和感だった。

不注意でセレンが割った花瓶を私が割ったと言って泣いて言ったのだ。

私は否定したが、そういったことが何度も続いていき、だんだんと、父と兄も疑うようになってきた。

お母様だけは信じてくれたけど。

それから一年ほど過ぎると、公爵家ではすっかりと私は引き取った可哀想な娘を虐める姉というレッテルが貼られて、メイド達もよそよそしい態度になった。

そんな時、お母様が体調を崩して倒れてしまったのだ。


私は毎日お見舞いに部屋に行ったけど、お母様はすっかりやつれてしまっていた。それなのに、お母様は無理をして王城の方へ出かけて行った。理由は教えてくれなかったけど、大事な話をするために出かけたと執事の方が教えてくれた。


案の定、体調が悪化したために、王城でしばらく休んでから戻るということになった。

唯一の味方であるお母様がいなくなって、セレンの私を悪者扱いする状況はどんどん酷くなっていった。


ただ、自作自演のところを見た者が出たことでセレンの言うことを疑う者が出てきた。

自業自得だよ。父と兄もようやく私の事を信じてくれた。

しかし、そんなある日事件は起こった。


セレンの食事に毒が混入され血を吐いたのだ。

またセレンは私に盛られたといって、その毒も私の部屋から見つかったと言う。

私は全然知らないと訴えたが、一度疑いが掛かると証拠はなくても、部屋で謹慎するように言われた。


どうして信じてくれないのよ!

セレンが来てから公爵家は滅茶苦茶になったのに!


そんな中、お母様が王城から戻ってきた。

前より体調が良くなったのか、顔色が良かったが、車椅子での移動だった。


「このままシオンをこの屋敷に置いておけません。辺境の領地に送ります」


どうして!?

唯一の味方だったお母様にも見捨てられて、私は静かに涙を流して呆然とした。

コソッ

「ここにいてはあなたの身が危険なの。今は離れて味方を増やしなさい」


!?


ハッとしてお母様を見ました。


「嫌でも13歳になったら学園に入学しないといけないわ。それまで勉学に励み、スキを作らないよう立ち居振る舞いなさい」


私は頷いて、公爵家の屋敷を旅立った。

3日の旅路で、山と森の多い辺境の領地へやってきた。

ここにある公爵家の別荘にて暮らすことになる。


「あの、私のせいでこんな田舎まで着いてきてくれることになってごめんなさい」


目の前のメイドに頭を下げた。


「いいえ、本家のギスギスした空気の屋敷より、田舎の空気の方が美味しいですし、お嬢様は気にしないでください」


セレンの自作自演の嫌がらせを目撃したメイドで、本家に居づらくなったとのことで、私に同行してくれた。

本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「シオンお嬢様、そんな顔をしないでください。貴族はどんな時でもポーカーフェイスでいなくては足をすくわれますよ?」

「うん、気をつけるわ。ありがとうアイリス」


メイドの名前を覚えていたことにアイリスは一瞬驚く顔をしたがすぐに笑顔になった。


「どこまでも付いていきますよ!お嬢様!!!」


荷物を持って馬車を降りると、屋敷の者が出迎えてくれた。


「シオンお嬢様、本家では色々あったと伺っております。ここは『公爵夫人』に雇われた者しかおりません。安心してお過ごしください」

「ありがとうございます。これからしばらくの間、よろしくお願い致します」


深く頭を下げたシオンは後にいる自分と同い年くらいの男の子に気づいた。


「ご紹介致します。私の孫にあたる平民の息子で『カイン』と申します。両親が事故で亡くなってから私が親代わりで育てております。執事として教育しておりますので、何なりとお申し付け下さい」


「あ、あの、カインと言います。よろしくお願いします!」

「これからよろしくね。カイン!」


これがカインとの出会いだった。

それから数年間は別邸で暮らして、マナーや勉強に励んだ。

セレンは自分がこの家の娘だという風に振る舞っているとたまに届く手紙に書いてあった。

甘えるのが上手く、毒のせいで病弱になったといって父と兄はすっかり骨抜きにされているようだった。


別荘での生活は快適で使用人とも友好的な関係を築けていた。

辺境の別荘から出ることはできなかったけど、何度かお茶会で仲良くなった友人に手紙を送って、今の状況を伝えたりもした。とにかくできることはなんでもやったつもりだ。

カインも有能で、学園の特待生制度を使い受験して見事合格したのよ!


「カインは凄いわ」

「いいえ、お嬢様に勉強を教えてもらったおかげです」


カインは金髪の碧眼である美少年だ。

はにかんだ顔がすごく可愛いの。ポイント高いよ!

あら、何を言っているのですかね。オホホホッ!


そんなこんなで月日が流れて、ついに13歳になりました!


カインと一緒に学園に行くと、一部の生徒がヒソヒソとこちらを見ながら言っていました。


カインは目立ちたくないとのことで金髪の髪を『黒に染めて』通学します。この数年で伸びた前髪で目元も隠して地味にしています。私は残念でしたけど、カインがそう決めたのなら仕方がありません。


「………お嬢様、後で原因を調べます」

「別にいいわよ。原因はわかっているから」


セレンがあっちこっちで私に毒を盛られたと吹聴しているのでしょう。

予想通りよ。


クラスの確認をすると、うちの学園は成績順でクラスが分かれる。

一番上がSクラスで、私とカインの通うクラスだ。

書類上の婚約者である第二王子のバルーカ様はBクラスでセレンは一番下のEクラスだった。

私はバルーカ様にも手紙を出したけど、向こうはセレンを毒殺未遂の事を信じている節があったので、それ以降手紙は出していない。


教室に入ると、何人か手紙のやり取りをしていた友人がいた。


「シオン様!久しぶりにお会いできて嬉しいです」


挨拶をしてきたのは侯爵令嬢のシスティーナ・ホワイト様です。

昔から同じ派閥で仲の良い家同士の付き合いです。

現在の王太子である第一王子『ゼイン』殿下の婚約者でもあります。


「システィーナ様、こちらこそご無沙汰しております」


お互いに挨拶を交わしてからカインを紹介した。


「こちらは私の使用人でカインと言います。とても優秀なんですよ」

「カインと申します。シオンお嬢様にお仕えしております。これからもお嬢様の事をよろしくお願いいたします」


システィーナは少し驚いた顔をしたがすぐに微笑んで返した。


「ご実家で厄介なお方を抱えていることは存じております。私は公平に判断してシオンさんがそのような事をする方ではないと『把握』しております。これからの学園生活をよろしくお願いしますわ」


ホワイト侯爵家は建国当時からある名家である。

外交を担当している家で、相手の話を鵜呑みにせず、独自の情報網でしっかりと調べてから判断するので、シオンは前もって手紙で実家を調べて欲しいと依頼していたのだ。故に、裏では一番の協力者となっている。


「こちらもご挨拶してもいいかしら?シオン様、本当にお久しぶりです。シルバー伯爵家の長女ミネア・シルバーですわ」

「本当にお久しぶりです。領地から出ることができず申し訳ありません。お元気でしたか?」

「ええ、でもお手紙をよく頂いていたので、久しぶりという感じがしませんね」

「確かに。これからよろしくお願い致します」



シルバー家も同じ派閥で幼少の頃によく遊んだ仲である。

騎士の家系であり、ミネアも剣術を嗜む令嬢で腕が立つのだ。

正義感の強い彼女もシオンの現状を知って協力してくれる仲である。

そして現在の『王妃』はシルバー伯爵家の娘である。

現在の王妃はミネアの叔母にあたり、昔から可愛がってもらっているそうだ。



ここで少し問題がある。

なかなか子供の出来なかった王妃に、国王は側室を娶った。

それが侯爵家の令嬢で、王妃の実家より権力が強かったのだ。第一王子が生まれるのと、側室が第二王子を生むのが同じ年でもあった。


表向きは第一王子が王太子として国王も認めているが、万が一何かあれば第二王子のバルーカが王太子になる。

側室はまだ諦めていないのか、裏では暗殺者を雇ったりして命を狙っていた。

第二王子を王太子にすべく、クローバー公爵家と婚約したのもそういう政治的意味合いもあり、バルーカがいくらシオンを嫌っても婚約の解消は許さなかった。



「ホームルームの後、一緒に話せませんこと?」

「はい。できればお願いしたいです」

「わかりました。ではまた後で」


挨拶の後は着席して入学式の後、担任の話を聞いて解散となった。

貴族の学校ということもあり、個室のサロンにて話し合いを行った。

カインは入口に立って見張りをしてもらった。


「私のためにご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

「何をおっしゃるのですか。シオン様は被害者であり、守られるべき存在でしょう。気にしないでくださいな」

「そうですよ。それにお家乗っ取りは重罪です。きっと罰を受けますよ」

「………ありがとう」


シオンは涙を流して感謝した。


「それで、どうしてこの場に第一王子殿下までいらっしゃるのですか?」

「ごめんね。急に。私にとってもクローバー公爵家のお家事情は大事な事なんだよ。愛しい婚約者であるシスと従兄妹のミネアが協力するなら私も協力しない訳にはいかないだろう?」


まぁ!とシスティーナは赤くなった。


「打算だけど、弟とシオンの婚約が破談になった方が私には都合がいいんだよ」

「側室の方が強い力(権力)の状況をどうにかしたいのですね?」

「ああ、大き声では言えないが、母上……王妃とシオンのお母様は仲の良い関係で、何か密約を交わしているそうなんだよ。聞いているかい?」


!?


「いいえ、家を出されてから手紙でのやり取りしかしておらず、その話も初めて聞きました。ただ病で倒れた時に、無理をして王城に行ったことはありました」

「母上は君のお母様に、すごい恩があると言っていた。絶対に裏切らないし、必ず力になるとも言ってくれた。安心して欲しい」


「わかりました。よろしくお願い致します」


シオンとゼインは力強く握手を交わした。


「当面は、向こうがまた冤罪を掛けてくる可能性がありますので、常に仲間と一緒に行動することと、シオンさんには日記をつけて欲しいですわね」

「日記ですか?」

「ええ、過去に何があったのか書いておけば、防げる冤罪もあると思うのです」

「なるほど!確かにそうですね。明日から毎日つけます!」


一人では考えつかないことも仲間と一緒なら新しいことがどんどん出てくる。

本当に助かるわ。


「それでセレンさんの目的はなんでしょうか?」

「目的ですか?」


シオンは首を傾げたがすぐに思い当たった。


「おそらくですが、私が気に入らないからだけではなく、私に成り代わりたいのではないでしょうか?公爵令嬢の立場と第二王子の婚約者という地位を手に入れたいのだと思います」


合格という顔でシスティーナは頷いた。


「そうだね。自分もそう思う」

「私もそう思いますわ」

「なんて恥知らずな。引き取って貴族の生活までさせてもらって」


ミネアは憤りながら言った。


「では、我々のやるべきことが見えてきましたわね」

「ええ、セレンさんの仕掛けてくる冤罪を避けながら、セレンさんの自作自演の罪を暴いていくこと。そして、セレンさんを失脚させて今の立場を奪うことですわ」

「わかりました」

「私も手伝います」


三人は固く握手を交わして協力する事を誓った。


「あ、一つだけ聞いていい?」


ミネアの質問にシオンは答えた。


「実家の公爵家では味方はいるの?数年間は辺境の領地にいたんでしょう?」

「はい。実家で味方なのはお母様だけです。手紙のやり取りはしていますが、体調を崩されてから車椅子の生活を余儀なくされています。後は、お母様の傍付きのメイドならと言った感じでしょうか」

「それって、実の父親とお兄さんは味方ではないってことよね?」


「ええ、一度はセレンの自作自演の現場を見たメイドがいて私を信じてくれそうになりましたが、セレンの毒殺未遂があってからは………それと第二王子もセレン側ですね」


「ああ、バルーカ様ね。側室のお子様だけど、ちょっと態度が悪いのよね~」

「確かに。逆に彼の方にシオンさんは勿体無いですわ。もしできればセレンさんに差し上げてはどうでしょうか?」

「私も幼少の頃にお会いしただけで、一度セレンのことでお怒りの手紙が届いて以降、音沙汰がありませんので、正直、どうでも良い方と認識していますわ」


「なら、決まりですわ」

「それと部屋の外にいるカイン君は平民だけど信用できるのかな?」

「カインは私の一番の親友です!絶対に裏切ることはありません!」


シオンは自信満々に答えた。


「彼はずっと辺境の領地に?」

「そうですが何か?」

「いや、どこかで見たことがあった気がしたから……まっ、気にしないで」

???

「わかりました」

(私もゼイン殿下と会った気がするのよね?)


気になることもあったが、殿下は部屋から出るとカインとも握手を交わしてシオンを頼むよと言って出ていかれました。


そして学園の1日目が終わった。

シオンは実家に戻りづらいので学生寮で暮らすことになっていた。


「こういう生活も悪くないわね。隣には同級生もいるし」


貴族の学生寮なだけあって個室である。

一部、裕福ではない貴族は別の建物で二人部屋の所もあるのだが。

カインも公爵家からお金が出ているので、男子の学生寮の個室部屋に住むことになっていた。

実家が体裁を考えた結果である。


こうしてシオンとカインの学園生活が始まった。

いや、セレンとの戦いの日々が始まったと言っていいだろう。


書類上の婚約である第二王子とはクラスが2つも離れているので、基本的に顔を合わせることはなかった。

一つ上の兄にもこっそり手紙を送ったが返事がなかったので諦めることにした。

セレンは一番下のクラスで、私に成績を奪われたと独自の理論を涙目で語りながら、私を貶しているらしい。


学園での最初の3ヶ月は平和が続いた。

しかし中間テストで、結果が張り出されるとバルーカ王子とセレンが文句を言いにやって来たのだ。


「貴様!セレンの勉強を邪魔しているらしいな!妹を貶めて恥ずかしくないのか!?」


どうやらセレンの成績が悪いのは私が邪魔しているという事にしたらしい。


「私はそんなことはしておりません。それより、婚約者でもない女性を肩に抱くのはおやめ下さい。王子に悪い噂が立ちますわ」


「うるさい!お前のことは聞いているぞ!我が母上も貴様のような毒婦であったなら婚約者にしようとは思わないだろうよ!」


私がセレンに毒を盛ったという話は公爵家と王家の秘密だったのですが、セレンが言いふらしましたからね。自分の家の家名を貶していることに気づいていないなんて愚かですわ。


「どのような話を聞いたか『知りません』が、片方の話だけを鵜呑みにするのはいかがなものかと思いますが?」

「ふんっ、貴様のような性根の腐った奴に言われるまでもない。いいな?今後はセレンに嫌がらせをしたらただじゃおかないからな!覚悟しておけっ!」


言いたい事を言ってセレンと一緒に離れていった。

シオンは深いため息を吐いた。


「そんなに私が良い成績を取ったのが気に入らないのかしら?」

「見てわかりました。『アイツ』はなんでもシオンお嬢様を下に思わせないと気が済まないようです。もう執着と言ってもいいかも知れません」


カインの言葉に私は目を逸らさなかった。


「これからも威嚇や私を悪人呼ばわりしてくるでしょう。私は負けないから」

「どこまでもお供いたします」


私たちの覚悟を改めて誓う出来事だった。

システィーナとミネアも側で見守ってくれていた。


「アレが例の………ね?」

「今回は王子の影に隠れていましたけど、下を向いたとき笑っていましたよ。王子に恫喝されてザマァとか思っていたんですよ。本当に性格が悪そうです」

「私は大丈夫です。今はあまり私を庇わないで下さい。向こうが油断した時にお願い致します」


二人は顔を見合わせて笑った。


「ええ、わかったわ。でも本当に危なかったら助けるからね。シオンを信じていたけど、実際に間近で見て確信したわ。どっちが嘘を言っているのかね」


システィーナも改めてシオンに協力する事を誓ってくれた。

それからも、バルーカ王子とセレンの難癖は続いた。

最初はのらりくらりと避けていたが、セレンも学習したのか段々と手口が巧妙になって来た。


そして1年が過ぎて、夏の長期休暇前に事件が起こった。


校長室に呼び出されたのだ。


「もう我慢できん!貴様との婚約を破棄してセレンと婚約をし直す!」


呼び出されたと思ったら突然言われた。


「バルーカ様、これは王家からクローバー公爵家に来た話です。国王陛下や公爵家当主の許可が無ければ勝手に破棄出来ません」


バルーカは鼻で笑って答えた。


「無論知っている。これを見ろ!」


出したのは婚約破棄の書類とセレンと『結婚』する書類の2枚だった。


そして、国王様しか使う事の出来ない国璽(こくじ)が書類に押してあった。


「国璽が押してあるなんて正式な書類だわ」


「無論だ。さらに、行政府の文官も連れてきた。これにサインすれば正式にお前との婚約は破棄される」


「………国王様も認めているなら私は従うだけです。ただ2枚目の書類は大丈夫なのですか?ここに『婚姻』すると書いてありますが?」


「それはお前が気にするものではない。オレとセレンの問題だ」


「さようでございますか」


後から国王様に知られて許しを得られない場合のために既成事実を作ろうってことね。

正式な婚姻を認める書類だからなかった事には出来ないものね。


証人は校長先生と王宮からきた文官が務めた。

サラサラと名前を3回書きました。


婚約破棄の書類で、お互いに保管する物と、王宮に提出する物とで3枚あった。


その後、バルーカとセレンの2人が書類を書いて立会人が終わりですと言って終了した。


本当ならシオンが泣いて縋ったりすると思っていた2人は淡々としたシオンが気に入らないと、思ったのか、校長室から出ると呼び止められたのだ。


「何か?もう婚約者でもないのですから話し掛けないで下さい」


カチンッときたバルーカはシオンに掴み掛かった。

その場所が悪く、階段の前だったため、払い除けようとしたシオンが、階段から突き落とされる形になり落ちたのだ。


側にいたセレンが、シオンが自分から落ちたと言い、シオンの側にいたカインが王子に突き落とされたと証言して、ちょっとした騒ぎになった。

幸い、シオンは頭から血を流したが、軽症で大事には至らなかった。


「申し訳ありません!」


カインは深く頭を下げて謝った。


「カイン、大丈夫よ。心配しないで。もしカインが王子に歯向かっていたらもっと面倒な事になっていたもの」

「私が平民のせいでお嬢様を守れず、本当に申し訳ありません」


俯いて再度お詫びの言葉を吐いた。


「本当に大丈夫だから。私も油断していたしね。カイン、本当に気にしないで。全ては計画の通りに進んでいるから」


シオンはベッドで横になりながらカインに微笑んで伝えるのだった。

病室から出るとシスティーナとミネアが怖い顔で待っていた。


「貴方は最善を尽くしたわ。でも平民と王族では権力が違う。シオンが貴方に助けを求めなかったのは、貴方を守るためでもあったと覚えておきなさい」

「私にバカなマネはするなと言いたいのでしょう。わかっています。でも、こんなことが続くのなら自分は──」


拳を血が出るまで握り締めるカインにハンカチを渡して優しく握った。


「万が一、貴方がバカなマネをして死刑にでもなったらシオンが悲しむという事を胸に刻みなさい」

「シオン……お嬢様……」


カインは頭を下げてから自分の部屋に帰るのだった。


「ミネアさんもしばらくはカインさんの事も見てあげてください。アレはシオンさんのためなら命も惜しくないと思っている者の目ですわ」

「ええ、私もカイン君の気持ちが痛いほど伝わってきたわ。


ゼインは公務で学園を休んでいた。

最高権力者のいない時に事件を起こしたのだ。

しかしその後、他の目撃者がいた事で事態は動いた。バルーカは謹慎処分となり、セレンも嘘の報告をしたことで、今までの自分の立場を失っていったのだ。


そして───


「本当に大丈夫ですか?」

「これが最後の大勝負なの」


クラスメイトが先生が課題の件で呼んでいると言ってきたのだが、それはセレンからの呼び出しだと見破っていた。


「自分が先に入ります。後から来て下さい」

「わかったわ」


廊下にはシスティーナとミネアも一緒にいた。

セレンが何かして来た時の証人になってもらうためだ。カインが中に入ると中は暗かった。カーテンが閉められていた。


照明を探して点けるとセレンがナイフを持って飛び出してきた。


「死になさい!邪魔者!!!」


カインは腕でナイフを受けて切られた。


「ぐっ!?」


きゃー!!!!!

シオンは叫び声を上げてようやく切り付けた相手が違うとセレンは気付いた。


「くっ、いつもいつも私の邪魔をするシオンの腰巾着がっ!!!!」


やけになったのか、再度ナイフを向けて突進してきたカインは払い退けた感じで腕を振るったら弾いたナイフがセレンの右頬を切って飛んでいった。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


自分の顔が切られて痛みに泣き叫ぶセレンだったが、そこに教師たちが駆けつけたのだった。


・

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その後、詳しい事情聴取が行われた。

目撃者としてシスティーナとミネアが居たので、正当防衛が認められた。


そう認められたのだ。

それなのに、バルーカ王子がセレンの顔を傷付けられた事に激怒して過剰防衛だと主張した。。それどころか、シオンに有利な証言をしていると難癖をつけてきたのだ。


そこで問題になったのは、『平民』が『貴族』を傷付けたと言う所になった。


我が国では、貴族は好き勝手に平民を傷つける事は犯罪になるが、自分に危害を加えてきた者に対しては、被害者の貴族の裁量で裁けると言う法律があるのだ。


そこを専門家に聞いたバルーカが突いてきたのだ。

正当防衛と事故だとシオン達は何度も訴えたが、自分の顔を傷付けたカインをセレンが許す訳も無く、頬にガーゼを張ったまま、鬼の様な形相で『死刑』よ!と言い続けた。


そしてシオン達の訴えも虚しくカインが拘束されてから10日後に処刑が行われる事になった。


処刑には公開処刑と、王城で貴族の立会いの元に行われる王城の中庭で行われる閉鎖処刑の二通りある。


公開処刑は王城の前で平民の前で行われるもので、民のガス抜きにされるもの。


今回は貴族と王族の醜聞もあるため、平民には公開されない処刑となった。


王族の端にある小さな中庭には、正方形で囲まれており、2階からでも処刑を見守ることが出来るようになっていた。


「どうしてこんな事に・・・」


カインは牢屋に入れられて面会も出来なかった。

シオンは真っ青な顔で処刑台に連れて来られるカインを見た。


「カイン!!!」


近づこうとするが衛兵に止められて、側まで行くことができない。

カインはこちらを見て微笑んだ。



「お嬢様。平民の自分ができるのはここまでです。どうかお幸せに」



!?


「いや!嫌よ!どうして貴方が死ななければならないのよ!」

「あの女はこの先一生、顔に傷ありのまま恥をかいて生きなければなりません。自分はそれで満足です」


処刑人に催促され、ギロチン台に歩き出した。

シオンはジタバタと暴れるが衛兵に阻まれその場で嘆くことしか出来なかった。

今回の事件は貴族達の関心を買い、多くの貴族達がこの処刑を見に来ていた。


そして執行人が声を上げた。


「これより、平民の処刑を行う!」


カインは台の前で座らされ、執行人の口上を聞かされた。

セレンはシオンの取り乱しように少しは余裕が出たのか笑みを浮かべた。


そして2階には、国王陛下と王妃様がわざわざ足を運んでやってきた。

これには野次馬の貴族も驚きの声を上げた。


「国王様!王妃様!カインを助けて下さい!!!カインは私の命を守っただけの正当防衛なんです!処刑になる言われはありません!」


ザワッと声が上がった。

国王陛下に直答するには先に許しが必要だからだ。これだけでも罪に問われる。


「カインを助けて頂けるなら私はどうなっても構いません!どうか、お願い致します!」


2階にいる国王様達に声が枯れるまで叫んだシオンだったが、王妃様が困った顔をして言った。


「それは困ったわ。この処刑は止めることはできないもの」


!?


えっ・・・

王妃様も平民が貴族を傷つけた行為を許せない方なの?

シオンは絶望した顔で見上げた。


「王妃様、あまり私の娘を虐めないで下さい」


シオンの母である『クローバー公爵』が車椅子で前にやってきた。


「お、お母様・・?」


突然のお母様の登場に混乱するシオンだったが、すぐにバタバタッと騒がしくなった。


「何をする!この俺が誰だかわかっているのか!?」

「キャッ!なんなのよ!?」


バルーカ様とセレンが騎士に捕縛されていた。


「ごめんんさいねクローバー公爵。そんなつもりはなかったのよ?」


王妃様は手を挙げると別の騎士がカインの所までやってきて執行人から身柄を引き離した。


「今から事情を説明しましょう。少し手荒だけれど許してね」


王妃様の騎士がカインにバケツに入った水を被せた。

するとカインの染めていた黒色の染色は流れて、本来の金髪に戻った。


「失礼致します」


騎士はさらにタオルで拭いてから、前髪を挟みで切っていった。

すると───


「いや~男前になったじゃないか?」


第一王子のゼイン様までやってきてカインの側に立った。


ザワザワッ!?


貴族達が驚いた。

そこにはゼインとそっくり同じ顔のカインがいたからだ。


「静まりなさい!今から全てを話します」


王妃様の話はこうだった。


王妃様が産んだのは双子だったのだ。

しかし、王家で双子は不吉だという迷信があった。当時、側室も子供を産んでおり、侯爵家の側室の方が強い権力を持っていたために、二人を守れないと感じた王妃様が、唯一信用していたクローバー公爵であるお母様に、弟のカインを預けたということである。

カインは全く知らされずに生きてきたが、教育は受けてきたそうだ。それは執事として当然の教養だと言われて、王家から遣わされた引退した元執事長から勉強していたのだ。


「嘘・・・カインが王子様???」


シオンの混乱はピークに達していた。

しかし、それだけでは終わらなかった。


「さて、そこのセレンという『平民』よ。よくもまぁ、やってくれたな」


!?


「わ、私、知らなくて・・・」


いや、そこじゃない。王妃様はなんて言った?

私はお母様に視線を向けた。


「私達の年代なら知っているでしょう?我が妹のリリス・クローバーのことを」


多くの貴族が頷いた。


「我が公爵家の恥を晒しますが、妹のリリスは自由奔放で、それは性に対してもそうでした。不特定多数の男性と関係を持ったことで、クローバー公爵家を勘当になりました。せめてもの情けで裕福な商人に嫁がせる事になったのですが、その時に貴族籍を抜いております」


ということは───


「それと、あなた前に出なさい」


呼ばれてお父様がスゴスゴと居心地悪そうに出てきました。


「な、なんだい。こんな場所で」

「私がセレンを引き取ることを反対したのに、あなたが引き取るように勧めたこと、忘れていないわよ」


!?


「そ、それは亡くなった君の妹の忘れ形見なんだ。同情して当然だろう?」

「いいえ、あなたは引き取った後も、実の『私の娘』のシオンよりセレンを優遇した。何度言っても改善しようとはしなかったわ」


お父様は何も言えずに口を閉ざした。


「私がセレンを引き取る時に出した【【条件】】を忘れていないわよね?」

「じょ、条件・・・?あっ!」


お父様も思い出したのか声を上げた。


「私はセレンを引き取る条件に、養子縁組は絶対にしないと確約させました。セレンは『平民』として公爵家に居候させていたに過ぎません!」



!?


何度目かの驚きの事実だった。


「実の娘より、浮気性の妹の娘であるセレンを選んだ貴方に居てもらう理由がありません。この場を持って離婚させていただきます」

「ま、待ってくれ!それだけは許してくれ!?」

「許すわけないでしょう?クローバー公爵家の当主は私ですよ!その私に『毒』を盛った毒婦の肩を持つ夫なんていらないわ。それにこれから大事な場面なの。少し黙っていなさい」


シオンは声を上げた。


「お母様の体調不良は毒のせいだったの!?」

「ええ、証拠がなく断罪出来なかったの。でも王城で毒抜きをしてもらってからは大丈夫よ」


お母様は車椅子から立ち上がりました。


「油断させるために体が不自由になったと思わせるため車椅子で移動していたの。そして王城から戻ってきた時に、セレンに味方していたメイドは辞めさせて、王妃様から潜入調査の得意な騎士を数名借りて、屋敷のメイドとして見張らせていたのよ?」


「もしかしてメイドのアイリスも?」


後にいたアイリスもウインクしてそうですと訴えた。


「そして、証拠を集めている時に、セレンがバルーカ殿下を狙っていると聞いて待っていたのよ」


王妃様は話している最中に下に降りてきた。


「さて、お前達はこれに見覚えがあるでしょう?」


バルーカとセレンの婚姻書だ。

国王陛下の国璽(こくじ)が押してある。


「王子であろうとも国璽(こくじ)を盗み出し印を押した場合はただではすまないのよ?ねぇ。側妃殿?」


バルーカの母親である側室の女性も拘束されて連れてこられた。


「無礼者!私がどこの家の者か知ってのことか!?」


王妃様は冷めた目で側妃を見下ろして言った。


「ぎゃぁ!ぎゃぁ!と喚くな。それより聞かれたことだけ答えなさい。『これ』についてはバルーカから聞いていますね?」


「くっ、バカ息子が婚約者を変えたいと言って強行した婚姻書でしょ?後から聞いたわよ」

「なら結構」


王妃様はその婚姻書を周囲の貴族に見せながら言った。


「これはバルーカが国璽(こくじ)を盗み出してこっそりと押した婚姻書である!しかし、不正に押されたものであってもこの書類は正式なものである!サインの時、王宮の立会人の前で国璽の押された書類にサインされたものだからよ!」


察しの良い者は驚きの顔をして、察しの悪い者は首を傾げている。


「セレンの立場は平民である!そして王族は平民と婚姻できない。もしする場合は自分も『平民』になるしかないのよ!」


!?



「はぁっ!?嘘だろう!俺が平民だと!?」

「私が平民のままなんて嘘よっ!」


二人は騒ぎ立てるが、側妃は真っ青になって震えていた。どうやら察しの良い方だったようだ。


「さて、話を最初に戻しましょう。この処刑は『平民』が『貴族や王族』を傷つけた事により行われるもの。そして今回は王族を傷つけたことで、連帯責任により家族全員が対象になるわ。執行人!本当の下手人を処刑台へ!」


バルーカとセレン、そして側妃の三人は無理矢理連れられて首を固定された。


「待って!私は関係ないわ!?私は実家の侯爵家の令嬢よ!」


「何を言っている。側室になった時点で実家ではあるが侯爵令嬢の籍は抜けている。そこのセレンと同じくな。バルーカのみ国王陛下の血を受け継いだ王族ではあるが、セレンとの結婚で平民となっている。貴様らは全員平民なのだよ」


今までの恨みを全て吐き出すかのように王妃は言った。


「待って!今までのことは謝るから!助けて!?」

「貴様、今までそう懇願した者を助けたことがあるのか?私の息子に暗殺者を送ったことも調べがついているのよ。観念するのね」



あ、ああ・・・・

側妃の顔が絶望に染まった。


「私は貴族よ!こんなのはおかしいわ!誰か助けなさいよ!?」


側では醜くセレンが騒いでいた。


「あ、あんたが!全てを持っているあんたが悪いのよ!お前が死ねよ!死ねっ!!!!」


セレンが呪詛のように悪態をつくが、カインが前に出て言った。


「ふざけるな!それは貴女も同じだ!そして、お嬢様から家族を奪い貶める。貴女ほど醜い女性を僕は知らない!貴女の方こそお嬢様にとって害悪だ。平民なら大人しく死んでください!」


「なっ───」


王妃様が目配せして執行人がギロチンの刃を落とした。


「やめ──」


言い切る前にギロチンの刃が三人の首を刎ねた。

血が噴き出し、多くの者が顔をしかめた。

シオンは目を逸らさず最後まで見届けた。


その後は国王様と王妃様の声明で解散となった。

しかし関係者だけは別室にて詳しい経緯の説明のため呼び止められた。


王宮の応接室にて──


「さて、この度はシオン令嬢に本当に迷惑をかけたこと、深く謝罪する」


まさかいきなり国王陛下が頭を下げました。


「あ、頭を上げてください。それよりどこまでが王家の筋書きだったのか教えて頂けますか?」

「流石に察していたか」


顔を上げて国王様が話してくれました。


「全てはセレンの両親であり、現クローバー公爵の妹であるリリス夫妻から始まっている」

「えっ?」

「ここからは他言無用で頼む」


国王陛下からの話はこうだった。


側室が自分の息子バルーカを国王にしようと画策して、ゼイン王太子の命を狙っていた。

そこに、『闇商人』であったリリス夫婦が協力して、国外から毒物など仕入れて側室に売っていたのだ。それに気付いた国王様達は事故に見せかけてリリス夫妻を暗殺した。

外部からの有力な協力者がいなくなりしばらくは安心していたが、まさかセレンがクローバー公爵家に転がり込んでくるとは予想外だったそうだ。


「さて、何か弁解はあるかな?婿養子殿?」


国王様が後ろで顔色悪くしているお父様に声を掛けました。

お父様はビクリッと反応すると逃げ出そうとしましたが、兵士に取り押さえられました。


「お父様は何をしたのですか?」

「彼は側室だった女の協力者だ。いつからかはわからんがね」


!?


「王妃派であったクローバー公爵家だったのに、シオン令嬢がバルーカの婚約者に推したのも彼だ。最初は王妃の実家より側室の実家の方が強い権力があるため、強引にねじ込まれたと思ったが、公爵家の者の後押しがあったとわかったのだよ」


沈黙が流れた。


「そして、君の兄だが・・・」


お兄様に視線が集まりました。


「シオン、今まですまなかった」


お兄様は深く頭を下げました。


「クローバー公爵の指示で、王宮の影のメイドから根気よくセレンの悪事を伝えて、シオンは無実だと理解してもらった。しかし、敵対すれば毒を盛られるかもしれず、表向きはセレンを優先してもらい、裏では息子ゼインと協力して側室の悪事の証拠など集めてもらっていた」


敵だと思っていたお兄様が裏で動いてくれていたなんて!


「子供の頃とはいえ、実の妹であるシオンを信じることができなかったのは事実です。嫌われても仕方がありません」


「いいえ、お兄様。確かに信じてもらえなくて悲しかったですが、本当はお兄様と仲良く暮らしたかったの。私の何気ない話をしたりお兄様の話を聞きたいの。これからでも時間を作ってくれますか?」

「ああ、いくらでも作るよ」


お兄様は涙を流しながら頷きました。


「悪いが君たちの父親はこのまま牢屋に入ってもらう。どこまで側室と繋がっていて、王子の暗殺に関与していたのか事実確認が必要だからね。クローバー公爵との離婚の手続きはこちらでやっておく」


国王様が指示すると兵士は、お父様を連れて出ていった。

私はともかくお兄様は複雑な顔をしました。


「これでようやく彼女の侯爵家も取り潰すことができた。カイン、立派になったな。今までお前の命を守るためとはいえ、辺境に追いやり、会うことができなくて本当にすまなかった」


国王様はカインに頭を下げました。


「・・・まだ実感がありません。確かに祖父と思っていた執事長から様々な勉強をしてきました。高位の貴族に仕えるとはそういうものだと思っていましたから。ただもし僕の事に負い目があるなら一つだけお願いがあります!」


カインは父親である国王に視線をしっかりと合わせて言った。


「ああ、叶えよう」


!?


「えっ???」


カインは間の抜けた声を出した。


「まだ願いを言っていませんが?」

「ここでお前が何を言いたいのか、わからない者はいないよ」


国王はニヤリッと笑った。


「カインは何をお願いするつもりなの?」


シオンの問いかけに二人は『『・・・・』』となった。


「これはなかなか鈍感なお嬢さんだ」

「ええ、でもこれがお嬢様なので」


「「くっくく、あははははっっ!!!!」」


少しの間の後に大笑いした。

二人のわだかまりが少し溶けたようにも見えた。


「カイン、しっかり口にしないとわからないみたいだ。言いなさい。国王としてではなく父親としてお前の願いを叶えよう!」


「はいっ!僕はシオンお嬢様、いえ、シオン・クローバー公爵令嬢を愛しています!どうかシオンとの婚姻を認めてください!」


!?


シオンは手で口を押さえて出そうになった声を止めた。

そして母親である公爵夫人はシオンの手に触れた。


「私は賛成よ。シオンはどうしたいの?」


国王様と公爵の許可は出ている。後はシオンの気持ち次第だ。


「・・・はい。私もカインのことが好きです。彼と一緒になりたいです」

「ありがとう。シオン」


二人は抱きしめ合った。


「ずっと身分が違うからと諦めていた。でもシオンと一緒になれるなら王子でもなんでもなってみせるから」

「うん、私もずっと好きだった。カインが居てくれて本当によかった」


部屋にいる皆から温かい拍手が鳴り響いた。


「見せ付けてくれるな。私もシスティーナとイチャイチャしたいな」

「なっ!?公私混同はおやめ下さい!」


真っ赤になりながら怒るシスティーナは可愛く見えた。


「ふふっ、次世代は安泰だな。本当に長かった。今まで苦労をかけたな」

「いいえ、この風景を見られただけで私は満足ですわ」


国王様と王妃様も顔を赤くしてイチャイチャ始めました。


「いいなぁ~私も婚約者が欲しいかも」


まだ婚約者のいないミネアが拗ねたように言った。


「あ、あのよかったら自分と婚約してくれませんか?」

「え、は、はい!」


なんとお兄様がミネアに告白した!?

そしてミネアよ?

いきなり返事しないで!


「前からシオンの友達で元気で可愛い子だなと思っていました。不甲斐ないシオンの兄ですがよろしくお願いします」

「わ、私もシオンのお兄さんという事でよく目で追っていました。過去はともかく今はシオンのために行動できる人なら私も安心です!」


えっと?

前からお互いにいいな?と思っていたと???


「あらあら。これで独り身になった私だけ仲間外れかしら?」


お母様が冗談混じりに言いました。


「「そんなことはありません!」」


みんなで言い返して笑いに包まれるのでした。

そしてシオンは思った。


「うん、みんながいれば大丈夫!」


そんなシオンにカインは尋ねた。


「シオン、平民だった自分ができるのはここまでです。これからは王子として君のそばにいることを許してくれますか?」

「王子であろうと平民であろうとカインはカインよ!絶対に放さないからね!」


カインはありがとうと言って再度、抱きしめるのでした。



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