【超短編版】はずれギフトだったので無敵です
第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。キーワード「ギフト」。昔の作品をリライト! 1000文字の短編なのですぐ読めます!
「はずれギフトの疫病神が!」
村の奴らは俺に向かって石を投げながらそう叫ぶ。
俺は、はずれギフト。
この世界には【ギフト】と呼ばれ、15歳で目覚める特別な能力がある。だが、能力である以上あたりはずれがある。
そして、俺ははずれギフトという名の謎のギフト。
村の連中はことあるごとにはずれギフト持ちの俺のせいにし、檻に閉じ込め見せしめにした。
恋人も友人も家族も離れていった。
まさしくはずれ。そして、俺のはずれギフトは究極のはずれに辿り着く。
「明日、お前を殺してやるよ」
親友だと思っていた男がそう告げ去ると、俺は悟る。
「この世界そのものが……『外れ』、だ」
怒りのまま俺は必死で牢の扉を揺らす。
すると、
「鍵が、外れてる?」
番がかけ忘れたのだろうか。その上、番本人も小便で席を外していた。
今が好機と牢を抜け出す。
やせ細った身体だが、そのせいか、人通りの多い時間から外れた少ない村人の視界からは外れているようで気づかれなかった。
村外れで羽目を外している元恋人と親友と出会ってしまい、石を投げられたが、その頃には俺は気づいていた。俺のこのはずれギフトの真価を。
数年後、俺ははずれ仕事を任されていた。
「我は魔王。貴様が勇者か」
「『はずれ勇者』なんて呼ばれているイズモだ。よろしくな、美人な魔王さん」
「はずれ勇者か……だが、油断はしてやらんぞ」
魔王が、黒い魔法の刃を大量に生み出す。
「万を超える数の黒い刃、貴様に防げるかなあ!」
「いや、無理。だって」
黒い刃は全て俺から外れ大地に食い込んでいく。
「全部『外れる』から」
「は?」
俺のスキルははずれギフト。
相手の攻撃が外れ、罠や鍵が外れ、相手の読みが外れる。
はずれというあたりギフトだったのだ。
俺は魔王に蹴りを一発入れ、ぶっとばす
「な、なんだこの力は……って、まさか」
「そ。人並『外れた』力」
力の差を悟ったのか魔王がだらりと手をおろす。
「よし、じゃあ、魔王。俺とこの世界、壊そうぜ」
「は?」
俺は理解した。この世界の人間共こそが道を外れた奴らだと。
だから、俺は人間から外れる。あの村ももうない。俺が滅ぼした。
外れ者にされていた魔王は頷き、そして、何故か俺のズボンに手をかける。
「世界を壊すその前に新しい世界の為に、子を為そうではないか。イズモよ」
おい、ボタンを外すな。参った、どうやら箍が外れたらしい。
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