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メモリー=レコード  作者: ヒューマ
第1章 獣人黙示録編
6/11

6話 獣変黙示録 其之壱

6話です。

遅くなりました。

よろしくお願いします。

 夜が訪れ、空とイリアは蒼の部屋を訪れていた。


「今日は一日、お疲れさま。」


 穏やかな声で蒼が微笑む。


「いえ、蒼さんのおかげです。」


 空が礼を述べると、イリアも続ける。


「本当に、ありがとうございます。」


「気にしないで。……それより、明日からは本格的な調査を始めるわ。そのためにも、今夜はしっかり休んでちょうだい。」


 蒼が真剣な口調で言うと、空とイリアは頷いた。


「はい。」


「わかりました。」


 二人は仮部屋へ戻り、静かに眠りについた。


■1月25日 名古屋・朝


 翌日。猛の指揮のもと、捜査は本格的に始まった。

 空・イリア・蒼の三人は、前日に襲撃された現場の調査を任されていた。一方、猛と律那は別の場所を調べている。


「被害者は平田誠也さん(54)と妻の多恵子さん(52)……。」


 蒼が資料を見ながら語る。


「遺体はどちらも、頭部と胴体を切断されて即死だったようね。さらに、被害者の血液から微量のマナが検出された。けれど、そのマナは二人のものとは異なっていた……つまり、獣人族のマナよ。」


「ん? なんで被害者と違うマナだって分かるんですか?」


 空が尋ねると、蒼は説明しようと口を開いた――その瞬間。


「やめて! 離してッ!」


 ――イリアの叫び声が空気を裂いた。


 はっとして振り返る空。そこには、イリアを捕らえる獣人の姿があった。赤い体毛に覆われ、鋭い牙を覗かせる二足歩行の異形。


「イリア!」


 空が駆け出そうとする――


「動くな。」


 低く唸るような声で、獣人が制止する。


「動けば殺す。……動かなくても、殺すがな。」


 全身に漂う殺気に、空の体が思わず強張る。


「……あなたの目的は?」


 蒼が冷静に問いかける。


「答える義理はない。」


「なら、イリアを離せ!」


 空が怒鳴る。


「断る。」


 獣人の声は冷たく、どこまでも無慈悲だった。


「なら……力ずくで!」


 蒼が身構える。その気迫に、獣人がニヤリと牙を見せた。


「人間ごときが……威勢がいいな。」


 蒼は次の瞬間、獣人の死角へ回り込んで跳躍し、蹴りを叩き込む――が、それすらも片手で受け止められ、逆に投げ飛ばされる。


「っ……!」


 蒼は地面に着地し、すぐに構え直す。


「フン……人間にしてはやるじゃないか。」


 空も続けて〈霊豪〉で強化した拳を叩き込むが、それも防がれ、反撃の蹴りで吹き飛ばされた。


「ぐっ……!」


 地面を転がる空を見て、イリアがもがく。


「空! 離してっ!」


 暴れるイリアに、獣人が苛立ったように爪を振り上げる。


「騒ぐな。……今ここで死にたいか?」


「やめてえええ!」


 イリアの叫び――

 だが、次の瞬間。彼女の周囲に電撃が走り、獣人の腕をはじいた。


「……〈霊重〉の結界か。中々の防御力だな。」


 と獣人が呟く。


「だが、“荒暫様”の前では、無意味だ。」


 獣人は背後に異空間を開き、イリアを抱えたままそこへ入ろうとする。


「待て!」


 空が即座に〈霊豪〉を足に集中し、猛然と走り出す。蒼の静止も聞かず、彼は閉じかけた異空間へと飛び込んだ――


■異空間内


「ここは……」


 足元に広がるのは、踝まで浸かる血のように赤黒い液体。空気は獣臭と鉄臭で満ちている。見知らぬ異界の風景の中、イリアとあの獣人の姿は見当たらない。

 だが代わりに、空を取り囲むように三体の獣人が姿を現す。


「イリアはどこだ!」


 空が叫ぶ。


「死ぬお前には、知る意味もない。」


 獣人が嘲るように言う。


「……なら、力ずくだッ!」


 空は飛び出す。殴りかかってくる獣人の動きを見極め、鳩尾に強烈な一撃を叩き込む。


「ぐ……っ!」


 一体目が崩れ落ちる。


 だが、二体目の獣人が横から襲いかかる。その攻撃を寸前で避けた空は、距離を取りつつカウンターの蹴りを放つ。


「うぐぅっ……!」


 命中。二体目も地面に倒れる。

 最後の一体が怯え、じりじりと後ずさる。

 空は容赦なく詰め寄り、その獣人を蹴り倒し、足で胸を押さえつけた。


「イリアをどこに連れて行った!」


「そ……それは言えない……!」


「なら死ね。」


 空は怒りを込め、全体重をかけて踏みつける。


「が、あああああっっ!!」


 悲鳴が響き、胸骨の砕ける音が生々しく空間に響く。


「イリアは……まだ何も知らないのに……!」


 怒りに震える声で呟きながら、さらに力を込めて踏みつける。


「や、やめっ……」


 ――だが、願いは届かず、獣人は絶命した。


「チッ……死にやがって。とにかく、イリアを見つけないと……」


 空が異空間の奥へと踏み出そうとしたそのとき。


「空!」


 声が響いた。

 即座に臨戦態勢をとる空。だが、現れた姿に目を見開く。


「隊長……? なぜここに……」


 そこにいたのは、律那と調査中だったはずの天紋路猛だった。

読んでいただきありがとうございました。

感想等あればよろしくお願いします。

していただければ作者のモチベーションに繋がります。


次回 獣変黙示録 其之弐

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