4話 異変治安局
4話です。
よろしくお願いします。
1月24日
空は目を覚ますとそこは知らない天井だった。
「ん……ここは……」
と言いながら辺りを見渡すとイリアが心配そうにこちらを見ていた。
「空!」
イリアは嬉しそうに名前を呼ぶ。
「よかった……。」
と言って空の手を握る。
空はその手の感触を感じながらも状況を理解できずにいた。
(一体なんだったんだ……)
と考えていると、自分の腕に違和感を覚えた。
腕を見ると包帯が巻かれていた。
そして、服は病院着のようなものを着せられていた。
(あれ?確か僕は猫又に噛まれて……)
「気が付いたのね。」
と声がした方を向く。
そこには170㎝はあるであろう背丈の白の長髪を三つ編みにまとめて肩にかけている、瞳は透き通ったサファイアのような濃い青をしている女性が座っていた。
「えっと……どちら様ですか?」
と空は尋ねる。
「私は異変治安局第三部隊所属の玉超蒼と言います。」
と蒼は答える。
「異変治安局?」
空は思わず聞き返した。
「ええ、ご存じないですか?」
「はい。」
空は素直に答えた。
「異変治安局はね国際の警察のような存在で、一般犯罪ではない超常事件や異常な犯罪集団を取り扱っているの。」
「まぁ、簡単に言えば普通の警察では解決できない事件を解決する組織ね。」
(異変治安局……)
「そういえば、なんでその異変治安局がここに?」
「獣人…いえ、あなたには猫又と言った方がいいかしら。猫又を追っていたらあなたたちがいた家にたどり着いたの。そしたら倒れているあなたとイリアちゃんを見つけて。それで今に至るの。」
「そうですか。助けて頂きありがとうございます。」
「助けることも治安局の仕事だから。」
「あ、僕は」
「空・テトラト。あなたのことは少し調べさせてもらったわ。何でも屋の店長さんなのよね。」
「はい、そうですけど」
「調べた感じ、猫又に襲われるような気がしなのだけれど…何があったか教えてくれるかしら。」
「実は……」
空は飯塚さんのことから事の発端を話した。
「なるほど、あなたのお店の依頼で……。」
「あなた、この件から身を引くことをお勧めするわ。」
「何故です?」
「飯塚さんを殺害したのは飯塚さんが飼っていたおこげって子よ。そしてあなたは影を見たっていっていたわね。それは本来の姿をしたおこげだと思うの。そして姿を見たあなたを消そうとしてるのよ。」
「でも、他の事件でも影を見たって言ってる人がいるんですよ僕をピンポイントで狙うなんてことします?」
「おそらく、その人たち全員殺されているわ。ニュースにはなっていないけれど飯塚さんのような事件をいくつも治安局では確認してる。」
「なぜ、今回の襲撃であなたを殺さなかったのか不思議だけれど必ずまたやってくるわ。事件解決は私たち治安局に任せて安静にしておいた方がいいわ。」
「でも僕はこの事件の真相を知りたいんです。亡くなった沙織さんのためにも。」
「その気持ちも分かるけれどこれ以上関わってあなたが命を落としてしまうのなら本末転倒よ。」
と蒼はたしなめるように言うが、空は真剣な眼差しで蒼を見つめる。
「……分かったわ、好きにしなさい。その代わり私の指示に従ってもらうわ。」
「いいんですか?」
空は確認するように尋ねる。
「ええ、個人的にもこの事件には興味があるしね。それにあなたが狙われている以上一人で行動させるわけにも行かないわ。」
「ありがとうございます。」
「まずはその傷を治さないとね。私の手を握ってもらえる?」
空はその手をしっかりと握った。
「霊仙。」
すると、空に何か温かいものが流れ込んできたような気がした。
「これでもう大丈夫よ。」
空は包帯を外してみると傷跡がきれいさっぱりなくなっている。
「何をしたんですか?」
「話は後で。とりあえず私についてきてもらうわ。」
「行くってどこにですか?」
「治安局の本部よ。」
‐1‐
空は蒼に連れられて病院を後にした。
「あの、本部ってどこにあるんですか?」
と空は尋ねる。
「イギリスよ。」
と蒼は言う。
「イギリス!?」
空は驚いて声を上げる。
「そうよ。」
「飛行機とかで行くんですか?」
「違うわ。」
と蒼はスマホを取り出し誰かに電話をかける。
「りっちゃんお願い。」
『ほーい』
と気の抜けるような返事が聞こえる。
すると、3人の目の前に1人の女性が現れる。
「えっ!?」
空は驚く。
「蒼さん、誰この二人。」
「話はあっちでするわ。りっちゃん、”転送”をお願い。」
と蒼が答える。
「りょーかい。転送操作。」
と答えるとその女性は3人の手を握り言った。
「テレポート!」
4人は光に包まれその場から消えたのだった。
転送された先はどこかの建物のエントランスだった。
弧を描く巨大な建物に空は驚く。
「ここって……?」
空は辺りを見渡すと蒼が答える。
「ここは異変治安局の本部よ。」
と蒼は説明する。
「これが…」
と空はもう一度驚く。
「そだよー」
と気の抜けるような返事が返ってくる。
空達を転送した女性は黒色の髪の毛をポニーテールにしていて前髪の両サイドが紺色のメッシュがかっている。
そんな彼女は空達と同じぐらいの年齢に見えるが、どこか大人びた感じもする。
「あなたは?」
「私は異変治安局第三部隊の渾亡律那。19歳の164㎝のEだ。そんで…」
と律那が目を閉じるとメッシュの色が黒くなる。
再び目を開けると濃い黄色の瞳が新緑を見せる。
「私が越那。よろしくね。」
とだけ言うと瞳が濃い黄色に戻り紺色のメッシュが現れた。
目の前の出来事に空は困惑する。
「驚かせてすまないな。私たちは三重人格なんだ。本当の名前は渾亡刹那、訳あって今は出れない。すまないな。」
と律那は手を合わせて言った。
「よろしく。僕は空・テトラト20歳だ。隣にいるのがイリア。」
と空は答える。
イリアは軽く会釈をする。
「よろしく。」
と律那が言って右手を差し出す。
空はその手を取って握手をする。
「よろしく。律那さん。」
と空は言った。
「律でいいよ。」
「わかったよ律。」
「とりあえず中に入りましょうか。」
と蒼の指示に従い治安局本部内へ入っていった。
空達はエレベーターに乗り、最上階へ昇る。
そして、少し歩いたところにある部屋に入るとそこには大きなモニターがありそれを囲むように円形のデスクがある。
(なんかすごいな……)
空は辺りを見渡しながら思う。
すると、1人の男性がこちらにやってきた。
「玉超、お疲れ。進捗どうだ?」
「お疲れ様です。進捗はあまり良くないですね。」
「そっか……まぁ、気長にやっていこうぜ。」
「はい、天紋寺隊長。」
天紋寺と呼ばれた男性は空たちに向き直って言う。
「俺は治安局第三部隊隊長、天紋路猛だ。よろしくな。」
空とイリアも猛に自己紹介をする。
「俺たち第三部隊は隊長の俺と副隊長は今いないけど、それと玉超、渾亡で形成されてる。話は玉超からメールで聞いてる。対応は上に聞いてみないとわかんないけど俺は歓迎するぜ。」
「ありがとうございます。」
「いいんだよ。」
「ところで空。君はマナという存在を知ってるかい?」
「マナですか?聞いたことないですけど……」
「ふむ、そうか。玉超、マナと能力と特性のこととか諸々教えてやってくれ。俺は上に掛け合ってくる。空、俺は今から二人が治安局に仮入隊できないか掛け合ってくる。じゃないとこのまま個人で調べると君が罪に問われるからね。」
と猛は言って部屋から出て行った。
(マナ……)
空は少し考えるが、
「とりあえず、座って。」
と蒼に促されて席に着くのだった。
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次回 マナと能力と特性と