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メモリー=レコード  作者: ヒューマ
第1章 獣人黙示録編
3/11

3話 夕暮れ影を映す

3話です。

よろしくお願いします。

 夜…イリアが寝静まった後のこと。

 空はシャープペンを手に取りノートを広げ今回の件を書き起こしていた。


【怪事件。

 ここ数ヶ月やたらと救急車を襲撃する事件が発生していた。

 中に乗っていた患者は今のところ全員死亡。

 それが原因で救急車はお金を払わないと使えない様になった。

 今思ってみると今回の件と類似する点がある。

 それは、傷だ。

 今思うと救急車が襲撃された時の救急車についていた傷と飯塚沙織さんの部屋中にあった傷似ている気がする。

 それに、警察が教えてくれた情報も類似する。

 事件現場には必ず何かの影を見た人がいる。

 僕も実際に見たから間違いない。

 この2点。時間帯はバラバラ。

 同一犯の犯行と見ていいと思う。】


 本当は事件のことは警察に任せて解決を待てばいいのだが、依頼者が亡くなったこともあり空は気になって仕方がなかった。

 スマホの画面を開くと時刻は深夜2時を回っていた。


(イリアと買い物に行く予定だからな。流石に寝るか。)


 空はペンを置きノートを閉じるとベッドで横になる。

 次第にやってきた眠気が空を夢の世界に誘った。


 1月21日


 翌日、空はスマホのアラームで目を覚ます。


「んー……あー朝か……」

 と体を起こす。


 隣ではイリアが寝ていた。

 スマホに手を伸ばしアラームを止める。

 すると、イリアはもぞもぞと動き出し起き上がった。


「おはよ……空……」

 目をこすりながらイリアは言う。


「おはよう、イリアよく眠れた?」

 空は笑顔で聞く。


「うん。」

 イリアは笑顔で答える。


「それは良かったよ。朝ごはんの準備をしてくるから着替えたら顔洗っておいで。」

 空はベッドから降りてリビングに向かった。


 そして、空が朝食を作り終えてテーブルに置いた頃、顔を洗い終え身支度を整えたイリアがリビングにやってきた。


「イリア、座って。朝ごはんできたよ。」


「うん!」

 と言ってイリアは椅子に腰をかけた。


 2人は手を合わせていただきますと言い朝食を食べ始めた。

 そして、食べ終わると出かける支度を整えた2人は再びリビングに戻ってきた。


「じゃあ行こうか。」


「うん!」


 嬉しそうに答えるイリアに空は微笑む。

 2人は玄関で靴を履き家を出る。空が鍵を閉めるのを確認したあと歩き出す。

 イリアは空の手をしっかりと握っている。2人は近所のショッピングモールに向かう。

 服屋に入ると空は適当に服を選ぶ。


「イリア、これとこれどっちがいい?」

 と空が聞くとイリアは2つの服を交互に見比べる。


 そして、

「どっちも!」

 と返ってきた答えに空は思わずくすっと笑う。


「じゃあ、両方買おうか。」

 空は服をかごに入れると、


「ほかにいいのがないか見ておいで。僕ここにいるから。」

 と言った。


「わかった。」

 とイリアは素直に答えた。


 空がイリアを待っていると、

「誰です、さっきの子。」

 背後に一人の声が聞こえた。


「いきなりなんだよ。ってお前か。」

 と空が振り返るとそこには、


「久しぶり。」

 高科亜蘭がいた。


「何でお前がいるんだよ?」



「偶然ですよ偶然。」


 ______

『高科亜蘭(17歳)男性。

 日本人の高校生。

 コンピュータをいじるのとオカルトが好き。

 空に依頼をしたことで接点を持つ。

 空に憧れているらしく、出会う度に何でも屋に入れてくれと懇願して来る。

 毎回断る。

 空的にはいいやつだとは思うが懇願してくるのはうざい。』

 ______

「偶然か?」

 と空が尋ねると、

「まぁ細かいことはいいじゃないですか。」

 とはぐらかされた。

「で、ここで何してるの?」


「見てわかんねえのか?服選んでんだよ。お前こそなにしてんの?」


「この前の事件見ました?女性の殺害事件。」


「見たよ。というか見たも何も被害者の飯塚さん、依頼者だったんだよ。」


「そうでしたか…。それでなんですけどねその飯塚さんの家調べたんですよ。」


「で?」


「調べたら結構面白いこと分かりまして……まぁ詳しくはこれを見てください。」


 と言って亜蘭は1枚の写真を渡してきた。

 家の部屋の一部だと思われる写真だ。

 だが、写真のに写る部屋は大きな爪痕のようなもので傷だらけで原形をとどめていない。


「これ飯塚さんの部屋です。」


「お前家に入ったのかよ!?」


「人聞きが悪い、ドローンで撮ったんですよ。」


「で、この傷。これ猫又だと思うんです。 」


「猫又?」


「昔から本に出てくる妖怪です。」


『猫又:日本各地に伝わる妖怪。

 猫が年を経て尾が2つに裂け、人の言葉を理解し話すようになり妖怪となると伝えられている。

 山に住み里に降りてきては人間を喰うとされていた。』


「その猫又ってやつが犯人とでも言いたいのか?そんなわけないだろ。オカルトの見過ぎでおかしくなったのか?」


「そこまで言う必要ないでしょ。でもまぁ猫又はいると思うよ。だってこの写真は明らかに人がつけたもじゃないし。」


「まぁ、この写真は貰っておくよ。」

 と空は言い亜蘭から写真を受け取った。


「で、空さんの隣の人は?彼女さん?」

 と亜蘭は尋ねる。


 いつの間にかイリアは服を数着持って空の隣に立っていた。

 空がイリアの方を見るとイリアは首をかしげる。


「お前には関係ないだろ。」

 と空は答えるが、内心焦っていた。


(別にバレてもいいか)と考えつつもバレたら面倒なことになりそうだったので一応誤魔化しておいた。


「ふ〜ん。まぁいいけどね。あ、すみません用事があってそろそろ僕帰りますね。また今度!」

 と言って亜蘭は去っていった。


 イリアが選んだ服を買い物かごに入れ、レジで会計を済ませて外に出る。


「ふぅ、結構買ったな。」

 と空は呟く。


「ねー早く帰ろ!」

 とイリアは空の手を掴んで引っ張る。


「わかったから、そんなに引っ張らなくてもいいって。」


 2人はショッピングモールを出ると昨日の依頼を済ますと帰路につくのだった。

 帰り道、空はスマホに表示される時間を見ながら思う。


(すっかり日が暮れちゃったな。)


 辺りが夕焼けで赤く染まっており、そろそろ日が沈みそうだった。


「イリア、暗くなりそうだし急ごう。」


「うん。」


 家に到着した空は玄関にまで漂う異臭に気づく。


「イリア、そのままここにいて。」

 と空はイリアに言って家の中へ駆け込む。


 リビングの扉を開けるとそこには、昨日見かけた何かに酷似している生物がいた。

 いや、今ならわかる。

 二足歩行の2m近い身長、焦げ茶色の体毛、広い肩幅と獣の耳、そして何より二股に分かれた尻尾。


(猫又…)


 こんなすぐに遭遇するなて思っていなかった、それどころかいると思っていなかった。

 さらに空は目に映る猫又に一匹の猫を思い浮かべた。


(おこげに似てる。)


 空は猫又に警戒しつつも近づき声をかける。


「君は一体?どこから来たの?」

 と問いかけるが返事はなく空のことを睨みつけるだけだった。

 そして、その次の瞬間いきなり飛びかかってきた。


「うわっ!」

 と空は驚きつつも咄嗟に横に飛んで回避した。

(あっぶない……)

 と思ったのも束の間で猫又はまた飛びかかろうとしていたので今度は避けることができずに押し倒されてしまった。


「ちょっ!?まっ!」

 空は声をかけるが猫又は止まらず空の肩に噛みついてきた。


「痛っ!!」

 激痛が走る。

 空が痛みで怯んでいる隙に猫又は空の右腕に爪を立てる。


「ぐぅっ!」


 今度は腕を切り裂かれた。

 焼けるような痛みに空は顔をしかめる。

 空は耐え切れず地面に転がりながらどうにか抜け出した。


「空!」

 とイリアは叫び、空の元へ駆け寄る。


「大丈夫!?」

 と心配しながら猫又を警戒して睨む。


「イリア、待っててって言ったでしょ。」


 空は痛みに耐えつつなんとか立ち上がる。

 腕を見ると切られた場所から血が出ていた。

 傷口はとても深く明らかに重症だ。

 猫又は唸り声をあげながらゆっくりと近づいてくる。


(まずいな……血が出てるしもうそんなに長くは持たないぞこれ……)


 そんなことを考えていた矢先、突然猫又の動きが止まるとじっとこちらを見つめている。

 その目線はイリアを示していた。

 イリアは向けられる視線に嫌悪感と既視感を覚える。

 そして、猫又は突如姿を消した。


「消えた……」

 空は呟くと同時に地面に倒れた。


「空!空!」

 イリアの呼びかけに応じることはなく空は完全に意識を失った。

読んでいただきありがとうございました。

感想等あればよろしくお願いします。

していただければ作者のモチベーションに繋がります。


次回 異変治安局

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