第八話〜小雨〜
ああ、こんなつらい記憶、忘れてしまいたい。
お父さんが乗った飛行機は墜落し、お父さんは命を絶った。
多分。
飛行機の乗客はきっとみんな亡くなってる。
墜落したのが海の上だったから、誰が亡くなったのかの状況把握がしっかりとはできていない。
未だに発見されてない人もいる。
お父さんもそのうちの一人だ。
もしかしたら生きてるかもしれないって、何度思っただろうか。
でも生きてたら、僕たちのところに戻ってきてるよね。
生きてたんだって教えてくれるよね。
だからもうお父さんはこの世にいないんだと思ってる。
お父さんはいつも笑顔で、一緒に過ごした時間は短かったけど、それでもいい人だって思うくらいにはいい人だった。
過去のことを思い出していたら、時間はあっという間に過ぎていた。
もう夜の六時。
その日はお風呂に入って歯磨きをして、その後に寝た。
今日は雨が降っていた。
小雨だけど。
ランドセルをしょって、傘をさして家を出る。
いつもは学校に行きたいという気持ちはまったくなかった。
だけど、今日はなんだか学校に行きたい気分だった。
なんだかわからないけど、ブラボーに会いたくて。
教室まで行くともうブラボーはそこにいた。
ブラボーはお花が生けられた花瓶を持ってる。
何してるんだろ。
それに髪や服が少しだけど濡れてる。
雨で濡れたのかな。
でも小雨だったし、傘さしてたら濡れないと思うんだけど。