第五話〜名前〜
今日は長い休み明けの初日だったからか、授業数は少なかった。
今日は三時間。
三時間目も終わって帰りの時間。
帰りの会が終わるとブラボーくんは僕に言った。
「帰ろ!」
クラスのみんながこっちを見てる気がした。
その視線が、僕は怖かった。
でもブラボーくんは気にしていないのか、気づいていないのか、表情を何一つ変えなかった。
ブラボーくんは僕の手を優しく握ると、僕の手を引っ張った。
靴箱まで来るとブラボーくんは、僕の手を引っ張るのをやめた。
ブラボーくんは足を止める。
その後ろ姿は先程までのブラボーくんとはまるで別人のように感じた。
なんでかはわからないけど。
でもすぐにまたいつものブラボーくんに戻った気がした。
ブラボーくんは靴箱に上履きをしまうと、運動靴を取り出した。
僕もブラボーくんに続いて靴を取り出す。
「行こ!」
ブラボーくんは僕に笑顔で言った。
でも、その笑顔はなんだかわからないけど、違和感を感じた。
作った笑顔みたいな。
例えるならまるで、造花みたい。
もしそうなら、なんで作り笑いなんか。
どうしたんだろう。
まあでも、僕の勘違いかもしれないし。
僕はブラボーくんと一緒に学校を出た。
「そういえば、名前なんていうの?」
ブラボーくんは僕に尋ねた。
たしかにまだ名前言ってなかったな。
「えっと、僕はジャスパー……。よろしくね、ブラボーくん。」
僕は言った。
普段より少し大きな声で。
このこのことは、なんだか信用できる気がする。
安心できる。
僕の勘が言ってる気がする。
このこは大丈夫だと。
なんでだろうな。