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今どきそんなベタなことしない



 彼女が髪をかき上げた。

 ふぅ、と息を吐いて、俺の耳に唇を近づけてくる。


 あぁ、早くしてくれ。


 そして、彼女はそっと囁く──



「こ・た・つ」



「って、おおおおい!」


 俺は彼女から距離を取った。


「え、ダメだった?」

「今どき、漫才でもそんなベタなこと言わねーぞ!」

「じゃあ『ゆたんぽ』?」

「暖房用品の名称だろうが!」


『あたたかい言葉をかけてくれ』と、こいつにお願いした俺がバカだった。

 くそぅ。耳が熱い。

 まだ耳たぶが彼女の吐息を覚えてる。




────そっと


 2025.01.14.

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