表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/350

学園一の美少女は平穏を望む


 クラスの女子たちが歓声をあげる。

 校庭で男子たちがサッカーをしていて、彼がゴールを決めたのだろう。

 今すぐ窓に駆け寄りたいのを堪える。



「やっぱ、王子かっこいー!」

『王子』というのは彼のあだ名だ。

 生粋の日本人で庶民なのに、なぜかそう呼ばれている。



 彼の活躍に湧くクラスメイトとは対照的に、自分の席に座り本を読んでいる私。

 それを見て、友人はため息をついた。


「ほんと『王子』に興味ないのね。勿体無い」


 そして、このあと言うことは、誰も、いつも同じ。


「二人並べば美男美女で絵になるのに」


 私は図書室に行くからと席を立ち、廊下に出た。



 学園一のイケメンでサッカー部のエース。性格も良く、友人も多い。しかも成績優秀で東大現役合格も夢ではない、と言われている彼。

 そんな男女共に人気ナンバーワンの『王子』に、私はまったく興味がない──ということになっている。





 図書室のある別館へと続く渡り廊下に出ると、ひんやりとした空気に気持ちも引き締まるような気がした。


 窓から見えるのは、澄んだ青い空。


 向こうから、彼が歩いてくるのが見えた。

 珍しくひとりだ。


 一歩、二歩、三歩……


 だんだんと近づいていき、目を合わすことなくすれ違い、遠ざかっていく。



 平穏な学園生活を維持するため、高校では他人のフリをする。


 それが、私が彼と交わした約束だ。



────すれ違い


 2024.10.19.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ