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どちらからともなく手を繋いだのは



 手を繋ぐなんて、小学生の時以来だ。


 二十歳をとうに過ぎた、ブラックフォーマル姿の女性ふたり。

 駅のホームのベンチに一時間半座ったまま。




「何年か前、あの子のお母さんが具合悪かったとき、相談してくれなかったこと、さみしかった……」

「うん……」


「あの子、いつも、いつも、自分のことは、二の次だった……」

「うん……」


「気付いて、あげられなかった……」

「うん……」


「ひとりで、あんな病気と闘ってたなんて……」

「うん……」


 ぽつり、ぽつりとこぼす呟きに、相槌を打つことしか出来ない。

 何か言ってしまったら、そのまま泣き崩れてしまう気がする。




 ごめんね。知ってたんだ、本当は。

 だけど、私には何も出来なかった。

 そんなの、知らなかったことよりも、この気持ちを持っていく場所に困る。






 このまま時間を止めてほしい。

 立ち上がることが出来ないまま、終電の時間が近づいている。



 どちらからともなく手を繋いだのは、あの子と過ごした時間を、その存在を、知っているふたりだから、この痛みも寂しさも辛さも共有できるような気がしたのかもしれない。



────言葉はいらない、ただ……


 2024.08.29.

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