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濡れた右袖


 みんなの前では、うっかり者を演じているから、毎度毎度、傘を忘れても怪しまれない。

 どうせ隣の家なんだし入れてくれよ、と君の傘を奪う。


 いつもより、近い距離。

 君の方に少し傾けて長傘を持つ。


「今日午後から雨だって天気予報で言いまくってたのに。ニュースくらい観たら?」

「んー、それより寝ていたい」

「もー」



 君の自宅に傘ごと押し込み、雨の中に飛び出す。

 濡れた右袖を君に気付かれないように。




────相合傘


 2024.06.19.

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