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驟雨 ~4~

「もうっ!まったく根性無しなんだからっ!」

茉莉恵がプリプリ怒ってる。

「大事にしたいのも分かるけどっ。限度ってもんがあるっての。

だから、あんな冴えないやつなんて止めとけって言ってるのに。」

日付が変わる頃には、ちゃんと家まで送り届けてくれる彼のことを話すと

茉莉恵は、「根性無し」と、切って捨てた。

私は、嫌いじゃないんだけどなぁ。あのおっとりした感じ。

まぁ、ちょっと、そう、ちょっとだけ寂しい気もするんだけど。

「くるみ、もう、くるみから押し倒しちゃいな。」

プリプリしていた茉莉恵はとんでもないことを言う。私は目を白黒させた。

「や、無理ぃ。」


「遠くまで見渡せる観覧車、いいなぁ。」

ぽつりと呟いた私の言葉を拾ってくれて、私たちはコスモクロックの列にいた。

漸く順番が来て、スケルトンのゴンドラに乗って、ゆっくり上昇。

窓や扉は勿論、イスも床も透明で普通のゴンドラより浮遊感。

ん?そう言えば、さっきから一言も喋らないけど

まさか、高度恐怖症とか言うことはないでしょうね?

そう思って、彼を見ると彼は絶景を見てはいなかった。

ただ、真っ直ぐ私を見ていて、私はドギマギしてしまう。

「次は、あれに乗ってみたいかな…。」

ごまかすように適当に指さした先には、スピニングコースター。

彼はまだ私を見ていて、私はうろたえる。

「な、なんです?」

「や、こんな風にはしゃぐこともあるんだなって思って。」

や、寧ろこっちの方が本性なんだけど、私はムッとしたフリをする。

「はしゃいでません!」


日が傾いて、程よくお腹も空いて、場所を赤レンガ倉庫へ移す。

あちこちのショップを冷やかしながら過ごすのは楽しい。

記念にネックレス買って貰っちゃった。

パエリアの専門店で食事。ビールが美味しそうだけど、今日は車だから

アルコールはお預け。


ゆっくり食事をして出てくると、外は土砂降り。

観覧車に乗っていたときには、あんなに晴れていたのに…。

「ここで、待ってて。近くまで車回すから。」

走り出そうとした彼の服の裾をつかまえる。

「一緒に行きます。」

「え、だって、この降りだよ?待ってて、待ってて。」

私は首を振る。

「一緒に行きます。」


二人して、全力疾走。びしょ濡れになりながら

子どもの頃以来の感覚に、笑いが出てしまう。

彼が怪訝そうに振り返る。

でも、こんなハプニングも好きな人となら楽しいんだよ?

あなたは信じないかもしれないけど。


彼のところでシャワーを借りる。

濡れてしまった服は洗濯機へ。乾くまで彼の部屋着を借りることになった。

スウェットの裾をたくし上げながら、茉莉恵の言っていたことを思い出す。

流石に、言われたとおりには出来ないけど、少し勇気出してみようと決めた。


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