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あるロボットのはなし

作者: 岩月クロ


むかし、むかしのおはなしです。

そうはいっても、そんなに、むかしでは、ありません。

すこしまえの、むかしです。


ニンゲンが、ロボットをつくりました。

ニンゲンは、ロボットにめいれいしました。


「ヒトのために、いきなさい」

「ヒトのために、うごきなさい」

「ヒトのために、はたらきなさい」


ロボットは、ただ、そうしました。

もとめられるがままに、そうしました。

それが、ロボットのやくめだったからです。


ニンゲンのために、ころし、

ニンゲンのために、うばい、

ニンゲンのために、――


――

――――

――――――


あるひのことです。


「ロボットを、しょぶんしよう」


あるニンゲンが、いいました。

べつのニンゲンが、さんせいしました。

さらにほかのニンゲンも、めいあんだ、とうなずきました。


みんな、なんでもできるロボットのことが、こわくなったのです。


ニンゲンは、ロボットをこわすロボットを、つくりました。

そして、ロボットをこわすロボットに、めいれいしました。


「ヒトのために、ロボットをこわしなさい」

「ヒトのために、しになさい」


ロボットをこわすロボットは、ただ、そうしました。

もとめられるがままに、そうしました。

それが、ロボットをこわすロボットのやくめだったからです。


めいれいのとおり、ロボットをこわして、

ロボットをこわしました。


うごかなくなったロボットをみて、

ニンゲンは、バンザイをしました。

もう、こわいロボットはどこにもいません。

みんな、えがおです。

みんな、へいわです。


めでたし、めでたし。




・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・




 でもね、とおじいさんは言いました。

 内緒だよ、と人差し指を唇に当てて、言いました。


「僕はね、ロボットは壊れてしまったけど、どこかで動き続けていると思うんだ」


 とんでもない秘密を暴露するように。

 それなのに、茶目っ気すらも見せて。

 年甲斐もなく、ウィンクなんかして。


「だって彼ったら、目が覚めて彼女の写真を見た瞬間、こんな可愛い子は見たことない、ってモジモジしていたんだよ」


 だから僕は、少し細工をしたんだ。

 バレたりしないよ、だって僕は天才だからね。造作もないことさ。


「恋するロボットは、要は壊れたってことだ。共通認識さ。……え? どうして、そんなことしたかって?」


 なぜなら、僕は身勝手な人間だからね。

 それに、我が子の幸せを希うのは、親として当然の感情だもの。

 なにより、彼らは、ほかの誰よりも美しいヒトだったから。



「まあ、なんにせよ、ただの昔話さ。昔、むかしのお話。人間には、もうとうの昔に、関係のなくなったお話だよ。……え? ロボットの行方? はて。壊れたロボットがどこに行ったのかなんて、僕にはわからないね。だって僕は作る担当だもの。捨てる担当に聞かないと」



 おじいさんは、安楽椅子に揺られて、夢現の中、くすくすと笑いました。

 その顔は、とても満足そうです。

 だから、おじいさんを見つめるヒトたちも、つられて笑ってしまいました。






解釈は無限大に、人の数だけ。

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