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あるロボットのはなし

作者: 岩月クロ
掲載日:2023/10/03


むかし、むかしのおはなしです。

そうはいっても、そんなに、むかしでは、ありません。

すこしまえの、むかしです。


ニンゲンが、ロボットをつくりました。

ニンゲンは、ロボットにめいれいしました。


「ヒトのために、いきなさい」

「ヒトのために、うごきなさい」

「ヒトのために、はたらきなさい」


ロボットは、ただ、そうしました。

もとめられるがままに、そうしました。

それが、ロボットのやくめだったからです。


ニンゲンのために、ころし、

ニンゲンのために、うばい、

ニンゲンのために、――


――

――――

――――――


あるひのことです。


「ロボットを、しょぶんしよう」


あるニンゲンが、いいました。

べつのニンゲンが、さんせいしました。

さらにほかのニンゲンも、めいあんだ、とうなずきました。


みんな、なんでもできるロボットのことが、こわくなったのです。


ニンゲンは、ロボットをこわすロボットを、つくりました。

そして、ロボットをこわすロボットに、めいれいしました。


「ヒトのために、ロボットをこわしなさい」

「ヒトのために、しになさい」


ロボットをこわすロボットは、ただ、そうしました。

もとめられるがままに、そうしました。

それが、ロボットをこわすロボットのやくめだったからです。


めいれいのとおり、ロボットをこわして、

ロボットをこわしました。


うごかなくなったロボットをみて、

ニンゲンは、バンザイをしました。

もう、こわいロボットはどこにもいません。

みんな、えがおです。

みんな、へいわです。


めでたし、めでたし。




・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・




 でもね、とおじいさんは言いました。

 内緒だよ、と人差し指を唇に当てて、言いました。


「僕はね、ロボットは壊れてしまったけど、どこかで動き続けていると思うんだ」


 とんでもない秘密を暴露するように。

 それなのに、茶目っ気すらも見せて。

 年甲斐もなく、ウィンクなんかして。


「だって彼ったら、目が覚めて彼女の写真を見た瞬間、こんな可愛い子は見たことない、ってモジモジしていたんだよ」


 だから僕は、少し細工をしたんだ。

 バレたりしないよ、だって僕は天才だからね。造作もないことさ。


「恋するロボットは、要は壊れたってことだ。共通認識さ。……え? どうして、そんなことしたかって?」


 なぜなら、僕は身勝手な人間だからね。

 それに、我が子の幸せを希うのは、親として当然の感情だもの。

 なにより、彼らは、ほかの誰よりも美しいヒトだったから。



「まあ、なんにせよ、ただの昔話さ。昔、むかしのお話。人間には、もうとうの昔に、関係のなくなったお話だよ。……え? ロボットの行方? はて。壊れたロボットがどこに行ったのかなんて、僕にはわからないね。だって僕は作る担当だもの。捨てる担当に聞かないと」



 おじいさんは、安楽椅子に揺られて、夢現の中、くすくすと笑いました。

 その顔は、とても満足そうです。

 だから、おじいさんを見つめるヒトたちも、つられて笑ってしまいました。






解釈は無限大に、人の数だけ。

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