小さな春の光に
公園沿いの明るい角部屋
真新しい畳
つんと鼻をさす
いぐさの青い香り
ペンキの匂いもかすかに漂って
雀たちのさえずり
遠くから流れてくる電車の音
白いレース越しに透けて見える
若葉だけになった桜の木
春風はやさしくつめたく
君との暮らしを捨てて
この街へきた
どうしようもない悲しみは
消えてくれそうにないけど
やがて僕は
ここの暮らしにも慣れるのだろう
君の坊やは
こんな僕をパパと呼んだ
ほんとうの親のふりをして
君の子供と遊び
お風呂にもいっしょに入ったりした
光につつまれた気がしてた
きっと光につつまれていた
しあわせは誰かと暮らすから
生まれるものなのだと知った
だけど
君の胸のなかに
とどまるわけにはいかなくて
生かされているこの世界で
なにかが背中を押すから
僕はこうして飛び出した
君のぬくもりから飛び出した
僕を愛してくれてありがとう
君と君の坊やの
しあわせを祈る資格は
ないのかもしれないけど
それでも祈らせてほしい
春の光に想いながら