959話 サンチェスと孤児院
959話 サンチェスと孤児院
そう言えばサンチェスも孤児院出身だと気が付き、キロの街に飛びます。
ドアをノックするとガタゴト何かを動かす音がして、
小さなお目目がのぞき窓から見えます。
「ララだよ、サンチェス居る?」
『ララしゃまでしゅ!』
ドタンバタン大きな音がして、ドアがバンと開きます。
小脇にナンシェをかかえたサンチェスが
『姉さん、ご無沙汰してます。』
(いや、ご無沙汰してんのは私の方なんだけどね。)
『おやびん、降ろしてくだしゃい。』
小脇のナンシェがじたばたしています。
早くドアを開けようとしたサンチェスがナンシェを退かすより抱えた方が
早いと判断しましたが、早く降ろせとナンシェがサンチェスに
抗議をしている所です。
ドアの前に置かれた椅子を見たララは最初の音はナンシェが覗き窓を見る為、
椅子を動かして、ドアの前に持って行ったと理解しました。
ララが内側ののぞき窓に手を当て、スッと下に、
ナンシェの目の高さまで手を動かすと覗き窓がもう一つ、
ナンシェが驚いてドアの外側を見ますが、覗き窓は元の位置に一つ。
ララが何か魔法を使ったと理解して、キラキラしたお目目でララを見上げました。
「ナンシェ、これで椅子を動かさなくても大丈夫ね。」
『ララしゃま、すごいでしゅ。ありがとうございましゅ。』
ララがナンシェの頭を撫でながら、
「サンチェス、あんた孤児院出身だよね。」
『へい、オクタの街の協会の孤児院で育ちました。』
「あんたに面倒を見て欲しい所が有るんだ、ちょっと来てちょうだい。」
有無を言わさず異空間ララの部屋に放り込み〔テレポート〕
着いたのはノスティンの街の孤児院。
サンチェスに孤児院人材発掘計画を簡単に説明して、
「あんたに個々の孤児院の世話、守ってほしい。」
『守るって?金はララ様が出すし、中には眷属が二人もいる、
俺に出来るのはダンジョンで経験を積ませる事だけだが、
それにしても、付きっきりは無理だ。う~ん、何でだ?』
「あんたみたいのが孤児院に出入りする事で、守れる事も有るんだよ。
それに、冒険者の両親を亡くした子も結構いるから、聞かれれば
話を聞いてあげて頂戴。」
「それから派遣している眷属から要請が有ったら、すぐに来て上げて、
テレポートしても構わないから。」
『姉さん、それ、荒事の予感がしますが?』
「かまわないよ、あんた、馬鹿な冒険者の
武器を取り上げるくらい出来るでしょ。」
サンチェスが渋い顔をします。
「大丈夫よ、ヴラド子爵様の縁の者だと言えば大抵は引き下がるわ、
それでもだめなら暴れていいよ。連絡くれれば、後始末は遣るから。」
サンチェスが呆れて、
『姉さん、それって、とでもない権限ですけど、いいんですかい?』
「悪用しなければ問題無いよ。」
『悪用ですかぁ・・・。』
サンチェスさん、どこまで許されるか考えを巡らせたようですが、
察したララさん
「あんたが今考えた事、全部だめね。まぁ、宜しくお願いね。」
そう言ってノスティンの孤児院のシスターや眷属、
働いている者達にサンチェスを紹介しました。
次話:サンチェスと孤児達




