952話 シスター・ニノのお話。
952話 シスター・ニノのお話。
孤児院の窓から光が漏れて来たのを見て、シスター・ニノが、
何か有ったと気が付き建物の中に向います。
中で見た光景に、言葉を失います。
この子はもう駄目だと思って居た子が、体を起こし、
シスター・ニノに向って微笑みました。
シスター・ニノはあふれる涙をぬぐおうとせず、駆け寄り抱締めます。
他の子供達も立ち上がり、自分の方に向って来るのを見て、
思わず跪き、手を組み、天を仰いで、
『神よ・・・・・。』
言葉に成りません。
その時、”カンカンカン”
お玉で鍋を打つ音がして、
『みんな、スープが出来たよ、並んで、並んで。』
ミネとルバが子供達にスープを配ります。
ぬるくなく、熱くなく、子供たちが急いで飲んでも大丈夫な温度の
ドラゴンスープ。最も、味など分からない様ですけど。
『私は、私は、夢を見ているのでしょうか、私が神に召されてもこの子達は、
と願って居ましたが、もし、願いが叶ったのなら、
私は神の元へ参りましょう。』
ララが一言、
「行かなくていいから。
救ったのは私だけど、私、神じゃないしね。」
「あのね、貴方の命を代償に子供達を救ったのなら、それ、邪神だから、」
「貴方が居なくなると、子供たちを誰が面倒見るの?
そんなん事、思っても言っちゃ駄目でしょ。変な奴出て来るヨ、ほんと。」
『でも、でも、こんな事が、こんな奇跡を起こせるのは神か聖人の証と
学びました。あなた様は、神の使徒さまでは有りませんか?』
シスター・ニノが問います。
シスターが三人、手を組んでララに祈りを捧げようとしています。
二人はララの回復魔法を見て、シスター・ニノと同じ考えに至りましたね。
「ちが~う。私は魔法使い、ヴラド子爵様お屋敷のメイド、ララです。
今回は子供達に回復魔法を使いました。」
綺麗なカーテシーでご挨拶です。
「さて、今日は、子供たちが育つまでの援助を申し出に来ました。
でも、この街の様子を見るに、ただ援助をするだけでは
問題が有りそうなんですが、状況を教えて頂けますか?」
『仰る通りです。この街は隣国との貿易、商隊の宿場町として
栄えていたのですが、最近は交易が衰え、街道に盗賊まで
出て来る始末。この為、街に立ち寄ってくれる商隊も無くなり、
街が寂れるばかりです。住民も他の街に移ったりして出て行き、
最盛期の1/5ほどに成ってしまいました。教会からも閉鎖するとの
通知を受けましたが、子供達を置いて、私だけ戻るわけにも行かず、
途方に暮れております。どうかお助け下さいませ。」
話を聞いたシスター・ラナとシスター・クスが
ひそひそと話しています。
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