944話 ドストル
944話 ドストル
ガストルと工房主が向き合うと、互いに拳を突き出し打ち合います。
”ガン、ゴン、ギン、ゴン、ガン”
拳を打ち合う挨拶、ハンドシェイクだけどすごい音がします。
ハミルおじさんパイプを口から外して思わず見とれていした。
『久しぶりだな、でも俺が見た中でも、あれは絶品だね。』
<おう、これが俺の兄貴だ>
<ああ、俺が此処の主、ドストル、よろしくな。所でどうしたんだ?>
<それがな、このメイドさんが、
煉瓦と漆喰の材料を持って来たって言うんで連れて来たんだ。>
<それはありがたい、で、何処に置いてあるんだ?>
ララがポシェットを出して、
「この中、何処に出したらいい?」
ドストルが何とも言えない顔をしてガストルを見ます。
ララさん、この反応がたまらないとでも言う様ににっこりと微笑みます。
<そこに出しな。>
ドストルが言いますが、
『待て!』
<兄貴、材料置き場に案内してくれ。>
ドストルが不満げにガストルを見ます。
ガストルがしょうがねえとでも言う様に
<こっちだ>
一言言ってララたちに背を向けて工房の奥に歩き出します。
絶対機嫌悪くなりましたね。
ララさん、嬉しそうに後ろをついて行きます。
資材を出した後のドストルの表情を想像していますね。きっと。
木材やら鉄鉱石やら、石、砂、等が山積みに成っていますが、
長石や石灰が殆どありません。
<そこに出して起きな。>
ドストルがぶっきらぼうにい言うと、ララが前に出て、
ドストルに向って二コリと笑うと、マジックポシェットに入った
長石とカイーガの殻5個を出します。
”ドドーン”
<<ゲッ!!>>
二人が有りえない物見たと言わんばかりに、ひっくり返りました。
<なんじゃこりゃ、ハミル、どうなってるんだ?>
ガストルがハミルに向って泡を飛ばしながら怒鳴ります。
『良かっただろう、その辺で出さなくて。』
二人を見たララさん、満面の笑みです。
ガストルが
<長石は分るが、この貝殻、カイーガじゃねえのか?しかも5個>
『そうだよ、取って来たんだよ。』
二人が顔を見合わせて頷いています。
<<おめえが噂の魔法使いメイドか!!>>
二人が自己解決、納得しましたね。
<なぁよ、取って来たんなら、この貝の中身、肉はねぇか?
この実は酒の肴に絶品なんだが。>
ドストルの方が立ち直りが早い様です。
ララにおねだりをしています。
「有るよ、教会が予定より早く出来たら、みんなに1キロづつ上げるよ」
それを聞いた二人、眼が光ります。
<<よし、任せときな。>>
「じゃあ、ハミルおじさん、行こうか。」
出口に向おうとすると、
<ま、待ってくれ、俺も一緒に返るぞ。>
ガストルが慌てて、ララ達について来ます。
工房の出口で3人程の警備兵とすれ違いました。
さっきの長石や貝殻を出した時の衝撃を調査しに来たのでしょう。
「じゃあ帰ろ、中に入って。」
二人が部屋玉の中に入って、イスに座る間もなく、到着、出されます。
<あっという間じゃねぇか>
ガストルが更に何か言いたそうでしたが、諦めました。
ハミルがその様子を見て、にたりと笑います。
独り言で、
(『ララの扱いが解って来た様だな。』)
次話:孤児院でお昼
☆¨*:♦.,☆¨*:♦.,登場者の紹介 ☆¨*:♦.,☆¨*:♦.,
ドストル(ドワーフ):ガストルの兄、建築資材工房の主




