943話 ドワーフの街
943話 ドワーフの街
街の門の傍に着くと部屋玉から二人を出します。
『<ここは?>』
見事にハモリます。
流石に鍛冶の街、街の壁は鉄で補強され、
門はミスリルで縁取りされた鉄の扉です。
流石ドワーフの街、美的と言うより質実剛健 、圧倒されます。
二人とも、見慣れたはずの目の前の光景が理解できていません。
<ドワーフの街じゃねえか、どうなってんだ?>
ハミルがララの方を見て、
『サンサから聞いていたが、ララさんの権能かい?』
「そうですね、まぁ、貴族に知れると面倒臭く成りますので、ご内密に。」
<お、おう。>
ガストルが身を引くような仕草で返事をします。
『本当に魔法使いだったんですね。』
「あははは、魔法ですか、そうですね、そうしておきましょう。」
「それでは行きますか。」
ララを見る目が変わったガストルの背中を押す様にララが街の門に進みます。
歩き出すとガストルが気を持ち直したようです。
<この街で兄貴が工房を持ってるんだ。>
ガストルるが少し自慢げに話してくれます。
警備の門番に身分証明をして、中に入れてもらいます。
当然ですが門番もドワーフです。
聞いた所に寄ると、此処は街が自治権を持っており、
昔、鉱山を発見したドワーフが王国と折衝して税を納めるから自治権を寄こせと、
遣り合ったとか、王国もドワーフとはもめたくなかったのか、認めたとか。
さて、門を通り街に入ると、喧騒がすごい事に成っています。
鉄を打つ音の他に、ガリガリ何かを削る音、機械音、怒鳴り声の嵐です。
思わず引いてしまいます。
<賑やかだろ、俺達にはこれが子守歌みたいなもんだ。>
ガストルが楽しそうに歩いて行きます。
ハミルが顔をしかめてララを見ます。
「これ位なら大丈夫だよ。」
ララが興味深そうにあちこち見ながら歩いていると
10分ほどで、入り口横にドストル工房と書いてある看板の工房に付きます。
<兄貴ー、居るか―!>
思わず耳を塞ぎたくなるような大きな声でガストルが叫びました。
これまた<オー!>と言う大きな声と共に、
四角い体のドワーフが歩いて来ます。
ララがデジャブ―にとらわれています。
「このシチュエーション見た事ある。
そうだ、耳なし青猫が歩いてくる場面だ。
そうか、ドワーフってあれに似ているんだ。」
それを聞いたハミルが
『ララさん、何に似ているって?』
「何でもないよ、独り言。」
次話:ドストル




