882話 残留思念
残留思念
「アマン、シールドで囲むから、貴方も近くに来て、」
アマンが驚いた様にララの近くに寄ります。
〔シールド〕
三人をシールドで囲むと、骸骨に魔力を滲み渡る様に注ぎ、
骨の中に有る小さな記憶の断片を繋ぎ合わせて行きます。
アマンにも判るように、ララの見えている骨の記憶を送ります。
ノイズが入った記憶ですが、小さなお家、おとうさん、お母さん、
お兄さん、妹、家族の記憶、そして結婚、夫と子供。
断片的な記憶ですが、幸せだったであろう事が解る物でした。
ただ、最後は皆病で倒れ、自身もまた、子を残したまま、
無念の死を遂げた事が解ります。
「ふぅ。」ララがため息を付くと、シールドが消え、
骸骨がそこに立ったままでした。
『ララ様、これがこの骨が持つ残留思念と言う物ですか?』
「そうだね、時間を掛ければもっと沢山見れると思う。
ただ、これは単に記憶で、自我の有る物では無いけどね。」
『しかし、ララ様、この記憶に、いや、魔石の回路にこの記憶を入れれば、
自我と成りえるのではないでしょうか?』
「無理だと思う、骨の中に有る残留思念に命を与えるには
あまりに少なすぎます。死者蘇生は神の領域だから、無理だし、
止めた方が良いと思う。きっと碌な事に成らないと思う。」
「ただ、そうだね、剣士等の戦いの経験を埋め込むことが出来れば、
数倍強いスケルトン剣士が生まれるかもね。死んで間もない物ほど、
残留思念も多いし、ノイズも少ないよ。
但し、この領域は禁忌に近いから気を付けてね。」
アマンが、何かよからぬ事を考えていると察し、釘を指します。
『ララ様、それでもこの分野は研究してみたいです。』
アマンが下を向きながら、懇願する様に、うめくように言いました。
ララが少し考えて、
「仕方ないね、リッチとしての君の性だね。
研究するに当たり、生者は使わない、その為に死者を作らない。
墓を暴かない。魔界、冥界には繋がない。暗黒組織に関わらない。」
「まぁ、君がやばいと思う事はやっちゃ駄目。
定期的に私に報告しなさい。判るよね。どんなに言い繕っても
その研究はグレーゾーンだからね。」
ララが上を指さし、
「あいつらに目を付けられると、うちら眷属を含め、
皆がやばい事に成るから。」
アマンが顔を上げ、
「それでも、ララ様、有難うございます。
きっとララ様にも認めてもらえる様な結果を出します。」
アマンに何かプランが有りそうですが、ララは不安顔です。
「取りあえず、この子はもらっていくね。」
そう言うと骸骨をマジックバックに仕舞います。
次話:ご主人様に報告
☆¨*:♦.,☆¨*:♦., 言葉の紹介 ☆¨*:♦.,☆¨*:♦.,
残留思念:
生者の強い思い、楽しい事、悲しい事、嬉しい事、恨み辛み、
等が死後も、骨などに宿る現象。




