721話 新生サンチェス
新生サンチェス
サンチェスの訓練場に着くとサンチェスが胡坐を掻いて、
2m程上に浮かんでいます。
トレーナーのトート神も中に浮き、槍の柄みたいな長い棒でサンチェスの
頭を小突来ながら。
〚魔力の一部を回すんじゃなくて、持てる魔力全てを回すんだ、
そうだ、練り上げろ。〛
随分前からやっている様で、サンチェスが汗まみれです。
よく見ると、腹が少し凹んだみたいですね。
胡坐を掻いて、下を向いて目を瞑り、手は印を結んでいます。
少しづつ、前後に揺れて来ました。
それを見たトート神が、
〚よし、止めーい。〛
サンチェスがすとんと落ちて、後ろにバタンと倒れます。
荒い息をしています。
〚どうです。結構使えそうになったでしょう。〛
「確かに、魔力の質、量とも以前とは比べ物に成らないね。」
『はぁ、はぁ、ララ様、どうです。結構なもんでしょう。』
「確かにね、でもね、みんなも日々鍛錬して進化しているんだからね。
ちょっと慢心すると、すぐに置いて行かれるよ。頑張んな。」
『あの、ちっとは褒めて下さいよぉ。』
(そう言えばサンチェスには厳しい事ばかり言って居ましたね。)
「あんた褒めるとすぐ調子に乗るからなぁ、でもね、今の所、
チームの中じゃああんたが一番だね。今でその魔力なら、
この調子で頑張れば、もっと凄く成れるはずだよ。」
「しかし、こんなに変わるんだぁ、捻れたチューブもオイルも
交換できると、本当に生まれ変る事が出来るんだ。
エジプト5000年の秘儀だね。」
〚最も、今では私しか出来ませんけどね。〛
「何で?こんなすごい技術の継承者が居ないなんて、
絶対に絶やしちゃダメな技術でしょうに。」
〚これが出来る様に成るには、手先だけでは無く、魔力制御や
魔力に関する膨大な知識等、長い修行の期間が必要です。
今時の者達、特に素質の有る者は、楽な方に流れてしまい、
苦労の割に実入りが少ない事には見向きもしませんよ。
それに、特に沢山需要が有る訳では無いので
私が要れば特に問題有りません。〛
「そ、そうですね。神様ですから、寿命は有りませんもね。」
〚所で、サンチェスは何処まで仕上げましょうか?〛
「と言いますと?」
〚ララの言う、眷属の基本魔法は全て、出来る様にするとして、
こいつの中に眠っている、面白い能力があるけど、
伸ばします?結構大変ですけど。〛
「いいですね、遣ってみましょうよ。所で、それ、何です?」
〚人の世では第六感、sixth senseと言う奴、未来予知程では無い、
危険回避能力です。〛
「そう言えば、以前、サンチェスチームの連中が言って居たね。
サンチェスのそう言う所で助かっているって。是非お願い。
うん、これから冒険者を続けるに当たっては絶対必要だね。」
〚サンチェス、良いのか?〛
『おれ、どんどん人間から遠ざかって行く気がしますけど、
ララ様がそう言うなら、お願いします。』
「あんたねぇ、私がそう言ったんでは無くて、
あんたの気持ちが大事でしょうに。
気持ちよく、遣ります、お願いします。と言えんかね。」
「トート神に、まさしく神の御業で直してもらったのに、
根性は前のままかい。こんな機会は今後一生無いかもしれないんだから、
必死に食らい付いて行きなさい。わかった?」
『へい、すいません。先生、お願いしゃす。』
トート神の右眉がピクリと上がり、少し驚いた様です。
〚うむ、任せなさい。〛
ララがたきつける様に、
「さっきも必死にやっていたじゃない、
あの調子で頑張ればいいんだよ。」
「応援してんだから、しっかりやんな。」
トート神がニコニコしながら二人の会話を見守って居ます。
〚おっかさんと悪ガキみたいだね〛
「何か言った!」
〚いえ、特に何も・・・。〛
トート神も首をすくめています。
(『トート様って神様だよなぁ。
やっぱりララ様ってすげえや。』)
「じゃあ、宜しくね。」
そう言うと〔テレポート〕で消えます。
次話:クキのシールド




