535話 私の真名はルビ・ヴラド-
私の真名はルビ・ヴラド--
『ララ、これを聞くのは、最初で最後だから許しておくれ。
ララ、お前は私やナナ、ルビととても近い存在に感じる。
本当の君は何処から来たんだい?』
ララが驚き目を丸くします。
そして、両手を膝の上でギュッと握りしめ、下を向いて目をつむります。
(「ここまで、話して、私がルビ・ヴラドで有る事を話さないのは
今後の事を考えると良いとは言えませんね。
信頼を得るためにも話しましょう」)
奥様が『ララ、無理に話さなくても良いわよ。』
「いいえ、おかあ様。私の真名はルビ・ヴラド。この体は借り物です。
魂だけ、未来からこの時代に送られたのです。」
『まさか、まさか、ルビ!、でも、やっぱりそうだったのね。』
奥様が立ち上がり、私の床に座り、抱いてくれます。
『可哀そうに、可哀そうに、つらかったでしょうに、
どうして、今まで言ってくれなかったの。やっぱり、私の娘だったのね。』
二人とも涙でぐちょぐちょです。
「ごめんなさい、でも、此処まで来なければ整わなければ、
言えませんでした。許してください。
私は未来で、お父様、お母様と一緒に魔物に殺されました。」
「魂が天に召され、輪廻の輪に戻るはずでしたが、
創造神だと思われる方に再び命を与えられ、
この時代に降ろされました。
何をせよとは言われませんでしたが、
この時代に、皆が仲良く笑いあう一番幸せな時に降ろされたのは、
皆を死なせてはならないと言う事だと思い、
神様に貸し与えられた力を使い、此処まで、来ました。」
お父様が
『これで全て納得がいったよ。』
「いままで、何も言わずに自由にさせて頂いた事、感謝してもしきれません。
本当にありがとうございました。
今ここだけでも、お父様、お母さまと呼ばせてください。
ここを出れば、私はまた、ララに戻らなければ成りません。」
おとう様が天を仰ぎ、
『名を変えても、出生の秘密を作ってもいいい、私の娘ではいかんのか、』
やさしい、お父様は本当にやさしい。浮気の汚名を着てもいいと言うのですね。
「いけません、それに、私はルビちゃん担当のメイドララの方が動きやすです。」
「一つ謝らなければ成りません、
ご先祖様、ドラクレイ様の夢は私が脚色して見せました。ごめんなさい。」
『すると、先祖の遺産と言うあの施設は。・・・』
「はい、しかし、あそこは私本人、ルビちゃんで無ければ入る事が
出来ませんでしたので、全くの嘘と言う訳でも・・・。」
「あそこは創造神が作ってくれたと思われる私を援助する施設です。
あそこでこの体も作りました。極めて人間に近い人形です。」
『え?、でも、ほら、手もほっぺも、お目目も生きているわ、
死体では無いわね、でも人形でも無いわよ。』
「生き物でも死体でも有りません、魔法でその様に見せていると言われました。
魂はここに有りますので、まぁ良いかと。」
『あ、はははは。ララらしい。』お父様が大きな声で笑います。
今度は奥様が、興味深そうに『ねぇ、じゃあ、此処のメイドは?』
「はい、人形です。」
『じゃあ、誰の魂が入って居るの?』
「あはははは、私にも詳しくわかりませんが、
私の事を知っている様ですので、死んだ、おばあ様かもしれません」
室内のメイドがびくりとします。
『私、お母様に会いたいのよね、お聞きしたい事も有るんだけど。』
と言ってメイドの方を見ます。メイドは目を伏せ、こちらを見ません。
お母さんの目が、悪戯っぽく光ります。
これは断っても絶対後で一人で来ますね。
まぁ、言ってはいけない事が有ったら、あの爺さんが止めるだろうし、
私や、此処には何も問題が有りませんね。〔シールド〕
「良いですよ、この〔シールド〕の中で、お話しください。
テーブルとイス、お茶の用意位は中で出来ると思います。」
お母様が意外という顔押して、
『あら、貴方は来ないの。』
面倒臭い事に成りそうなので、ご遠慮します。
「お二人だけの方がよろしいかと思います。
お母様が、この方だと思うメイドを連れて中にお入りください。」
『どうやって入るの?』
「お母様が指で突けば入り口が開きます。」
お母様が立ち上がり、先ほどの反応を示したメイドの手を取り、
シールドの中に入ります。
お父様は、無言で様子を見ています。
こういう時は口をはさんではいけない事、よくご存じです。
次話:お父様とオーガ血鬼




