458話 シオン
シオン------
ふと、目の端に、子供が一人、座って、上を向いているのが見えました。
「ん?」と思い、振り向いて注視すると、手を伸ばして、
何かを乗せて、話しかけている様なしぐさをしています。
院長先生がララの視線に気が付き、
<あの子はシオン、ハーフエルフの女の子で、いつも、
精霊と話をしていると言って、あの様な仕草をしています。
私達には何も見えないので、周りの子が気味悪がって、近づきません。
もしかして、心の病気では無いかと、心配しています。>
でも、ララは何か感じた様です。その子の方に歩いて行くと
その子が驚いて、立ち上がり、後ずさりします。
「どうしたの?」
<まぶしいです。みんな驚いて逃げてしまいました。あなたは誰ですか、
貴方からものすごい精霊の力を感じます。>
ララが精霊神たちの加護のせいだと気が付き、
外に魔力が漏れない様に押さえます。
「これでどうかな?」<だいぶ楽に成りました。>
「あなたは、精霊たちが見えるのですか?」
<はい、この辺には小さな蛍玉しかいませんので、
大まかなお話しか出来ませんが、色々な所のお話が聞けるので楽しいです。>
<最近、向こうの方に世界樹がよみがえって、
高位の精霊が顕現したと、噂になっております。>
分邸の方を指さしたので、セレンの事だとわかりました。
「あなたは、精霊とお話するだけ?精霊の力を借りる事は出来る?」
<この辺には力の有る精霊が居ないので、出来ませんが、
以前、王都の外の泉で水の妖精に会った時は、お水を飲ませてもらいました。>
(「ラグジュ、聞いてた?。この娘、精霊使いかどうか鑑定して、」)
ラグジュが隠匿の魔法を使って表れ、瞬き一つする間で鑑定を行います。
(『ララ様、精霊使いです。しかも特性が無い、
偏りがない、オールラウンダーです。
精霊使いだけでも、ここ数百年出ていないと聞いていたのに、
オールラウンダーと成ると、初めてかもしれません。
知能も高いですし、この娘磨けば光ります。』)
ララが皆に見られない様に、にたりと悪い顔をします。
「貴方、私と一緒に来ない、貴方のいう世界樹の精霊は、私の眷属、
セレンて言うんだよ。一緒に来れば、色んな精霊と友達に成る事が出来るし、
ワクワクの冒険が始まるよ。」
(「ラグジュ、ちょっと、レミ呼んで」『はい、外に出します。』)
ポンと出たレミは、トイレでしゃがんでいるスタイルです、
こちらを見て、キャーのポーズ。ゴチンと頭に拳固をくれて
「お前はほんとに変わらないね、進化しないのかね。」
ララが顔を近づけて睨みます。レミは手を前に出して、止めてのポーズ。
それを見ていたシオンがお腹を抱えて笑います。
「こんなのも居るけど、これも妖精の端くれだからねぇ」
「シオン、貴方には、こいつがどういう風に見えてるの?」
<とても表情豊かで、お話も面白いです。>
レミがシオンの傍に行って、手を握り、
こちらを(指)刺しながら、何かを訴えている様です。
シオンがしゃがみこんで笑ってます。
シオンはレミの言葉も表情も判る様です。面白い。
精霊神の所で修行出来ないか、聞いてみたいですね。
どうせなら最高の所で修行をさせてやりたいしね。
「シオン、私達と来るかい。」
<行きます。仲間にしてください。>
ララが園長先生の方を向いて
「シオンが私たちの所に来ることを許可して頂けないでしょうか。」
園長先生が思案顔をしますが、
ロバートが『ヴラド家でお預かりする事で如何でしょうか。』
と言うと
<願っても無い事です。子爵様の所で引き取って頂けるなら、
それ以上の事は有りません。>
そりゃそうですね、孤児院から貴族の奉公人になんて、
おとぎ話レベルですもんね。
手続きはロバートに任せるとして、ラグジュを呼んで、レミを仕舞いながら、
「園長先生、無理なお願いをしたお詫びですが、
これを差し上げます。中には角兎が5000匹、
ピラーニャが10000匹入ってます。」
「高価な物ですから、出し入れは人目の付かない所で行ってください。」
園長先生にマジックポシェットを渡します。
園長先生は事態を良く分かって居ない様です。
「ウォルト、園長先生にこの使い方、と性能を教えて上げて、
私とシオンは世界樹の所に行っているから。」
と言って、シオンの手を引いて歩きだします。
ロバートは仕方ないですねと言う感じで、
ウォルトはロバートの顔を見て、頷いて、
院長先生の対応をする事にします。
ララとシオンはそのまま孤児院を出ますが、
「シオン、何か持って来るもの有りました?」
と聞きますが、シオンは首を横に振ります。
そのまま二人は、5分ほど歩いた所に有った古着屋に入り、
シオンの動きやすい服や、普段着、可愛い衣服や下着などの衣類を購入。
シオンに熊さんのマジックポシェットを持たせ、その中に入れます。
「シオン、水精霊のセレンの所に行ってみましょう。」
<はい、ララ様>二人でテコテコ歩いて、世界樹の所に向います。
次話:シオン眷属に成ります。




