454話 ロバートと芋畑の相談
ロバートと芋畑の相談------
執務室のドアをノックして「ララです。」『入ってください。』
中に入ると、机の上に書類が20㎝程の高さに積まれて居ます。
横の机では、クローリーがロバートに渡す書類と、
レットが処理できるものに仕分けています。
レットも、ハンコ漬けです。
補助机も出され、メイがロバートとレットが印を押した書類を仕分けしています。
「すごいですね」『移転が近いので、いつもの3倍はあるね。』
ロバートがうんざりした様子で、返事をしますが、書類から目を離しません。
(「今日は無理かな、」)
と思った所で『押しまい、今日はもうおしまいにします。後は明日。』
ロバートが強制終了宣言です。
全員、電池の切れたロボットみたいに、頭をがくんと下げます。ロバートが続けて
『机の上はそのままでいいよ、明日続きをやるから。
お茶の用意をしましょう。』
と言いましたが、すでにララが終了宣言の後、
すぐにお茶の容易が取り掛かって居ます。
ララが手を動かしながら、
「美味しい物を持って来たので、
食事の前ですけど、ちょっと摘みましょう。」と言うと、
全員、目がきらりと光ります。
ララが言う美味しい物です。かなり期待しているのが判ります。
小さい菓子皿に焼き芋を乗せ、「これです。」
みんなびっくり、薪の燃えカスの様な物が乗っているのですから、驚きます。
でも、ララが半分に折ると、美味しそうな香りと黄金色のサツマイモを見て、
もう一度驚きます。
『ララ様、これは???』ロバートが首をかしげます。
「取りあえず、召し上がってください。」4等分にして、渡します。
『これは、何とも言えず美味しいですね。癖に成ります。』
「それから此方が、御菓子に加工した物です」
スイートポテトを出して、食べてもらいます。
『美味しいですね、お店に出せば人気の御菓子に成るでしょう。』
ロバートがまたも絶賛、他の三人も、頷いています。
そこで洗ったサツマイモを一個だして、
「これは救荒食物なんです。台風や干ばつに強く、肥料要らずで、
気温が18℃以上の日が4ヶ月あれば、経済栽培が可能なんです。
しかも大量に成ります。」
ロバートが少し興奮した様に
『これが、供給できるように成れば、
飢饉などで飢えて死ぬ人が居なくなると言う事ですね。』
「そうです。これは、種ではなく、
この芋の目の所を残して切って植える種芋式です。」
『どこで見つけてきたのですか?』
「移転先のお屋敷の花壇に生えてました。」
「セレンが何かの卵か繭では無いかと騒いでいたので、
見てみると、此れでした。」
「そこが花壇で会った事、前の庭師が色々と珍しい花を
植えていたと聞いたので、おそらく、南の方から来た種で、
綺麗な花が咲くよと言われて植えた物だと思います。」
『ん?種芋ではなく種?』
「この芋は南の方、気温が高い所ですと、花が咲き種を付けます。」
「この辺では発芽温度に満たない為、種では無理ですね。」
「奇跡的に種から発芽した物が、運よく芋を実らせ、
更にその芋から増えた物と想像してます。
どちらにしても、かなり偶然、奇跡的に手に入った物です。」
「それで、分邸が移転するので、此処に芋畑を作って、種芋を増やしたんです。
そうして、領地の貧しい村や集落に栽培させたいんです。
そうして、やがて国中に広がれば、国が栄えます。土地を貸してください。」
ロバートがびっくりして
『どれほどの土地が入用ですか。』「空いている土地全部。」
『そんなに沢山種芋が有るんですか』
「この芋は芽出て、蔓が沢山出ます。
その蔓を折って土に刺すと、そこから根が出て、増えます。」
『しかし、国中にですか、』
「はい、種芋が沢山出来れば、領主さまから、
王様にご報告して頂ければ、程無く広がると思います。
それまでに、芋の御菓子を広めれば、更にお話しやすいかと思います。」
『解った、取りあえず、此処の土地は引っ越しに
邪魔に成らなければ何処をどの様に使ってもいいよ。』
「人手は此方で用意しますか、執事長が用意しますか?
どちらにしても、指導は、私がやりますが」
『此方で用意していいかな?引っ越しもあるからね。』
「そうですね、5人もいれば良いと思いますが。
後々、指導員として考えるなら10人位でしょうか、そこはおまかせ致します。」
「人手が都合出来次第、呼んでください。それまで種芋は預かって置きます」
『そうだねぇ。おいしいからねぇ』ロバートが何やら意味ありげです。
「駄目ですよ、後は全部種芋です。」ララが立ち上がって、
「それじゃあ、失礼して食堂に行ってます。」一礼して執務室を出ます。
食堂にテコテコ歩いて行くと、小さなセリーナがすれ違いざまに
『ララ様~。お菓子美味しかったですぅ』と声を掛けられます。
思わず「頑張って居るねぇ、偉いねぇ」
『ララ様のお蔭です。』と言われました。
一言二言話をしてから、手を振って分かれます。食堂に着くと、
『ララ様~。お菓子美味しかったですぅ。
また作ってくださ~い。』
「今度、種芋植えるから、それが実のったら食べれるよ~」
「それまでお預け~」『『『え~~っ』』』
と言いながら、みんなお顔はニコニコしています。
料理チョーがご飯を出してくれました今晩はシチューとパンです。
美味しかったです。
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