408話 ウォルトの尋問
ウォルトの尋問---------
「あなたの名前は?」
<俺は、ウォルト>
(「この人は、ねっからの性悪人間の雰囲気がしない、何か事情が有るのかな?
冒険者パーティで使ってみるのもいいかもね。ま、話を聞いてからね。」)
「ちょっと、その魔方陣見せてくれる?」
と言って、魔方陣に指を触れます。
”パチン”小さな音がして、魔方陣が皮膚の下に隠れる様に薄くなっていきます。
<おっ、何をしたんだ。ん?あの嫌な感じがしなくなった。>
「魔方陣を書き換えて動作しない様にしたんだよ。」
ヘンリーが驚いた顔をしてララを見ます。
<そんな事が・・・。あんたは一体・・・。>
「まぁ、大した者じゃあないよ、多少魔法が使えるくらいかな。」
無傷で倒れている部下たちを見て、首を触りながら、
<こんな事出来るのに大したこと無いってか。>
本当に観念したようです。
<わかった、おれの知っている事を全部話す。>
この男、使えるかどうか、ちょっとカマを掛けてみる事にしました。
「大丈夫かい?魔方陣は発動しないと思うけど
もしかしたら、と言う事もあるよ。」
<かまわねぇ。どうせこんな事、
止めたいと思っていたんだ、あんたを信じる。>
(「うん、一次試験合格!。もう少し話を聞いてから決めましょう」)
「時間は有るから、あんたの生い立ちから聞いてみようか。」
ウォルトが驚いてます。何でそんな事までと言う顔をしています。
「どこで生まれて、何処で育って、成人してから何をやっていたの?」
仕方が無いと、あきらめた様に。
<俺は孤児院育ちだ。父親は冒険者でダンジョンで死んだ。母親は
金に困って、俺を育てられないからと、カイルス教の孤児院に預けた。
15までそこに居たな。それから、冒険者に成ってノスティンの街を中心に
活動してクラスは銀までいって、結婚もしたが、
罠にはまってドボンだ。>
「罠って?」
<後から解った事だが、討伐系の大きな依頼、まぁモンスターの討伐が有って、
そこで、一ヶ月くらい前に知り合った
パーティと一緒に参加する事に成ったんだ。
これが罠だった。依頼も、組んだパーティもでっちあげ、
わざと失敗する様に仕組まれていて、その責任は俺に有ると来たもんだ。
ギルドも俺以外の者が声をそろえて、
でっちあげストーリーを言えば、何も出来ないさ。
結局依頼失敗の違約金は俺が被る事に成り、借金漬け。
甘言に踊らされて金を借りた所もグルだった。結局女房子供を取られて、
魔方陣付けられて、汚い仕事をする羽目になったのさ。面白くない話だよな。
こんな事聞いて、どうするつもりだ?>
「奥さんと、子供は生きているんだね。」
<ああ、俺が生きて、組織の為に働いているうちは殺さないと言っていたな。
だが、いい生活はしていないだろう、一緒に終わりにするのも・・・。>
「私が、奥さんと子供を救い出したら、私の部下に成りますか?」
ウォルトが驚いて、ララを見ます。
<そんな事が、出来るのか、
もし、女房子供と一緒にお天道様の下を手を振って歩けるなら、
生涯あんたの為に働くと誓っていい。そんな事が出来るならな。>
「よし、契約しましょう。
私、ルビ・グラドは汝ウォルトの妻子を救い出し、汝の元に返す事を誓う。
代償として、汝ウォルトは生涯を私に捧げる事を求む。承諾しますか?」
ウォルトは本日何回目かの驚きの表情をしましたが、
<誓います。>
使い魔の契約が完了し、ウォルトの顔色が良く成り、
体力、魔力、等が上昇したようです。
『ララ様、これは?』
「お前は私の使い魔として契約しました。
心配しなくていいですよ。特に制約はありません。
体力、魔力、寿命が上がり、怪我が治りやすく、死にずらく成っただけです。」
『それはとんでも無い事では・・・。』
「細かい事は気にしなくていいです。それより、
貴方の所属していた組織を潰しましょう。」
『これ、細かい事ですか・・・。判りました。
とにかく、組織を潰して、女房子供を助け出します。』
これから、長い夜に成りそうです。
次話:長い夜の始まり




