ムービング
ムービング--------------
食事の後はいつも通りお召列車。
運転手は君だ♪車掌は僕だ♪あ~との四人は電車のお客~~♪
とね。
お茶を頂きながら、奥様が、
『さっきの黒い球はなぁに?』
優しく聞いてくださいます。おお~~怖!
「あれはシールドと申しまして、強度は有りませんが、
外界と遮断する効果が有ります。他の視線を気にせず、
話し合いが可能と成ります。」
『で、何を話していたの』
ほんと、この人遠慮ないわぁ。頭は良いし、話術は巧みで、
不安感、威圧は与えないし、天性の尋問官ですね。
「不審な事がいっぱいありましたので、聞いておりました。」
『で?』だめだ、この人の前では裸にされてしまうわ。
「私が出した縫い包みに突然意識が宿るなんて、どう考えても変です。」
「それで、問いただした所、
お屋敷の周辺でフワフワしていた小さな小さな風の妖精、
蛍玉がルビ様の魔力により集められて、
意識を持った。と言う事らしいです。」
「シルフの妖精なんて遊び好きで小さな子供とおんなじです。
言う事聞かないと消しちゃうぞ、
と、少し脅したら大人しくなりました。」
「アトラさん、あの熊、調子よく、ご主人様をだまして、
ルビ様の守護騎士なんて、とんでもない物に任ぜられてしまいましたので、
鍛えなければ成りません。」
「とにかく、〔ムービング〕が使えないと剣も持てません。」
「さぼっていたら、ひっぱたいてもいいですから、訓練させてください。」
「駄目なら、私に連絡してください。腕一本切り落とします。」
「大丈夫ですよ、私の言う事を聞く物に交換しますから。」
それを聞いた熊五郎が、慌てて走って、滑って転んで、
転がってスプーンの前に到着しました。「訓練開始!」
「アトラさんもやってみます。?剣士がこれを使えたら無敵ですよ。
最強のズボラ魔法です。」
『私、魔法の素質ないよ。』
と言いながら乗気です。テーブルにスプーンを置いてます。
「私と一緒に(見えなき手よ我が意のままに動けムービング!)と
スプーンが持ち上がるイメージで唱えます。」アトラの手を持ち。
「1・2の3」
『「見えなき手よ我が意のままに動け〔ムービング〕!」』
スプーンが持ち上がって落ちました。
「この感じですよ、今度は一人でやってください。」
『見えなき手よ我が意のままに動け〔ムービング〕!』
少し持ち上がって落ちました。
「出来ましたね、後は練習あるのみです。」
奥様が真剣に見ています。私をチラ見します。
はいはい、判りましたよ。
「奥様もやってみましょう。」
「1・2の3」
『「見えなき手よ我が意のままに動け〔ムービング〕!」』
「ん?」アトラの時より滞空時間が長いです。
「では、おひとりで」
『見えなき手よ我が意のままに動け〔ムービング〕!』
アトラの時より高く持ち上がります。
「奥様、魔力が高いですね」。
「これが出来る様に成りましたら、離れた所に有る物を引き寄せる。
そして、手の様に物を握って動かす。
最後に剣を振る。と成ります。
そこまでいかなくても、手元に物を引き寄せるのは便利ですよ。」
〔ムービング〕がヴラド家のメイド達の間で、ブームに成り、
ちょっとした戦力に成るのはもう少し先。
「ノックです。」アトラ夢中で気が付きません私が出ます。
『お風呂のご用意が出来ました。』
部屋を覗いたメイドが目を丸くしています。
びっくりしますよね。スプーンが一杯飛んでいるのですから。
次話:マニ




