熊五郎の矯正
熊五郎の矯正-----------
6時ですか、少し早いですけど奥様の部屋に戻ります。
ノックして、ララです。
ドアが開いて、お入りなさいで入室、礼をしてお座り。
「おや、熊五郎は何処に?」パトラが答えます。
『ルビ様、リリとお散歩です。』
「魔法、ムービングの練習してました?」
パトラが首を横に振ります。
「練習が出来ないのは危機感が無いからですね。」
「ルビ様の目の前できつい事をするのは、ルビ様が悲しみますから、
奥様、2.3日熊五郎、レミを借りてもいいですか?」
『私はかまわないけど、ルビがなんと言うかですね。』
「私が説得してみます。」
三人が、帰ってきました。先頭にルビ様、レミ、リリ。
リリの思考を読みました。チンドン屋の行列です。
ルビ様とレミが周囲に手を振りながら、投げキッスまで・・・。
リリが恥ずかしそうに付いて行く画面が見えました。
「何と言う恥ずかしい事をするかな、あのバカ熊は。
指示された訓練も行わず、あの体たらくですか。」
隔絶空間、〔シールド〕三人を世界から隔離します。
熊五郎が私が怒っているのを察したようです。
その怒りの原因が自分で有る事に気づき、
ルビ様の後ろに隠れます。
それはやってはいけない行動です。怒りが爆発しました。
レイピアを抜き、熊五郎の耳をそぎます。
ルビ様も驚きの余り固まっています。
「ルビ様、おどきください。
私は、その愚か者を反逆罪で処分しなければ成りません。」
ルビ様は訳が分からず『反逆罪?』
「そうです。この雑巾は、
ご主人様から授かったルビ様の守護騎士で有るにも関わらず、
わが身の危険を感じた時、事も有ろうに、
守らなければ成らないルビ様を盾にして後ろに隠れました。
一度ならず、二度までも。」
「ご主人様とルビ様、お二人を ないがしろ にする行為、
ヴラド家に対する反逆行為で有り、これは絶対許せる事では有りません。
この場で処分させて頂きます。
ルビ様、おどきください、リリ、ルビ様を守って。」
『違うの、違うの、私が行こうって言ったの、みんなにレミを見せたかったの』
ルビ様がレミの命乞いをします。
「ルビ様、その事は大したことではありません、今、私が起こっているのは、
わが身の保身の為にルビ様を盾にした事をとがめているのです。」
「騎士に限らず、このヴラド家に住む者は、危機が迫った時、
わが身を挺してヴラド家の皆様を守らなければ成らない、
それがここに住むもの全ての掟、最低限の約束なのです。」
「前回は忠告をし、許しました。しかし、二度目、
しかもその目は自分がいけない事したのを分かっている目です。
お前は何も知らない縫い包みで居た方が幸せだったのでしょう。
今からただの人形に戻します」
ルビ様が、泣いていますが、かまいません。
こいつをこのままにして置くと絶対よくありません。
規律のゆるみ、保身の為の内通。
そう、チャックの様な存在に成ってしまいます。」
熊がポシェットからご主人様からお預かりした短剣を取り出します。
ん?私に向けるのかと思いましたが、捧げ持って居ます。
お返しします。と言う事でしょうか。
念話を許可して少し話してみましょう。
不満を持ったまま浄化されたのでは禍根を残しかねませんしね。
念話
(「お前ほどの知恵が有れば、その様な行いをした結果が分かって居るはず、
何故、その様な愚かな行いをした。答えよ。」)
(『私は、この御屋敷の周辺を漂っておりました。
ルビ様の優しい魔力によって集められ、
この中に集ったシルフの集合体です。』)
(『この御屋敷の様子をこのお屋敷が出来た頃から見て、感じておりました。
ここは静かな、平和な所です。』)
(『ララ様がおっしゃる危機。危険などみじんも御座いません。
ララ様が思い込みで危機感を募らせている様にしか感じられないのです。』)
(「風の精霊、シルフかぁ、通りで自由気まま、悪戯好きの子供だわ。」)
(「お前、私の真名は知って居るな」)
(『はい、ルビ・ヴラド様です』)
(「それで何か疑問は持たないのか?」)
(『はい、同じ名前かと。』)
(「偶然、同じ名前の者が二人いると思っているのだな、
本当に馬鹿か利口か判らんな」)
(「ヴラド家の者が同じ名前でこんなに近くに居る訳が無かろう。もういい。
説明しして上げる。」)
(「私は神の力により、未来から来たルビ・ヴラド、この先に起きる悲惨な運命を
少しでも回避する為に送られたのです。」)
(「これからここに起きた未来の映像をお前に送ります。」)
スタンビートの映像、上空笑う魔人、
ご主人、奥様の惨殺、魔物に食べられる使用人。
少数と使用人とルビ様が馬車に乗って逃げる。
こっちは囮です。馬に乗って王都を目指す使用人、前にルビ様が。
王都の屋敷は、執事長(レオン)に乗っ取られており、
ルビは捕まり、一緒に逃げて来た使用人は殺されます。
ジジの助けを借りて、何とか、レオンから逃れ、
ルビ様は冒険者として、植物採取をして糊口をしのぎます。
しかし、魔人に見つかり、手首を自切してジジの持たせますが、
ジジも真っ二つにされます。
手首が落ちる時に飛んだ血液を神が回収、再生させて、ここに送り込む。
(多少の変更・創作はご容赦・・・。)
(「今見せた未来は、私が居ない未来です。当然、貴方も消されています。
神にどの様なご意思が有るのかは存じません。
しかし、ルビ様を助けよ、皆を生かせ、と言う御意思は見えます。」)
(「実際、スタンビートを起こそうとする動きがある事を確認しています。
調査はしていますが、魔界、力のある魔人の事は表には出てこない。」)
(「最後に問う、お前はルビ様を命を賭して守る覚悟が有るのか、
苦しい修行をし、力をつける覚悟が有るのか」)
(『有ります。』)
(「ならば、誓え!身を賭してルビ様を守る事、
苦しい修行をして、力を得る事を、風の精霊神シルフ様に。」)
(『はい、私はルビ様を守る事、苦しい修行をする事をシルフ様に誓います。』)
(「もし、誓いをたがえた場合は私は神界に赴き、
眷属の責任をシルフ様に取って頂く。」)
(『ララ様は神界に行けるのですか』)
(「簡単ではないが、行ける。」)
(『神に等しき御方、貴方にお仕えいたします。』)
あれ?神に等しき御方?どこで間違ったかしら。?ま、いいゃ。
(「ご主人様から拝領した剣は預かります。
守護騎士として認められる働きをした時に返します。」)
(『はい、承知致しました。』)
剣をしまい、念話終了。再び念話の使用には制限を掛けます。
〔シールド解除〕
奥様はびっくりしたお顔で、私を見ます。
奥様の方へ向き直り、短剣を取り出し、
「奥様、これはご主人様が熊五郎に守護騎士の任を与えた時に
授けられたものです。目に余る行為の為、取り上げました。
改心すると申しておりますが、今後の様子を見て、わたし、リリ姉。
アトラさん3人が推薦し、奥様が返しても良いとご判断した時に。
再度さずけてくださいます様お願い致します。」
「この熊は、小さな小さな風の妖精シルフがルビ様の魔力で集まり、
この中に宿った物の様です。お調子者です。」
「前言撤回がひどいので、騙されぬ様、ご注意ください。
今度不遜な事を行った場合は滅します。」
奥様もララの怒りに驚いた様です。短剣を預かり、
『分ったわ。レミ、貴方も自分の存在を掛けて頑張りなさい。』
「クマ、その耳を治す事は許しません。今回の戒めとしなさい。」
「奥様、申し訳ありません、少し頭を冷やしてきます。」
と言って、退室の許可を頂こうとすると、食事まで実は戻る様に言われました。
その晩、レミは夢を見た様です。
〖シルフ様が、絶対ララを怒らせてはいけない。私も大変な事に成ります。〗
と言っていた様です。
ララ様って、シルフ様より偉いの?
しばらく混乱していた様です。
次話:ムービング




