第一章 再誕編 復活
復活-----------3/14
今、夕刻の赤い光が満ちる時、森の小さな泉の上に小さな赤き血が生まれる。
その血は静かに落ちてゆき、泉に混じることなく水面に浮かんでいる。
刹那、絹糸の様な一筋の夕刻の残光が赤き点に吸い込まれる。
すると、形をなそうとするかの様に血がうごめき、ふくらみ始める。
人の頭程の大きさに成っただろうか、ゆるゆると蠢いたと思ったら、
一瞬にしてゴルフボールほどに縮まり、爆発的に赤き強光を発した。
眼を焼くほどの光が収まると、
そこには10歳ほどの裸の子供が水に沈むことなく立っていた。
子供が両手を広げると木々がうごめき、闇と水がうねり、子供にまとわり付く。
そして、潮が引くように静かに成るとそこには血色の赤い縁取りの黒いローブと
帽子、裏は濃い緑の魔女の衣装をまとった少女が立っていた。
一言「ふぅ」とため息をつくと水面をゆっくりと歩いて岸に向かう。
岸に着くと、その場に女の子座りでへたり込み、何やら独り言を言い出した。
「何とか再生できたけど、疲れた~~!」
「ここは何処?」
「再生研究所に戻らなけりゃ成らないけど、もう動けないや。」
「精霊が居る大きな木が有れば中で休めるけど。」
もにょもにょ言っていると背を向けていた泉の上に小さな蛍の様な光がふわりと
浮んだ。その蛍玉がゆらゆらと泉の上でまるで舞を踊るかの様に動き出した。
「ん、なに?」少女が静かな気配に気が付き、
後ろを振り向くと蛍玉が驚いたように、ぴたりと動きを止める。
「助かった、あなた水の妖精ね。ねぇ、この辺におっきな木は無い?」
蛍玉は少し迷ったように円を描いてふわりと回ると泉の反対側に
ふわり、ふわりと動き出した。少女は慌てたように、
「ちょっと、待ちなさいよ。私、疲れてるんだから!」
と言うと慌てたようにもそもそと蛍玉を追う様に動き出した。
泉を超えた所で、1.5m程の木の枝を拾うと杖代わりにして蛍玉の後を追う。
蛍玉は時々後ろを振り返る様なしぐさをしながらゆっくりと木々の間を
ふわりふわりと飛んで行く。15分ほどそんな状態が続き、
少女は精も根も尽き果てる様に成って来た頃、大きな木の前に着いた。
「ついたぁ・・・」
「この木なら、あぁ、精霊も居るし大丈夫、はぁ・・・」
目の下に隈を作り、汗が顎からしたたり、四つん這いになって、あえいでいると、
蛍玉は心配でもする様に上下にふわふわと動きながら少女に近寄っていく。
「私、この木の中で眠るから、後でお礼するから名前・・・。
小さな、蛍玉の妖精だから、名前は無いか・・」
持っていた杖を木に立てかけると魔力を少し込める。
「これで魔力もすっからかんだわ。」
「それじゃあ、この杖の中に入っていて」
そう言うと木に手を当て、
「これが最後の魔力」
木に当てた手の所から小さな魔法陣が出て光り始める。
光が少女を包むと木の中に吸い込まれた。
「あったか~~い」「とにかくねる~~」
蛍玉はそれを見届けると、少し迷ったそぶりを見せてから、
杖の中にす~と入り込む。
杖の中程が「ぽっ」と一瞬光ると後は何事も無かったように静かに成った。
何日たっただろうか、
大きな木の 少女が入ったあたりが光だし、日の光を浴びるような格好で、
少女が出てきて、大きなため息を出し、背伸びをします。
「完全復活じゃないけど、とりあえず復活!!」
「体力も魔力もステーションに連絡して迎えに来てもらう位は溜まったかな。」
雲が厚く、まだ日は沈まない事が解る程度の明るさです。
「この場所がわからないし、星でも出ていれば」
「北極星ではなく、北天星が見えればいいんだけど」
「北天星の方に向かって魔力を広く拡散してぶっ放せば、迎えが来るはずだけど、
曇ってるなぁ、木の上まで行ってみるかぁ」
「あれ?今なんで北天星じゃなく、北極星って名前が出たんだ?」
「色々記憶が飛んでるなぁ。やっぱり緊急退避LV9はきついわ。」
「早く研究所に戻ってバックアップ戻さなきゃ」
「雲が厚いせいかなぁ、薄暗いよ。木の上でも星は見えないなぁ」
「夜まで待ってみますか」
木の太めの枝の上で幹に背を持たれかけて、
うとうととしているうちに暗くなって来たが、星は見えない。
大きな木から魔力をもらったので、お腹は空いているが飢餓感は無い。
「仕方ない、明日の晩までお休みですネ。」
次話:狐と蛇
☆¨*:♦.,☆¨*:♦., あとがき ☆¨*:♦.,☆¨*:♦.,
「」の形により、誰が発した言葉なのかをある程度特定出来る様にしました。
下記をご参考にしてください。
-------------------記------------------------
「」 :ルビ・ヴラド(ララ)
《》 :AIマスター
『』 :眷属/身内/アンドロイド
<> :人
() :心の声/念話・
〖〗 :人外/妖精/神
【】 :魔物/悪魔
〔〕 :魔法発動呪文