モリエールのお仕事
モリエールのお仕事-------------
熊食堂の前です。
「とーちゃんいるぅ~~~。」
<お~。ララじゃねえか。>
「何その残念そうな言い方!」
「綺麗な女の人でも期待してたの??」
「おかみさ~~ん熊とーちゃんがうわ~~もがむが。」
<馬鹿野郎、その先は冗談でも言ちゃぁイケない言葉だ!>
<なんだい騒がしいねぇ。おや、ララちゃんじゃないか。>
「おかみさん、みんな元気ですか?」
<無事だけどちょっと元気がないね。
旦那さんが如何なっているかわかんないからね。>
「今日はその報告と、新しい商売の話。
おかみさんにも乗ってもらわないと、出来ないんだけど」
チロリと上目で合図。
ここで舌先をほんのちょっと出すのが、細かい所。
<おやおや、悪だくみなら乗るよ、>
「あはははは、だから かーちゃん大好き。」
「みんな、お部屋?」
<ああ、行っといで>
二階に上がってノックをすると、
「はーい」良いご返事は一番下のランシーですね。
「ララで~す。」戸が開くと、みんなこっちを見て、
期待と不安が混じった顔をしています。
「さて、みんなの一番聞きたい報告からね。」
ごくりと生唾を飲む音が聞こえました。(気のせい?)
「ジミーは奴隷には成りません。」奥さんが崩れ落ちます。
<有難うございます、有難うございます。>
四人抱き合って泣いてます。少し泣かしておきましょうか。
ふと、部屋を見ると、やりかけの刺繍やパッチワークが有ります。
趣味の延長でもいいです、下着つくりを頼んでみましょうか。
思わぬ拾い物かも。
「でもジミーは帰って来ません。」<え???>
「彼は領主さまの王都の分邸の御者助手をする事に成りました。」
<えーー!?>
「そこであなた方ですが、こちらで商売してみませんか?」<え???>
「王都から、古着、生地、裁縫道具、鍋窯も少し、仕入れて来ました。」
「これをここで売るのです。儲け必要は有りません。
ご飯が食べられればいいのです。昼は熊食堂を手伝ってね。」
「手の空いている時は、私の頼んだ物を作ってくれればよいのです。
手間賃は出しますよ。」
「土地は荒れない様に、貸しましょう。
収穫量の1割ももらえば、食べていくには十分でしょう。」
「お店は熊かあさんに探してもらいます。
ここの近くが良いんですけどね。」
「いかがですか」
<あの、はなしが急で、少し付いて行けないんですけど。
うちの人は、王都で暮らすんですね。>
「古着の仕入れは王都で行いますから、
その時会いに行きましょう。」
<会えるんですか>
「私の馬、ロシナンテを使えば、
日帰りが出来ます。あっ、これ内緒ね。」
嬉しそうですね、あんな男でも、
こんなに心配してくれる人が居るんですね。果報者ですね。
こんな時、つくづく思います。世界は平等では無いですね。
何処で差が出るのでしょう。
今度神様に会ったら聞いてみましょう。
<今までの家と土地は収穫の一割で貸す、古着屋の二階に住む、
古着屋の合間にララ様のお裁縫、昼は熊食堂のお手伝い>
「そうです。いかが、」
<どうして、私たちに、そんなにしてくれるんですか?>
「成り行きです。強盗やって殺されそうになってる男を助けてみれば。
だまされて、家族人質に取られて売られそうになっいる。」
「その男に仕事をさせてみれば、間抜けな失敗ばかり。
家族が、あなた達が可哀そうで見てられなかったんです。」
<有難うございます。私も何もできなくて何も知らなくて、
でもあの人が何とかすると言ってくれたので付いて来たんです。>
「貴方、何も出来ない事なんて、無いですよ。この刺繍、
パッチワークの針使い、運針の素晴らしさ。
私がやろうとしている事に役立ちます。手伝ってくれますか?」
<私が役に立つんですか、何も出来ない私が、お役に立てるなら。
お願い致します。使ってください。>
「今すぐでは無いですが、
お店が落ち着いたら少しづつやりましょう。」
「さて、古着主体の雑貨屋さんをやるにはどこがいいかな。」
「熊かーちゃ~ん。」
<もう直ぐお昼だから忙しくなるよ。みんなも手伝っておくれ。>
「古着屋のお店出したいんだけど、
いいとこ無いかな、出来ればこの食堂のそば、」
<隣が空いてるよ、昼が終わったら話ておいてやるよ>
「ありがと~。、私はギルドに用事が有るから、後でまた来るね^~。」
次話:襲撃予告




