子狼
子狼-------------
「どちらにしても、奥様の許可を頂かなくては成りません、戻りましょう。」
『やだ、ララもらって来て』
「いけません、そういう許可はご自分でもらう物です。」
ルビ様後ろを向いています。こんな事は初めてですね。
でも、嫌な事に目を背けてはいけません。
「さ、みんなこっちへおいで。」
子犬たちが一斉に私の方へ走ります。
ルビ様が一匹捕まえました。
ベリアン、末の女の子ですね。
『この子と一緒にお願いに行く、』
「妥協案を出しましたか。お母さんも一緒じゃないと子供が寂しがりますよ。」
『おかあさんも一緒でいいよ。』
「困りましたけど、仕方が有りません。」
「ボス、ベリアンのお母さんはベルマだね。」
『はい』
「ベリアンと、ベルマ、ちょっと借りるよ。」
ボスがベルマの方を見ます。了解の様です。
『宜しくお願い致します。』
ルビ様、ベリアンは私が持つよ。
『やだ』
「持ち方が悪いと子犬が苦しがるよ、」
『じゃあ、抱き方教えてよ』
「分りました、でも疲れて抱っこ出来なく成ったら変わりますよ。いいですね。」
子犬の抱き方を教えます。
「犬の前足を片手で掴み、もう片方の手で、
犬のお尻から包むように抱き上げます。」
「なるべく犬を自分の身体にくっつけて重心を自分の方にして
抱いてあげると安心しますよ。
大丈夫ですか、結構重いですよ。」
頑張って、奥様の所へたどり着きました。
『おかあさま、今日はこの子と一緒に居たい。お願い。』
「ちゃんと言えましたね。」
私がニコニコしていると、奥様が、
『ジジとルルはどうするの?』
「ジジとルルは今日はお休み。」
『お母様お願いです。』
『ララ、良いの。』
「母親も連れて来ましたし、一日位は宜しいかと。」
『仕方がないわね。屋敷に上げるなら、お父様の許可を頂きなさい。』
『はい。』
「奥様、そこの少し高くなっている所でおひるにしましょうか。」
『そうね、ルビ、乗って。』ルビ様、子犬を抱えて迷ってます。
「はい、私に。」
ベリアンを受け取り、ルビ様を馬に載せます。
「パトラ、私、お弁当取って来るから、子犬見ていてくれる」
『良いよ。』
パトラが子犬を片手抱きで馬に乗ります。ちょっと行って来るね。〔テレポート〕
「料理長、お弁当ちょうだ~い!」
『お~う、出来てるぞ。』
お茶のセットも有るね。さっさと仕舞って丘にの上空に〔テレポート〕。
みんな結構早いですね。もう直ぐ到着です。〔テレポート〕地上に降ります。
先に行って安全確認。何かのウンチも落ちていないですね。
シートを敷いて、ローテーブルとクッション。
お茶のセット。お弁当の入ったバスケット。
用意出来ました、と、みんなが到着。
ルビ様を降ろして、と、すぐに子犬の所に行きます。
私は、奥様を手伝う前に、奥様は降りてます。
パトラにお茶の用意をお願いして、
私はみんなの馬を繋ぐ馬立は杭一本で良いね。
お馬の前に水桶を置きます。
ベルマのお茶の用意が出来ました。
「ルビ様、ご飯ですよ。」
『子犬と一緒に食べる~』
「いけません、犬は後です。
間違った躾をすると犬が不幸に成ります」
ルビ様が少し驚いた顔をしましたが
『わかった。私が食べた後で子犬に上げていい?』
「ルビ様が食べた後ならいいですよ」
奥様が感心した顔をしています。
『さぁ、貴方達も食べなさい。』
「奥様、今ルビ様に言ったばかり・・・。」
『貴方達は犬では無いのですよ。』
何か、誘導されている様な気がします。私、何か間違ってました?
サンドイッチのお弁当を食べた後、
ベルマにマジックポシェットの中に入って居る
お弁当を一個取り出して食べさせました。
子犬も一緒に頂きます。ルビ様はじっと見ています。
何か感じる事が有るのでしょうか。
『ララ、子犬を屋敷に連れて行って飼ったら子犬は幸せになれないの。』
「屋敷で飼われた犬は群れに戻ることはできません。
群れのルールを学んでいないからです。
群れのルールは子犬の時から群れに居ないと身に着きません。」
「外で暮らすのは、夜は寒いかもしれない、食べ物も満足に無いし、
美味しくないかもしれません。けれども、みんなと、仲間と一緒の方が。
心が温かいと思います。」
「生き物を自分の傍に置く事は、その生き物の一生に、命に、
心に責任を持たなくては成りません。覚悟が居るのですよ。」
「ルビ様、子犬を群れに返し、時々会いに来ますか?
それともお屋敷に連れて行きますか?」
『ララ、時々会いに来るだけで、私の事忘れないかな、』
「この子達はとても賢い子達です。
大切に思ってくれた人を忘れる事は有りません。」
『ララ、分かった、この子をお母さんの所に、
群れに返す。そして、時々会いに来る。』
「ルビ様、この子はベリアンと言います。名前を呼んであげてください。」
『うん。ベリアン』
『わん』
『えへへ、返事した。』
『ベリアン、また会いに来るからね。』
『わん、わん』
「ボス、迎えに来て。」
『はっ、すぐに』
おっもう来たよ、早いね。ボスとベルマが並んで座ってます。
ルビ様がベリアンを二頭の所に持っていきました。
「ルビ様、ベリアンのお父さんとお母さんが迎えに来ましたね。」
『うん、ベリアン、また遊びに来るからね。』
後ろで奥様とパトラがじっと見ていました。
私が振り向くと奥様がにこりと笑います。
いつも思いますこういう時の奥様の笑顔はとても素敵です。
『さぁ、今日は戻りましょうか。こういうのも良いわね。』
「狼たちが来ましたので、お屋敷の周も安全に成ります。
遠出をする時も護衛を付けますので、危険は少ないと思います。」
『ルビが飛び出しても大丈夫なの』
「はい、常時カラスが見張ってますし、狼達も居ます。
ルビ様が出れば皆直ぐ判ります。」
『屋敷の周辺、ルビの活動範囲は安全と言う事ですね。』
「はい、ワイバーンが来ても問題ありません。
ここは王都よりも安全に成りました。」
『貴方は不思議な娘だわ、私たちが及ばない知識、力、
そして、その小さな体に、見合った弱さまで詰め込んで居るのね。』
『でも、貴方は私の娘よ。無茶はしないで。
後から聞いて胸が痛く成る事が有るわ。』
目から涙が溢れました。何も見えません。ただ、馬の上で下を向いています。
お屋敷に着きました。馬を降りて、
みんなを〔クリーン〕で綺麗にして、おしまい。
と思ったら、奥様にぎゅっとされました。また涙が出ました。
奥様の胸の中で、小さな声で、こぼれた言葉が
「私は、絶対役目を果たします。」奥様に届いてしまった様です。
驚いた様に私の顔を見た奥様の目が光っているのが判りました。
もう一度ぎゅっとされて。奥様は目をつむり、私を見ずにお屋敷に入ります。
次話:三人の使い魔




