◆私は狐
◆私は狐-------------
私は狐、名は無い。
眷属の中で名を持つ者は位が高く、力の有る者です。
母は神の眷属、最下位の家系だったけど美狐です。
父は位の高い眷属の家系でしたが母を気に入り、つがいに選んだとの事です。
私たちのお役目は、神域内の保全と守護。
信心深い方、神域の保全に貢献のある方等の見守りです。
見守っている方に不穏な物が近寄ったり、
悪さをしようとしたときは上役に報告致します。
兄弟は沢山居ますが、お役を頂いているのは
上の兄二人と姉一人、妹が一人です。
林で狩りをしている時、ネズミが飛び出し、
道の方へ走った。あわてて、追いかけたのですが、車が・・・。
車にぶつかって、「もうだめだぁ」と思ったら気を失いました。
気が付くと、人の男の子に優しく撫でられていた。
まるでお母さんに嘗められている様なで気持ちよくてまた眠ってしまった。
次に起きた時は、お腹が減っていた。グ~と鳴った。
隣で男の子が寝ていたので、何か嬉しくなって顔を嘗めちゃいました。
ご飯をもらうと、おいしくて、あわてて食べてしまった。少し元気が出た。
それから数日、一緒に遊んで、一緒に寝ていたんだけど、
外で遊んでいると、お母さんがじっと見ているのに気が付いた。
急いで走っていき、お母さんに甘えた。お母さんが帰ろうと言ったので、
付いて行こうとしたけれど、男の子がじっと見ている事に気が付いた。
急に悲しくなった。足に思いっきり力を入れて、大きく一声吠えた(つもり)。
僕は君に恩返しをする。ずっと見ている事を主神様に誓う!!。
林に帰るとお父さんに呼ばれました。
何だろうと思いお父さんの前に座っていると、
〖お前は、人族の佐伯拓海に命を救われた事により、恩を受けた、我一族は
末席とは言え神の眷属に連なる者、受けた恩は返さねばならない。
お前に拓海様を見守る任を与える。〗言われました。
父上が仰るには、兄達ほどでは有りませんが、
私は割と位が高いらしい簡単なお役目ならば出来るだろうとの事でした。
嬉しかった、でも見守りは姿を見られてはいけないので、
一緒に遊べないし、つまらない。それに、見守りは、結構大変なのです。
拓海様は好奇心が旺盛なのか、人が行ってはいけない所によく入り込みます。
今日も神社の裏に回って縁の下を覗いてました。
そこは邪気を抑えている所だから普通の人は近寄ってはいけない所ですョ!
はぁ、疲れます。
次話:蛇




