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第16話 精霊石

「これを買い取って貰いたい」


おばさんに聞いた店にやって来た僕は、事前にインベントリから取り出しておいた皮袋をカウンターの上に置く。

食料を入れていた革袋の一つだ。

現在中は、道中採集した薬草でパンパンに詰まっている。


「ほう……こりゃ大量だな。どれどれ……おお、こりゃ凄いな」


その中身を確認して、薬剤を取り扱う商店のおじさんが目を輝かした。

おじさんは袋から丁寧に薬草を取り出し、種類ごとにカウンターに並べていく。


「ん……こりゃクロディン草か。こんなものまであるとは……」


クロディン草は高級薬材で、エリクシルも滅多に取れないと言っていた。

これにかんしてはかなりの買取価格が期待出来る。


「全部で八十六万八千メタって所だな」


メタは、この世界の通貨の単位だ。

一般的な都市部での生活費は、一月――三十日で地球とほぼ同じ――で大体二十万メタ程となっている。


つまり薬草の代金は、一般家庭四か月分程の稼ぎに相当する訳だ。


「どうする?」


売るのか売らないか、店主のおじさんに尋ねられる。


一般常識の中に、薬草の知識は入っていない。

そのため、価格が適正かどうかは僕には判断がつかない問題だった。

だから足元を見られている可能性も十分考えられる。


今は無一文だから、お金は欲しい。

けど、ふっかけらるのは腹が立つ。


こういう場合、複数の店を回って値段のすり合わせをするのが一番なんだろうけど、この規模の村で同じ様な店が複数あるとは思えなかった。

つまり……適正価格を確認する術はない、と。


「イスルギさん。この方に、こちらを騙す意図はないと思います」


どうするべきか少し思案していると、エリクシルが僕に小声で耳打ちして来た。


「実は私……他人の悪意が見えるんです。だから……」


他人の悪意が見える?

ハイエルフ特有の能力だろうか?


「わかった」


僕は素直にエリクシルの言葉を信じる。

彼女は嘘を吐く様な子じゃないし、そもそもそんな嘘を吐く意味も無いしね。


「店主、それで頼む」


「毎度あり」


代金を店主から受け取った僕は、彼に一つ尋ねた。


「精霊石を取り扱ってる店なんかは、ここにはあるか?」


「精霊石?そんな高価な物、こんな小さな村じゃ扱ってないぜ」


「そうなのか」


高価か……どうやらかなりの値が張る様だ。


「買うとしたら、どれぐらいになるんだ?精霊石は」


「俺も現物を見た事はないけど、軽く数百万メタはするんじゃないか?」


「たっか……」


金額を聞き、思わず素が出てしまった。

店主のおじさんが嘘を吐く意味もないので、実際それぐらいするのだろう。


「そうか……じゃあ他の街で探してみるよ」


そう言って僕達は店を後にする。


「あの……精霊魔法の事は、そんなに無理をして貰わなくても……」


店を出た所で、エリクシルが申し訳なさそうに僕にそういう。


――精霊魔法。


それはエルフの扱う、特殊な魔法を指す言葉だ。

エルフは精霊と契約する事でこの精霊魔法を使える様になるのだが、エリクシルはまだ契約できていないため扱う事が出来ない――エルフに伝わる契約の儀式を行う前に攫われたため。


「いや、精霊魔法は俺達の旅に役に立つ物だ。ぜひ手に入れておきたい」


エリクシルは僕が守るつもりではあるが、彼女自身も自衛手段を持っていた方がいいに決まっている。

そのため、精霊石は手に入れておきたかった。


何故精霊石が必要なのか?


精霊石は名前からも分る通り、精霊の力が宿っている物だ。

精霊自身が宿っている訳ではないが、その力をたどる事で、エリクシルなら精霊を召喚する事が可能だった。


だから手に入りさえすれば、エリクシルに精霊魔法を覚えさせる事が出来るって訳さ。


「それに、契約さえできれば売ればいいだけだしな。金銭的な負担は殆ど0だ。だからエリーは気にしなくいていい」


あくまでも依り代。

所持し続ける必要はないので、精霊と契約したら売り飛ばせばいい。


「イスルギさん……ありがとうございます」


ま、ランニングコストが重いので貯金しなきゃならないというデメリットはあるけど、精霊魔法を覚える為の対価だと思えば大した苦じゃないさ。

頑張って薬草採集なりなんなりで、お金をガンガン稼ぐとしよう。

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