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お嬢様とティナ

 依頼を終えたディーマはギルドで再会した4人を見送った後、ソードマスターについて情報を集めるためにギルドを訪れる冒険者達に話を聞いていた。


「ソードマスター?この街にいるなんて噂話程度だと思ってたな」


「白き一匹狼、白狼でしょ?私も彼に会いたくてこの街に来たの!でも、英雄クラスの冒険者だから城下町に行かないと会えないって聞いたわ」


「魔王に一人で挑んで切り刻んだ英雄だろ?魔王がまた復活したらしいからソードマスターも再び旅に出たって聞いたぜ」


「ソードマスター?どこのソードマスターだ?ソードマスターって称号を持ってる人は知られてる人でも3人は居るだろ。魔王を倒した人?あぁ、それならあの人だけだな」


 情報収集を終えたディーマはテーブル席の椅子に腰を下ろし、集めた情報を頭の中で整理しようと腕を組んで目を閉じる。


(ソードマスターはここにいるという情報と魔王を倒しに行ったという情報が多かったが、魔王を倒しに行ったのなら他の街でも聞くことがあるはずだ。俺が寄ったいくつかの街ではそんな話は聞かなかった。それに、魔王が復活したという話も他の街では聞くことがなかった。ということは……この街のどこかで隠れているのか、誰かが隠しているか……だな)


「なにか考え事?」


 腕を組んで目を閉じているディーマに声をかけたのはグラスに注がれた野菜ジュースを片手に持っていたティナだった。


「ん?あぁ、君か。少しね」


 ティナは片手に持っていたグラスをテーブルの上に置き、反対側の椅子に腰を下ろすと頬杖をつきながらディーマと顔を合わせた。


「ソードマスターのこと?なにか分かったの?」


「いや、何も分かってないな。ただ魔王を倒しに旅に出たという話が引っかかる」


「あの嘘話?誰も本気にしてないわよ?」


「俺だって本気にしてないさ。ただ他の国じゃ聞かなかった話だ。今は昔と違って歩いて国から国へ移動する必要がない。魔術師達の転移陣を使えば瞬時に移動することができる時代だ。彼が何処かへ行ったのならそういう話が他の国で出ないのはおかしい」


「魔王を倒したのは10年くらい前でしょ?それなら魔王の復活が早すぎるんじゃない?復活するのは早くても200年くらいだったはずだけど」


 ディーマは腕を組んで顔を歪ませながら考え、聞いていた情報を頼りにある場所を探そうと思い付いた。


「なぁ、城下街ってどんな街だ?英雄クラスの冒険者や貴族がいるんだろ?」


「知らないわよ。行ったことないし……」


「聞いた話だと、そこにソードマスターがいるらしい。誰かそこに入れそうな人間を知らないか?」


「英雄クラスなんて……あっ……一人…居るわね」


 そう言ってティナが視線を向けた後ろの席では他の冒険者達と一緒に酒や料理を次々と平らげているギルドマスターがおり、彼女の首からは英雄クラスの証とも言えるダイヤメダルが下げられている。


「さぁ!次は誰が私に挑戦するのかなぁ〜?」


「む、無理だ……これ以上はもう……」


「酒の飲み比べしながら食事もするとかバケモンかよ……」


「ハッハッハ!君達じゃあ敵わないよ。私を倒したいならアダマンコングと食べ比べをして勝たなきゃね」


「アイツの食事は鉱石だろ!」


「鉱石を食べるのは皮膚を覆う鉱石を一定の強度で保つためだよ。バリボリ食うけど主食じゃないんだなぁ〜」


 後ろで冒険者の5人組を負かしているギルドマスターの姿を見たティナは呆れた顔でディーマに向き直る。


「今はアイツしか居ないわ。今日は受付の彼女、居ないみたいだし」


「アトラルカ、天才魔術師として名を馳せた人物でソードマスターの相棒を自称する英雄クラスの冒険者。魔王討伐をソードマスターと共に行い、見事魔王を討ち倒したと言われてはいるが……」


「自由気まま過ぎて周りを振り回す問題児としても有名ね」


 二人がギルドマスターに視線を向けていると視線に気付いたギルドマスターが二人に顔を向けると二人は顔を逸した。


「ん〜?」


「ギルマス〜!ハルシュタット家のグローザ様が冒険者の方を要求してきましたよ〜」


「グローザちゃんが?珍しいね〜。アレかな?魔導力兵器の試験運用とかしたいのかな?」


「ダイヤさんが捕まって兵器試験に参加させられているみたいですよ〜」


 ダイヤという仮面の受付嬢の仮の名前を聞いたティナは、椅子から勢いよく立ち上がると受付嬢に詰め寄って両手で肩を掴むと強く受付嬢の体を揺さぶった。


「どこ!?その試験は何処でやってるの!?」


「うわわっ!ティナ様、落ち着いてください!こちらの依頼書を持って北の実験施設に行っていただければ案内してもらえますから!」


 受付嬢が手に持っていた依頼書を奪い取ったティナはカウンターの受付嬢に依頼書を突き出して焼印入りの複製を貰うと走ってギルドから外へ飛び出していった。


「ダイヤ……あの受付嬢の名前なのか?」


「いや?ダイヤちゃんの本名は伏せてるから、ダイヤメダルから取ってるのさ。ダイヤメダルだからダイヤちゃん、簡単でしょ?」


 ティナが座っていた椅子にギルドマスターが腰を下ろしながら説明し、それを聞いていたディーマはギルドマスターに顔を向けた。


「ソードマスターについて……知りたいのかな?」


 意味深な笑みを浮かべるギルドマスターにディーマは苦笑を返し、ソードマスターについて答えてもらえるかどうか不安に思いつつも、可能な限り情報を聞き出そうといくつか質問をすることにした。


 一方、ギルドを飛び出したティナは転移陣を使った有料の移動手段で北の街へ移動し、ハルシュタット家が所有している実験施設に魔術を使った加速で突入していた。


「グロォォォォォーーーーザァァァァァァァ!!!!」


 施設に大人程の大きさをした岩が突き破ったような巨大な穴を開けて突入してきたティナがハルシュタット家の長女、グローザを視界に捉えた瞬間にグローザの前に顔全体を覆う仮面の女性が現れ、ティナがグローザに向けて突き出していた大太刀を剣で弾き飛ばした。


 弾き飛ばされた太刀は天井に突き刺さり、片腕でダイヤに受け止められたティナはグローザの首を掴もうと両手を伸ばしてダイヤの左腕の中で暴れる。


「彼女を解放しなさい!!グローザァ!!」


「ちょっ!?また貴女ですの?!」


「ティナ様、落ち着いてください。捕まったわけではありませんから」


「また変な実験に付き合わされてんでしょ!!二足歩行魔導兵器とか!回転式魔導力砲とか!」


「仕方ないじゃありませんの!とても高価で信頼できる方に使用してもらわなければ、不安で仕方ないんですのよ!」


「ギルマスのアトラルカが居るでしょうが!!」


「あの方は独自改造と破壊をするというのに信頼なんてあるわけがないですわ!!」


 大声で言い合っているティナをグローザから遠ざけつつ、ダイヤは手にしていたカートリッジ式の魔導剣を背負っている鞘へ納めながらグローザに掴みかかろうとするティナを抑える。


「二人共、落ち着いてください」


「チッ……彼女を実験体みたいに扱うんじゃないわよ。マッドサイエンティストが……」


「わたくしはマッドサイエンティストではありませんわ」


 ティナが落ち着きを取り戻し、ダイヤが腕の力を弱くすると彼女はダイヤの左腕を掴んで出口へ向かって引っ張り始める。


「ティナ様、私はまだやることがありますので……」


「アイツといたってロクなこと無い、ここから出て店にでも行きましょう」


「しかし…」


「良いんですのよ、データは必要な分取れていますわ。何処かでお食事でもしてきなさいな、ダイヤさん」


「そうですか……。分かりました、ではこれをお返しします」


 ダイヤは背負っていた剣をグローザへ返し、それを確認したティナは出ていく際に中指を立てて見せてからダイヤを引いて施設の外へと出ていった。


「お嬢様!ご無事ですか!」


 騒ぎを聞いてやってきた執事やメイド達が武装してグローザの元へ駆け寄ってくると彼女を中心とした防御陣形が瞬時に組まれ、メイド達に囲まれたグローザは高らかに笑いながら言った。


「オーホッホッホ!わたくしとしたことが天井をぶち破ってしまいましたわぁ!また急いで来てもらって申し訳ないですわね」


「そ、そうでしたか……お嬢様がご無事であればそれで良いのです」


「お嬢様、天井に突き刺さっているのはティナ様…」


「コホンッ!」


 一人のメイドが天井に突き刺さっている剣を見て言った言葉を遮るように咳払いをして笑顔を向けるとメイドは彼女の笑顔に苦笑で返した。


 その後、ティナの剣はグローザ自らの手で回収され綺麗な袋へ入れられた状態でギルドへ送られた。

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