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幼馴染の冒険者達

 ギルドに戻ったダイヤは、ギルドマスターに呼ばれて集まった二人と共にシスターが戻って来るまでの間、テーブル席で騎士志望の剣士の相談を受けていた。


「俺、騎士になりたいって気持ちは本物なんです。でも、気持ちだけじゃ駄目だって分かってはいるんですけど…」


「イノシシ相手に調子に乗るような奴が騎士なんかなったら即棺桶入りだろーな」


「うっせぇ!それで、どうにか自分の悪い癖を直したいですけど俺達だけだと上手く行かないって言いますか…」


「俺の話を左から右に流しちまうしな。良い耳してるよ、お前」


「悪かったな、風通しのいい耳で」


 言い合う二人の姿が微笑ましく感じていたダイヤは仮面の下で微笑みを浮べていたが、そろそろ本題に入ろうと軽く咳払いをする。


「コホン……では、今回は小型モンスターの討伐依頼を受けましょう。捕獲では難易度が高く危険の為、捕獲ではなく討伐を行います」


「えっ?良いんっすか!?」


「今回は私も同行させていただきます。近くで見ていますので、手を抜かないようにお願いします」


「おいおいおい!聞いたか!?ついにモンスターとやり合えるってよ!」


「興奮しすぎだっつーの。お前、追い詰めた途端に油断する奴なんだからな。分かってるのか?」


「わかってるわかってる。あー楽しみだなぁ!」


 興奮気味の剣士にそうハンターが言っては見たものの、頷いて返事は返すが興奮が抑えられないという様子でハンターは額に手を当てた。


「ふむ、落ち着いて戦闘を行えるかどうか心配ですが、何事も経験を積まなければ分からないこともあります。では、手続きを行った後シスターさんを連れて出発しましょう」


「はい!お願いします!」


 書類を作る為にダイヤは事務所へ向かい、手続きの書類をアトラルカに作ってもらった後、事務所を出ようと扉のレバーに手を置いたところでアトラルカに呼び止められる。


「ダイヤちゃ~ん、ちょい待ち」


「はい?」


「ティナちゃん、無事治療できて復帰したって話は知ってる?」


「はい、先程聞きましたが」


「行方不明だった女性のことも?」


「……はい、洞窟で自らの手で命を断っていたと」


「じゃあ、東の森が今ちょ~ヤバいって話は?」


「いえ、初耳です」


 ダイヤは扉のレバーに置いていた手を離して体をアトラルカに向けるとアトラルカは足を組んで椅子の背もたれに背中を預けて楽な姿勢になった。


「前々から東の森がおかしいって話は知ってると思うけど、最近じゃヒュドランゲアの変異体とか訳の分からないモンスターと魔物が出てくるようになってる。だから、あまりの森の奥の方に進まないように気をつけてね」


「東の森に?なぜ変異体が…」


「噂じゃ、ネメシスも居るってさ」


「ネメシスですか……プラチナ以上のメダル所有者に接触が許可されている魔物ですね。しかし、彼らは東の森のような場所には来ないはずでは?本来、彼らの生息地は霧が発生しやすい湿地帯のはず」


「分からないね。近々、狩猟任務に出てた騎士団の人達が戻って来るし、この異変に対処するだろうから忙しくなったら連絡するよ。ふぁ~…」


 そう言ってアトラルカは両腕を上げて大きく口を開けてあくびをした後、目を閉じて寝息を立て始めた。


 ダイヤはアトラルカのことをそのままにして事務所を出てカウンターに出ると、剣士達の居るテーブルにシスターと王女の姿があり、カウンター内から大勢の話し声が入り混じる中で4人の話し声だけをダイヤは耳に入れる。


「王女様、騎士の中でこの人は強いって思う人は居ませんか?」


「何を期待しているのか知らぬが、騎士の中に強いと思うようなものは居らぬ。我より弱いからな」


「えっ?そう…なんですか?ジェラート騎士団長は滅茶苦茶強いと思うんですけど……」


「最近、手合わせしたが我の方が上だったぞ?」


「そりゃ王女様は子供ですし…痛ぁ!?」


 剣士の頭上に現れた魔法陣から王女の手刀が落ち、手刀を頭部にもらった剣士は両手で頭を押さえながら涙目で王女を見る。


「お前達の3つほど下なだけだ、大差ないだろう」


「私達は18で、王女陛下は15だから……妹みたいですね!って痛ったぁ〜!?」


 シスターの頭上にも魔法陣が展開され、手刀を受けたシスターは涙目で頭を擦る。


「……本当に騎士団長でも勝てないのなら、あとはミッドリンガルの英雄か白狼くらいじゃないっすか?」


「英雄は分かるけど白狼?えっと……誰だっけ?」


「名前と少しだけなら知ってます。確か、刀使いで白い鎧を身に着けた方だとか」


 二人の反応を見たハンターは溜め息を吐きながら腕を組んで二人に顔を向けて白狼について話し始める。


「白狼は魔王討伐の旅をした武人だ。冒険者でもない、勇者でもない彼は自分の技と知恵で数々の街を訪れては人々を救った人だ。魔王の討伐はしなかったらしいが、魔王を追い詰めて和解の道を選んだって言えば彼のしたことが凄いって分かるだろ?」


「それで魔族の活動が弱まっていったんですね。今でも小競合いは起こりますが、昔ほどじゃ無いそうですし平和だと聞きます」


「魔王と和解するなんて凄えな。凄え優しそう」


「ああ、実際優しいぞ。頭を抱える程にな」


「王女陛下はあったことがあるんですね、どんな人なんですか?」


 シスターにそう聞かれた王女は考えるような仕草をしながらカウンターに立っていたダイヤを見つけて微笑むと顔をシスター達に向けて目を閉じた。


「優しいには優しいが自己犠牲を好む奴でな。命の危険がある場面ほど頼りになる奴だった。我は奴程の者には今だに会えていない」


「王女陛下、その様子だともしかして……好きなんですか?」


「うむ、大好きだ。恋心などという言葉では表せぬ程にな」


 王女が想いを言葉にして出した瞬間に近くから咳払いをするダイヤが王女達の元へ歩み寄ってくる。


「んっん!……皆様、準備ができました」


「あっ!すみませんダイヤさん、もう少し待ってください。王女陛下、そんなに好きなら夜這いを…」


「もうしたぞ?本来の目的は達成できなかったが、共に夜を過ごすことはできたな」


「夜這いってなんだ?」


「なんてロマンチック!王女陛下王女陛下!もっとお話を聞かせてください!」


「なぁ?夜這いってなんだよ」


「お前は黙ってろ」


 ハンターに黙るように言われた剣士は“夜這い”が何を意味しているのか分からず、二人の話について行くのを諦めた。


「そんなに猛アタックしているなら、やっぱり白狼様からも夜這いをされたことが…」


「しません、そんなこと」


「え?」


 思わず言葉が出てしまったダイヤは仮面の下で焦って視線を泳がせるが、冷静になって次の言葉を考え口に出す。


「彼はそんなことしませんよ。サラ様を慕っておりますから」


「ダイヤさんも白狼様にあったことがあるんですか?」


「ああ、ダイヤはここで受付嬢をすると共に王城のメイドをやっていたのでな。白狼と顔を合わせたことは数え切れないほどあるだろう」


 鏡を見れば白狼と嫌でも顔を合わせるのだから確かに数え切れないと心の中でダイヤは思いつつ、本当の事と嘘を混ぜて誤魔化そうと考え始める。


「そう、ですね。確かに数え切れないほど会っていました。王城ではほとんど毎日ですから」


「えっ?毎日?そんなに廊下ですれ違うんですか?」


「いえ、廊下では……あ、いや」


「廊下で会わないのに毎日?まさかお部屋で!?」


「違います。違いますので話を聞いてください」


「毎日って言うんだから飯を食う場所とかじゃねぇか?」


「なるほど、メイドさんですし配給とかする時に食堂で顔を合わせるってことありますよね。それなら納得です」


 剣士の何気ない言葉に救われ、周りに悟られないように息を吐いたダイヤは依頼書の複製を王女に渡してすぐに話題を変えようと考えている時、悪戯ぽっい笑みを浮かべる王女に気が付いた。

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