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森の捜索

 冒険者の男女二人が狩猟することになっていたアゲラダリノスとは、標的が動かなくなっても大きな角で転がしてズタボロにする凶暴な牛であり、半端な物理攻撃や魔法による攻撃でも突進を止めることができないことからゴールドメダルを取ったばかりである冒険者達の最初の壁としても有名な牛である。


 そのモンスターを狩猟する予定だった男女二人の内、男性のディースは焼死体となって発見されていた。


 アゲラダリノスは熱を持つような特性も魔法も使わないため、焼死体となった原因の調査にダイヤは王女の転移魔法で街から遠く離れた森へ行き、ティナと共に調査を行っていた。


「ダイヤ、私を選んだ理由を聞いてもいいかしら?」


「ティナ様の他に数人のゴールドメダルの方に声をかけたのですが、お時間を頂けたのはティナ様だけだったからです。本来なら私が出ることはないのですが少し訳がありまして……。もうすぐプラチナメダルを獲得できるという時に申し訳ありません」


「別に良いわよ、そんなに急いで取りたい物でも無いから」


「そうですか。ティナ様、私達はアゲラダリノスの調査と女性冒険者の捜索を行わなければなりません。本当なら手分けをして調査と捜索を行いたいところなのですが、今回は…」


「分かってるわ、不審な点が多いから二人で一緒に居ないといけないんでしょ?分かってる。けど、どうして貴女ハルバードなのよ」


「はい?」


 ティナは不満そうな顔でダイヤが背負っているハルバードを指差して言う。


「どうしてと言われましても。これが私が主に使っている武器なので…」


「ふーん……あのハンターから聞いたけど、貴女って他の人と街の外へ行く時だけハルバードなのよね?守備隊の連中から聞いた話だけでも達人級の太刀使いなのに…」


「申し訳ありません。街を出た時からその様子だということは、私の太刀捌きを楽しみにされていたようですね」


「べ、別に……いや、そうよ、楽しみだったのよ。滅多に無い機会だし、今回みたいな事態じゃないと一緒に外に出るなんて出来ないだろうし……」


 不満そうな顔から落ち込んだような顔になったティナに罪悪感を感じたダイヤは顎に手を当てて考え、何かを思い付いたダイヤは腰のポーチから一枚の名刺のような紙を取り出してティナに差し出した。


「なにこれ?」


「プラチナメダルの方であれば、ダイヤメダルの方と共に狩猟に行くことができますよ。もし一緒に行きたくなった場合は、私を指名してお誘いください。それは指名のために必要な指名票です」


「し、指名票?……えっ?というかちょっと待って……これ使用制限無いじゃない!!」


 指名票を受け取ったティナは票に書かれた「使用回数制限なし、有効期限無期限」という文字に目を疑って何度も瞬きを繰り返し、目を擦って票を何度も見返した。


「長いお付き合いですし、信用できる方ですから」


 ダイヤに微笑みながら言われたティナは顔を赤くさせ、さっきまで出ていた落ち込んだ雰囲気は一変して喜びに満ちた雰囲気になっていた。


「ふふっ……そ、そう?ありがと……ふへへ。ま、まぁ色々と突っかかってる私のことを信用してくれてるだなんて驚きだけど?長い付き合いなんだから、そうよね。これ家宝にするわ」


「そこまで大層な物では無いのですが……ん?」


 ティナと会話しながら周りを見ていたダイヤは地面に大きな足跡を見付け、その場にしゃがみ込んで足跡を調べ始める。


「大きい4本指……それにこの僅かに混じっている砂のようなもの……火山灰のようですね」


「火山灰?この辺りで火山というと……ノックスラックかしら?足跡の正体は分かる?」


「ソラトゥーナ、見つけると幸運が訪れると言われているモンスターですね。毛皮や首はとても高く売れるので、お金に困ることがなくなるとも言われています」


「ソラトゥーナって、見つけても逃げ足が速くて討伐できないって言われてる大型の狐?」


「ええ、繁殖期になると雌が凶暴化するので通常個体はシルバーで案内を、ゴールドでは凶暴化した雌の個体の案内といったように分けています。通常の個体と違って凶暴化した雌は速さを活かした攻撃をしてくるのでシルバーで案内する通常個体とは全くの別物ですから」


「思い出した、そういえば前に依頼を受けたことがあったわね。あの時はその…………逃げられた……のよね……」


 残念そうな表情を見せるティナにダイヤは立ち上がって肩に手を置き、微笑んで見せるとティナは顔を逸した。


「あの時も言いましたが、凶暴化した雌を相手に瀕死まで追い込んだのですから気負わないでください。チャンスはまた来ますよ」


「そ、そうね……。ち、ちゃ、チャンスくらいいくらでも来るだろうし?今の私なら絶対に仕留められるわよ」


「声が震えてますが具合が悪いのですか?」


「違う!この辺にまた来てるなら今度こそ仕留めてやろうって思ってその………そう!武者震いよ!武者震い!」


「そうですか。今度こそティナ様が依頼達成の知らせをしてくることを楽しみにしています」


「ええ、楽しみに待っていなさい。正直、あの速さに付いて行くの大変だったからチャンス来ても気乗りしないけど……」


 一人小声で愚痴るティナは足跡が続いていく方を見て、足跡が森の奥へと続いているのを見たティナはふとソラトゥーナの生態のことを思い出した。


「ソラトゥーナって確か、見た目に似合わず温かいところを好むはずだけど……砂漠とか、火山とか人間からしてみれば熱い場所に居ることが多いって聞いてたけど」


「ええ、本来であればそうですね。ですが、例外はあります」


「例外?」


「付いてきてください」


 ダイヤは足跡を追って森の奥へ向かって歩いていき、ダイヤの言葉が気になったティナはその背中を追って二人は森の奥へと入って行った。


 あるき続けること数十分、二人は足跡を追って洞窟の前に来ていた。洞窟の入り口は大型のモンスターでも入れそうなほど大きく、洞窟の入口付近にはいくつかの足跡が残されていた。


「新しいですね、火山灰も混じっているようには見えません。ここで生活をするようになってから時間が経っているのでしょう」


「洞窟って言えば……」


「子育てです。恐らく、火山で子育てができない理由があって森へと場所を移したのでしょう」


 足跡を調べていたダイヤは立ち上がり、洞窟の奥へと視線を向ける。洞窟の奥は光が届かないほど暗く、深い暗闇に包まれていた。


「人が入ったような痕跡は見当たりません。血痕や布切れなどといったものも見付かりませんし、この辺りではないのでしょう」


「それなら他の場所を探してみましょう」


 二人がその場を離れようと歩き始めた時、草を掻き分ける音と唸り声のような声が二人の耳に入り、すぐさま武器を手にして音がする方向へと体を向ける。


 二人の足元に薄い黄緑色の煙が漂い始め、その煙を見たティナは嫌な予感を感じて額に冷や汗を浮かべ、徐々に近付いてくる影を睨んだ。

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