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か弱い自称美少女魔女様

 白狼の意識が戻ってから一ヶ月後、彼女に会いに来た魔女は王女と睨み合いになっていた。


 城の門前で仁王立ちし、魔女が城へ入ることを許さない王女は子供とは思えない威圧感を出して魔女を牽制する。


「ハハッ、どうしても入れてくれないっていうのなら王女様の国の人々から魔力を奪っちゃおっかな〜?」


「失せよ、魔女。貴様に渡すものなどない」


「えぇ~嫌だなぁ〜?白狼ちゃんを渡してくれれば、それで済む話なんだよ?彼女の魔力が私には必要だからさ」


「王女様、あの者は危険です。お下がりください」


 王女の後ろで様子を見ていたメイド長が退くように言うものの、王女はそれを聞き流して魔女から目を離そうとしない。


「お子ちゃまの出番じゃないよ。そんなちっちゃい体でどうしようってのさ」


「ふん、我の身が小さいからと侮るな。貴様に負けるような我ではない」


「へぇ?」


 不気味な笑みを浮かべる魔女とそれを睨む王女。この二人の間に入れる者はメイド長のみだったが、メイド長は王女の背中を見て何かを感じたのか門を守る衛兵の近くまで下がって行った。


「フェレリメイド長……!」


「姫様が本気になられていては止めようがありません。離れていてください」


 サラ王女の身を案じて出てきていたメイドと騎士達をメイド長は下がらせ、二人の近くに誰も近寄らせないようにしている間に突然の突風がメイド長達を襲う。


「アッハハハハ!子供に何ができるっていうのさ!まあ魔力は子供にしては結構あるけどね、所詮子供は子供なんだから大人に勝てるわけ無いじゃん」


 魔女が指を鳴らし、無数の空気の刃が王女に襲いかかるが王女は腕を組んだままそこを動かず、魔女のことを睨み続けていた。


「「サラ様!」」

「「王女様!」」


 メイドと騎士達が声を上げる。フェレリは冷や汗を流しながらも黙って様子を見守る。


 空気の刃が命中し、土煙が立つものの王女に向かってきていた空気の刃は王女の周りに展開された白い魔法陣によって防がれ、それを見た魔女が口笛を鳴らす。


「ヒューッ、凄いね。軽めに撃った魔法だったけど防御魔法で防いじゃうんだ。結構頑丈そうだね〜それ」


「ふん、どうした?怖気づいたか?」


「まっさか〜、そっちこそ怖気づいちゃってないの〜?」


「挨拶で怖がるようでは一国の王女としては恥だ。こちらからも挨拶を返してやろう」


 王女の頭上に魔法陣が展開され、そこから剣先が出てくると余裕の笑みを浮かべていた魔女の顔が疑問の顔へと変わる。


「ん?生成魔法を使った攻撃?魔力の消費が激しいんじゃない?」


「それはどうだろうな?」


 真顔で睨み続けていた王女の口角が上がり、人差し指だけを上げた王女の右手がゆっくりと上げられ、人差し指だけが下ろされると同時に魔法陣から目にも止まらないほどの速さで剣が射出される。


 攻撃を受ける寸前で素早く展開された魔法陣が砕け散り、魔女の背後で銀色に輝く剣が地面に突き刺さる。


「……っ!本物の剣に魔法の力を付与してる?」


「気付くのが遅いな、魔女。魔法のことなら一目でわかるだろう?長く魔法を使っているのだろうからな」


「ふっ、ふふふ……他の場所からわざわざ転移させて本物の剣を射出する人なんて見たことがなかったからね。消費魔力は確かに魔法で作るよりも低いかもだけど、在庫がなくなっちゃったら撃てなくなるよ?」


「貯蔵は十分だ。銀の武器を存分に振る舞ってやろう」


 王女が両手を広げると背後にいくつもの魔法陣が展開され、城が見えなくなるほどの魔法陣の数に長く魔法を研究してきた魔女も驚きを隠せなかった。


「こ、こんな数を展開するなんて……ヘヘッ……面白いじゃん!」


 魔女も負けじと両手を広げ、巨大な魔法陣を王女と自分の足元に展開する。


「グラウィタス・アウジェーレリ。卑怯とか言わないでね?」


 足元に展開された魔法陣により、重力が増加したことで展開された魔法陣から剣先を覗かせていた剣が揺れ始め、王女は顔色一つ変えずに剣を魔法陣の中へ引かせる。


「ん?あれ?なんでそんな余裕そうなの?」


 重力が増加している中で王女が平然と立っていることに違和感を覚える魔女だったが、腕を組んで首を鳴らしている王女の周りに魔法陣が薄っすらと見えることに気が付く。


「うっそ〜……こりゃ子供なのか怪しいね。中身大人なんじゃないの?」


「自分の力を最大限活かしたい気持ちで徹夜を繰り返せば力などすぐに手に入る。お節介なメイド長が居なければ、もっと力を付けられたが……健康で居られるのはそのお節介なメイド長のお陰だ。だから無理もできる」


 左腕を上げ、魔女へ向けて振り下ろされると同時に重力を無視した剣が次々と魔法陣から射出され、無数の剣が矢継ぎ早に魔女を襲った。



 数時間後、城の門前で行われた戦闘に勝利した王女が空中に展開していた魔法陣を消滅させていき、いくつもの剣が地面に突き刺さっている中で倒れて空を見上げている魔女の元へと歩いて行く。


「んん~?なんで私……倒れてるんだっけ?あれ~?」


「お前の負けだ、魔女。そら、敗者には首枷をくれてやろう」


 王女が指を鳴らすと魔女の首に銀の首枷が付けられ、首枷に繋がる鎖を王女は腕に巻き付ける。


「ぐっ……ち、力が抜けてく……わ、私に乱暴したりしないよね?こんな美少女魔女を火炙りにとかしないよね?」


「処刑するのは簡単だ。お前を自由にするのも容易だが条件があるのでな、まずはそれを話してからだ。逃げたいのであれば逃げてみるといい、試す価値はあるかもしれないぞ?」


「は、ははは……逆らったら消し炭にされそう……」


 魔女は諦めたような表情で王女に引きずられ、門をくぐって城へと入って行った。


 王女が魔女を引っ張っている頃、魔女を引きずりながら門をくぐって行く王女の姿を城の窓から見ていた白狼が窓から離れて椅子へと腰を下ろす。


「あれが第3王女の戦闘法か。フッ……敵に回したくないものだな」


 窓の外を飛ぶ鳥を眺めながら独り言を呟いた白狼は窓の近くにある椅子に腰を掛ける。王女の戦いぶりを思い返す彼女の表情は自然と喜びに満ちた表情になっていた。


 そんな彼女のところへ騒がしい音が近付いてくると彼女の居る客室の前で音が止み、扉が勢いよく開け放たれる。


「さぁ今日こそ真実を話してもらうぞ!魔女、白狼に服従の魔法をかけよ」


「アッハイ……ごめんね、白狼ちゃん。ちょっと迷惑かけるよ」


「そこまでするか……」


 部屋へ入ってくるなり王女の命令する声が部屋中に響き渡り、魔女が命令通りに服従の魔法を白狼にかけるために王女の横を通り過ぎる……フリをして振り返り、王女の眼前に右手をかざした魔女の手に魔法陣が展開され、至近距離から王女に向けて服従の魔法が放たれる。


「ハッハー!!だぁれが貴女の命令にしたが……うへ?」


 至近距離から王女に向けて放ったはずの魔法は首輪の効果で自分自身にかけられ、目に怪しい光が宿ると王女は腹を抱えて笑い始める。


「フハハハハハハッ!!愚か者が!子供だと甘く見過ぎだ貴様は!ふっははははは!!こんな大馬鹿者を見るのは初めてだ。クフフッ……ふっはははははは!」


「………某は何を見せられているのだろうな」


 白狼は目の前で行われた芸のような出来事に困惑し、大笑いする王女に呆れていると突然王女はバランスを崩して後ろに倒れる。


 地面へあと少しで頭が先に地面へ落ちそうになったところで王女の体を椅子を倒して飛んできた白狼が滑り込んで受け止める。


「王女、そなた魔力が……」


「ふっ……まだ…まだ動ける……我は……まだやれるぞ……」


 辛そうな声を出す王女の額に汗が浮かび上がっていることに気が付いた白狼は、動けるような状態ではないと判断して王女の体を抱き上げてベッドまで運んだ。


ベッドへ王女の体を下ろしたところで客室の扉が開き、メイド長が部屋へと入ってきた。


「姫様、やはり無理をされていたのですね」


「無理など……しておらぬ……まだ……まだ動ける……」


「魔力を激しく消費したのですよ?もう立つこともできないはずです」


「戯け……ここまで……走って…きたのだ。我は……真実…を……」


 王女の目がゆっくりと閉じられていき、王女は離れようとした白狼の袖を力強く掴んで意識を失う。


「はぁ……白狼様、そろそろお話になられても良いのではありませんか?王女様がここまでするとは、正直思ってもいませんでした」


「………ふむ」


「貴女が話せば済むことなのです。この王女様の姿を見てなお、貴女は口を閉ざし続けるおつもりですか?」


「………良かろう、ただし条件を付ける」


「条件?」


 白狼はメイド長と目を合わせ、話をする条件を話した。その条件を聞いたメイド長は予想外の条件に瞬きを何度も繰り返した。

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