7 そうして逃避行は始まったのさ
マナさん視点に戻ります
家族以外には正しく『氷の魔術師』さまっプリを発揮した父による、ほぼ一方的な期間限定大特価セールたたき売りだぜお得だろ? な圧迫面接が行われてる頃。
私たちは森の中を低空飛行していた。
崖から飛んだあと、ドレスのスカートを膨らませてパラシュートもどきにして、落下の勢いを殺し、気球もどきにシフトして横移動。我ながら素晴らしい魔力操作だねー。
「お嬢、もうすぐ森が終わるけど」
「じゃぁそろそろおりようか。きがえないとめだつよねー」
私のドレスの裾をつかんでぶら下がってるロリコンは、あいよーと返事をするや手近な木に飛び乗った。
私は降りながら魔力展開。空間魔法にしまってある町娘風ワンピースに一瞬でお着替え。地面に足をつけた時には、髪もツインテールに結ばれた立派な田舎娘スタイルになっていた。便利ー。
「とりあえず、田舎の商家のお嬢とお供でいいか。魔の森までの足はどうする?」
「おうまさんかってぎそーしてもいいけどー、おってがめんどーだから、にんしきそがいしてはしるかとぶー」
「休憩なしはさすがにつらかとん。旦那とお嬢しかできんよあれ」
「ちょーはやくていいのになー」
そういえば、置いてけぼりにしたお供たちはどの辺にいるだろう。帰りに父に会えるかな、会えるといいね、無駄な出費のトンボ帰りだな。収支報告書は父に任せようそうしよう。
夜は宿に泊まることにして、昼間は出来るだけ移動することにした私たちは、近くの街でお昼ご飯中。野菜のスープリゾットはちょっと味薄めなのねー、塩もそれなりなお値段するしな。
「街いっこ移動して今日は終わりかな」
「そのころにはおとーさまからおへんじくるよねー」
父からの返事は、夜寝る前に来た。氷の鷹とか無駄に凝ってるー。
それによると、私の強制召喚は国王の仕業で、拉致監禁は王妃と女官の暴走とのこと。なんでも想いあっていたのに引き離された私たち(?)の子供が、私たちを繋いでくれるのだ、と宣ってるそうな。
私たちって誰だよ? 王妃と国王? え、王妃と父なの? ありえないんですけどー。誰が見てもどこからどう見ても、母さま一筋他は目に入りません例外は子供だけですがなにか? な父が他の女の人とか、なんて無理ゲー。
まぁ、顔はいいから一方的に好かれてんだろうけど、まさかの王妃とか。国王それでいいのかよ。え、いいの? あ、そう。
なんか昔から国王→王妃→父⇆母みたいな関係だったみたい。
国王片想いかよ、憐れだなー。てか違う人選んでれば幸せだったろうに。
「旦那に迷惑がかかるから、抑止力と壁代わりも含めて王妃にしたとか聞いたよー? 子供は作らない、できても王位継承権はなしって決まってたんだとか」
現代ならガチストーカーである。
「むかしからってこと? あるいみブレないのはいいことだけど、げんどがあるよねー。あれ、そしたらおうじたちは?」
「第一王子はうっかりだってー。第二王子は側室の子だけど後継者扱いなんだとー」
なんというお貴族さまの闇。
確かにお花畑の遺伝子は危険だ。なんか国王も変だもの。
王妃という立場なら、人の目がない生活は無理だし、貴族ではないらしいので後ろ盾もない。後宮に閉じ込めとけばまあ大丈夫だろうと。そもそも王妃の子に継承権はないしなー。てか庶民なら側室にしとけよと。
やらかしすぎだがな!
「そしたらわたしなんてしっととかのたいしょーじゃないの? じぶんのこのよめとかいみふめー」
「だから人質なんだろ。お嬢がいれば旦那を呼べるし」
「おそまつなさくせんねー。おとーさまがそんなのさせるわけないじゃん」
「王都消し飛ばなくてよかったな」
「マジそれなー」
意外と短気なんである、父。
マナさんは父似(8割くらい。内も外も)です。