20 春よ来い さん
暑い日が続きますが、熱中症にお気をつけて。
なんか久々にイッちゃったひときたなー。
どこにイッたって? お花畑くらいで止まってればいいね?
「こっちの話聞いてないのか聞く気ないのか、いくら説明しても理解してくれないんだよねー」
「言葉は通じるけど話は通じないってか」
「イエス」
「めんどー」
「それなー」
これでもかと着飾ったドレス姿は、けれど不愉快ではない。センス良いのに中身があれじゃぁなぁ。
「貴族令嬢としては普通なの、あれ?」
「うちに普通の貴族令嬢いないからわかんなーい」
「それなー」
涼あとで教育的指導な。
「てか、どやって来たん」
「馬車。お付きの人がオタオタしてる」
「止めなよ、自分とこのお嬢さんじゃん」
「それなー」
お年頃のご令嬢なら、婚約者くらいいてもよさげだけどな? うちは王国から魔王領へ(土地ごと)移住したから、その辺どうなってるんだろ。
「とりあえず、どちらのご令嬢?」
「おとなりの男爵令嬢」
「あー、寄親の伯爵家と一緒に離脱したとこ」
「婚約が白紙になったとかで、新たな婚約者は魔王サマが決めてくれんだろとか思ったらしーよ。王命でしか結婚できねぇの、貴族って?」
「さあ?」
知らん。
「はじめまして、おねーさん?」
「あら、どなたかしら?」
あ、話通じる?
「マナです。おねーさんは?」
「わたくしはタリサ・タバサよ!」
どっちが名前だこれ?
「タリサおねーさんは、どうしてへんきょーはくりょうにきたの?」
「あら、だってこちらでわたくしの婚約者を紹介いただけるのでしょう?」
「うーん、ちょっとちがうかなー?」
「なぜですの!?」
落ち着け、どうどう。
今日のお見合い会の趣旨を説明。貴族向けじゃないんだよ、野郎共の戦いなんだよ。
「騎士の方は貴族ではないの?」
「きぞくのおにーさんもいなくはないけど、へんきょーはとかいみたいにおしゃれなひとはいないよ?」
それでもいいなら参加する?
「お嬢?」
「ひとり増えたら野郎共が喜ぶじゃん。まぁ、おねーさん次第だけど」
黙って考えてたおねーさんは、テンション下がれば普通の人だったし、貴族令嬢としてのマナーもちゃんとある。傭兵の嫁は薦められないけど、騎士の嫁としては家を守ってくれそうじゃん? 美人さんだし。
「小さなレディ」
「はい?」
「わたくしでよろしければ、参加させていただけますかしら?」
決意の目は本気と書いてマジだった。狩人ですかおねーさん肉食ですねそういうひと好きよ。
「もちろん、どうぞ」
「ありがとう」
そしておねーさんは騎士団副隊長のそこそこイケメン子爵家長男をゲットして去って行った。
将来うちの母さまになりそうな女傑の卵さんとお友達になった。あれ?
思い切りのいいお嬢さんは、将来辺境を守る騎士のシリを叩いてくれる、はず。




