14 親ガチャは当たり外れが激しいもの
遅くなりました。よろしくです。
「オレが言うのもなんだが、お嬢よ。もうちょい、こう、なんだ、うん。優しさをだな」
俺の感動を返せー! と叫びながら涼が走り去ると、ガルさんが呆れた目で私を見てきた。理不尽。
「じゅーぶん、やさしいでしょが。なかすつもりはないんだから、あれでいいの」
それより、ほら、行くよ。
認識阻害をかけた上で結界を張って、3人で馬車の近くに向かう。魔法って便利。
「わらわのための迎えはどこに!? 早うア!? ア!? ああもう! わが夫に会いたいと言うのに!!」
いや、夫は国王じゃね。そして、父は既婚者で嫁にゾッコンラブである。
てか、誰も王子のこと気にかけてないじゃん。なんで連れて来たんだ? 権力の嵩増しか?
一応警護対象じゃないの、王族なんだからさ。
さて、隙を作らないとなー、と王妃を眺めてたら、駄々っ子みたいに地団駄踏んだ。えー、これ大人のやること?
「わらわは陛下と婚姻などしたくなかったのに! 仕方なく婚姻して仕方なく子を産んだのに! あの方からの迎えを待っていたのに!」
……仕方なく、だと?
「ふっざけてんじゃねぇぞこのど阿呆がぁ!!」
怒りが言葉として溢れた。
「仕方なく、だと!? 親が! 母親が言っていいセリフじゃねぇだろが!! 産んだからには責任を持て! 自立するまで愛して叱って褒めて宥めて笑って一緒に泣け! 子のために死ぬな! 子のために生きろ! 子と共に生きて子がもういいと言うまで親だろが!! 自分の人生なんぞそれからだど阿呆が!!」
ドン!! と地面が揺れる前に、涼が王子を回収したのが見えた。うん、返す必要ないわ。うちで面倒見る、決めた。あんな親失格共に返す義理などない。
「キャアアア!?」
「ひぃっ!?」
年増王妃とお供の周りに魔力が走る。防御などさせない。一瞬でケリをつける。
「な、なにを、なんなのこれは!?」
「あーあ、お嬢ガチギレさせっから」
「我が娘はいいことを言う」
人ふたりが余裕で入れる鳥籠、中は拡張済である。ちなみによく見えるように透明な素材(しかし鉄より頑強)でできてる。
「われながらいいできー」
「拡張してやる必要があるのか、マナ?」
「え、だってかえりみちはながかろ?」
転移陣なんて使わせるわけないじゃん、そんな優しさは今使いきったわ。
ギャーギャー騒ぐ王妃は、見世物になりながら馬車でのんびり王都に帰るのさ。
「そのためにひとりのこしたんだしー」
言いながら、私だけ結界から出て姿を現す。視線にビクリと肩を揺らした騎士は、いや、馬車に乗らないしとかごにょるので、馬車を指さしてやった。
「……え?」
馬車のあったところに鳥籠があった。正確には、馬車の上部分を取り払って鳥籠を乗せたんだけど。固定はガッチリ、お馬さんの負担を減らすために軽減の魔法もバッチリだ。
「あとは御者がいればもーまんたい」
パチパチパチとガルさんが拍手してる隣で、父は部下さんから報告を受けていた。
「マナ。国王から親書が届いたそうだ」
「しんしょ? ほんにんこなくてすむもんだいか? こないならむこうだね。どくりつでもなんでもどんとこいや」
「では、わが領地はこれより魔王領へ。魔王陛下に従う」
「え、いやそれはお待ち、を!?」
父の宣言に慌てる騎士。だけど本人を見つけることはできない。声はするけど姿は見えないのだ。結界があるからね!
王妃に姿を見せるなんてご褒美なんてやるものか。
「りーとーちゃーん!!」
「はーあーいー」
拡声魔法で叫んだ私の声に、すぐ隣から返事が返った。
ナゼに?
マナさんはキレると言葉が滑らかです。




