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第十二話 街道の探索

 街に到着してから一夜が明けた。

 日の出を知らせる鐘の音を聞きつつ、この世界における朝日を初めて拝んだ。しかし、元の世界とあまり大差ない。といった感想しか出てこなかった。

 ついでに昨晩は何の問題もなく過ごしたものの、その代わりとして風呂に入れなかったことが残念である。

 一応だが、マリンダさんから入らないのかと聞かれてはいた。

 しかしだ、誰かに中身を知られる可能性もあるから鎧を脱ぐわけにもいかず、というか脱ぐ脱がない以前の問題があって自動的に入浴という選択肢は消滅……。肉体がなければ風呂に入る意味は無いからな。

 と考えた結果、火傷跡がしみると言って丁重に断ったのである。

 

「はぁ……本当は風呂に入りたかったんだけどなぁ」


 異世界の風呂はどんな感じだろう。なんてことを考えながら、昨夜はせっせと鎧の汚れを拭き取っていたものだ。


「おはよう、カイト。さっき聞いたけど、昨晩の夕食といい今日の朝飯すら食べなかったそうじゃないか。大丈夫なのかい?」


「あー、心配かけさせてすまんな。まぁ、俺は大丈夫だ。体調が悪いんじゃなくて、昨日はだいぶグロテスクな物を見てしまったからな……とてもじゃないが、食べる気分じゃなかったんだ」


 当然、これも嘘である。鎧姿のままで何かを食べるのは違和感があるだろうし、食べる姿を見られて中身がバレたら厄介だからな。それに……今の俺は腹が減ることもなければ、味覚を感じられない。

 食欲を満たすことができず、味を楽しむことすらもできない。何かを食べて虚しい思いをするのなら、いっそのこと何も食べない方がマシだ。

 

(こんな身体じゃなけりゃ、食文化の違いも堪能してみたかったんだけどな)


 まぁ、マナが含まれているのなら話は変わってくるが……普通の食材に含まれているとは思えないし、そこまで現実は甘くないだろう。一応はダメもとで検証はするつもりではあるものの、期待はしていない。


「本当にそうなのかい?無理をしていないのなら、別にいいんだけど……何かあったらあたしに言うんだよ。分ったかい?」


「分かっているよ。にしてもマリンダさんって……優しいな」


「なっ、急に何を言い出すんだい。あんた少しおかしいよ?」


 さも当たり前のように、俺のことを気遣ってくれるマリンダの優しさが心にしみるぜ。

 今にして思えば神様のせいで散々な目に遭っている。この世界で初めて出会ったゴブリンたちには殺されそうになったし、その次に会話した銀髪の魔族とは最初から敵対しなきゃいけなかったし、その次に会話したゴブリンからは化け物扱いされて、挙句の果てには守衛であるディル爺さんから槍の穂先を向けられながら怯えられた。

 後はジャックさんとルジェスさんだけど、正直俺のことをどう思っているのか分からない。が、内心で疑っているかもしれないから油断は禁物だ。

 そんな中で普通に接してくれるだけでなく、疑う素振りを見せず俺に対して気を遣うマリンダさんは非常に稀有なケースである。本当にありがたい存在で、こんなストレスマッハな現状では唯一の癒し枠と言ってもいい。


(ということは……俺の精神の為にも絶対に死なせるわけにはいかないな)


「変なことを言い出すかと思ったら、今度は黙り込んでどうしたんだい?」


「泊めてくれた恩を返す為にも、必ずマリンダさんのことは守るからな。だから安心して俺を頼ってくれ」


「は、はぁっ!?あんた、本当に大丈夫なのかい?というか、あたしを口説くつもり?」


「何で俺が口説くんだ?」


 はて……もしかしなくとも、俺はヒロインに言いそうなことを口走ってしまったのか?

 俺にそのつもりはなくとも、マリンダさんの解釈次第ではそう感じるかもしれないが、基準がよく分からないものだ。

 ま、女性相手にどんな恋愛フラグが建ったとしても、絶対に恋仲に発展するわけがないんだけどね。こんな鎧の身体じゃどうしようもないし、そもそも住む世界が物理的に違う。

 しかも最終的には元の世界に帰るわけだから、必要以上に仲良くするわけにもいかない。


「あ、あんたねぇ……」


 と、マリンダさんが何を言いかけたところでジャックさんが現れた。


「おはようございます。マリンダお嬢様とカイト様。ところで先ほど耳にしたのですが、誰が誰を口説くのでしょうか?詳しく聞かせてもらえると助かります」


「ジャックさん、おはようございます。口説く云々はマリンダさんが勘違いしただけなんで、お気になさらず」


「はぁ……そういうことにしておくよ。ジャック、気にしなくていいから」


「承知いたしました。では、準備はよろしいのですか?」


「特に準備することはないんで、問題なし」


「こっちは準備万端だよ。何時でも行ける」


 そう言うマリンダさんの格好は身動きしやすそうなレザーアーマーとバックパックを装備して、短剣と円形の盾を腰に下げていた。

 いかにも異世界の冒険者って感じがしていて、しかも様になっている。

 ところで……ジャックさんも似たような出で立ちだが、どことなく装備が古いというか、使い込まれているような感じだ。昔使っていたのだろうか?


「ところでカイト様……よもや素手で行かれるので?」


「まぁうん。剣とか使ったことないし、昨日は素手でどうにかなったから……」


 実際にはテキトーに振り回して二人に当ててしまうのが怖いに加えて、銀髪の魔族が出てきたら何の役にも立たないからだ。

 瞬く間に使い物にならなくなる未来が目に見える。


「左様ですか……ご所望とあらば剣をお貸し致しますが、いかがでしょうか?」


「別に大丈夫です。拳の方がやりやすいから」


「カイト様がそうおっしゃられるのでしたら、私も無理強いはしませんが……無茶をなさらぬようお気をつけてください」


 無茶をするつもりはないんだけどな。まぁ、実際に見てもらった方が納得するだろう。後はその機会があればいいけど、今日は昨日逃がしたゴブリンたちはいるのかな?

 いや、昨日のゴブリンたちだったら少し嫌だな。出会い頭に化け物呼ばわりされるかもしれん。それなら、問答無用で俺を攻撃してくるような奴がいい。その方が精神的にダメージを受けることはない筈だ。


「ふーん、ゴブリンだからって甘く見てるんじゃないよね?」


「おいおい、俺は実際に素手で切り抜けたんだぜ。後れを取るわけないだろ」


「慢心しておりませんか?多少慣れたといえども、カイト様はまだ駆け出しです。そのことをお忘れなく」


「分かってるよ。気をつけておく」


 納得はできないが、今は納得するしかない。もとより、駆け出しという設定は自分で蒔いた種だ。設定には忠実に従うべきだろう。

 でもなぁ、油断しようがしまいがゴブリンは俺の敵ではない。そこまで身構える必要が無いんだよね。


「最後に差し出がましいかもしれませんが、これだけは言わせていただきます。カイト様のミスによって、私とマリンダお嬢様に被害が及ぶ可能性があることをどうか留意してくださいませ」


「そ、そうか……ジャックさんの言う通りだな。肝に銘じておくよ」


 集団行動においては一人のミスが全体に響く。故に、俺のミスが原因でマリンダさんとジャックさんを窮地に追いやってしまうかもしれない。

 それを考えると、安易な行動は控えておくべきだな。ま、ジャックさんが指示を出してくれるのならそれに従えばいい。

 後はいざという時に備えて……


「じゃあ、俺の方からも言わせてもらおう。万が一のときは俺を見捨てても構わんから、迷わず逃げてくれ」


「よろしいのですか?」


「銀髪の魔族さえ出てこなければどうにかなる。だから俺のことは気にしなくていい」


「そうおっしゃるのでしたら、迷わずカイト様の言う通りにさせていただきます。私も命が惜しいことですし、マリンダお嬢様もそれでよろしいですね?」


「カイトがそう言うのなら構わないけど……だからといって無駄死にはするんじゃないよ。必ず生きて帰って来るんだよ」


「言われるまでもないぜ。でも心配してくれてありがとうな」


 よし、これで少しは気が楽になった。

 もしも昨日みたいに大量のゴブリンと相対してしまったら、マリンダさんとジャックさんでも数に押し負けてしまう可能性があったからな。

 そんな最悪なパターンを避けるためにも、二人にはさっさと逃げてもらうべきだ。で、その時は俺が殿を務めたらいい。


「それでは参りましょうか」


 とジャックさんが言いながら歩き出し、俺とマリンダさんはその後ろに続く。


 そしてそれから数十分後、街の外にて何故か俺は馬の上にいた。


「まさか馬に乗るとは……」


「突然で申し訳ございません。私も最初は森の中を探索しようと考えていたのですが、討伐隊がゴブリンの襲撃を受けて壊滅したのなら、この街道の途中に痕跡が残っている筈です。ですからあてもなく森の中を探すより、手がかりがある可能性の高い街道を探るのが堅実と思いまして」


「確かに納得だね。それに街道なら馬に乗って動けるから、いざ逃げるって時は安心だよ。ま、あたしとしてはカイトが馬に乗れないのが驚きだったね」


「生憎、馬と触れる機会に恵まれなかったからな……」


「ふふっ、それでも馬に避けられるのは珍しいよ。振り落とされないように、あたしの腰をしっかりと掴んでおくんだよ」


「お、おう……」


 そう、よりにもよってマリンダさんの後ろに乗せてもらっているのだ。

 元から馬に触れたことすらもないが、不思議なことにほとんどの馬が俺を避けたのである。具体的な原因は判明せず、俺を乗せたくないことしか分からなかった。

 頼ってくれと言った矢先にこれだから情けない。誰かと一緒なら馬も落ち着いて乗せてくれるみたいで、俺としてはジャックさんの後に乗せてもらいたかったのだが……


「私は荷物を守る役目がございますので、馬に乗れないカイト様はマリンダ様のお守りをお願い致します」


 と言われたせいで反論する余地もなく、渋々従うしかなかった。

 本当は気恥ずかしくて勘弁してほしいところだが、元はと言えば馬に乗れない俺が悪いのだから仕方ない。ただ、ジャックさんにとっては好都合だったかもしれない。

 俺が一緒に乗ることでマリンダさんを一人にすることはないだろうし、ゴブリンに襲われた際は文字通り俺が盾になって守ってやれる。

 そうでもなければ、どこぞの馬の骨とも分からない男が年頃の女性であるマリンダさんに密着することを許す筈がない。つまり、危険が迫れば身体を張ってでも守れと言いたいのだろう。

 実際にジャックさんの眼は笑っていなかったしな……責任重大である。


「いやはや、まさかカイト様が馬に乗れないのは想定外でしたが、よく傭兵になろうと思いましたね」


「まぁ、金を稼ぎたかったので……」


「でしたら、国の兵隊に志願すれば比較的に安定するのでは?」


「い、いやぁ……そっちだと規律が厳しそうだから……」


 ちょっと待ってほしい。だいぶ追及が厳しい気がするんだが……まさかジャックさんは俺を怪しんでいる?

 これまでの間にボロを出した覚えはないのに、馬に乗れないことが傭兵として致命的ということだろうか?

 気になるからマリンダさんに話を聞いてみよう。


「なぁ、傭兵って乗馬技術が必須なのか?」


「そうだねぇ。あたしが聞いた限りだと必須じゃないね。だけど、傭兵に関係なく長距離の移動だと馬は重宝されているよ。そういった意味では、馬に乗れる方がいいとは思うね。歩くよりも速くて荷物持ちにもなるし」

 

「あー、それは便利そうだな」


 言われてみれば、ここは異世界だから馬が基本的な移動手段として利用されるのは不思議でもないか。

 で、そんな馬に乗れない俺の移動手段はほぼ徒歩になってしまう。疲れることのない鎧の身体だから良かったものの、生身だと絶望的である。

 認めたくはないが、この鎧の身体なら馬が必要ないのは一つの利点とも言える。だとしても、その利点と引き換えに失ったモノを考えると手放しに喜べそうにない。


「どうしたんだい?急に黙り込んだけど、やっぱり具合が?」


「何でもない。少し考え事をしていてな……」


「考え事って、馬に乗る練習のことかい?それならあたしが付き合ってあげるよ」


「本当に優しいな……」


 マリンダさんなら本当のことを話しても受け入れてくれそうな気がしてきた。

 しかし、念には念を入れよという言葉がある。神様の言っていたこともあるし、話すべきではない。

 ただ、別れ際なら打ち明けてもいいかもしれん。


「間もなく森に入ります。カイト様は周囲の警戒を怠らないようにしてください」


 先頭を進むジャックさんに言われて周囲を確認するが、今のところは特に怪しい影は見当たらない。

 まぁ、森の中を進んでからが本番だろう。ゴブリンたちの警戒網がどうなっているのか分からないが、連中のことだから王都に続く街道は範囲内に入っている筈だ。

 故にいつどこから襲われたとしても、即座に対処できるように心構えはしておこう。


「ねぇ、カイト。あんたってこの森でよく迷わず街に来れたもんだね。本当に運が良いと思うよ」


 森の中に入ると、マリンダさんがそう言ってきた。


「うん?それはどうしてだ?」


「どうしてって……あんたは知らないのかい?この森の広大さを」


「す、すまん。超のつくド田舎の村から来たからこの辺りの地理には詳しくないんだ」


 我ながら苦しい言い訳だが、果たして通じるかどうか……とりあえず怪しまれなければそれでいい。

 あわよくば、この森について教えてもらえると御の字である。


「カイト……あんたはどんな辺境の村から来たんだい……。言っておくけど、この国の中で一番広い森なんだよ」


 やはりというか、呆れられてしまったようだ。それでも怪しまれるよりかは遥かにマシだけどな。

 上手く無知を装えているみたいだ。せっかくだし、ついでにもう少し詳しく聞かせてもらう。


「へぇ、具体的にはどれくらいの広さなんだ?」


「それに関してはあたしも正確に知らないね。少なくとも、エルフが住まう『エルフの大森林』よりは狭いだろうけど」


「エルフか……」


 魔人が存在するならエルフも存在しても不思議ではないと思っていたが、本当に存在するとはな。ということは、獣人や竜人も存在してそうだな。

 いつか出会えたりするのかな。ま、会えたとしても上手くコミュニケーションが取れるか自信がないけどね。

 ただ、それでも会ってみたいとは思う。ゲームでは見たことがあっても、実物は見たことがないからな。

 そう考えていた時である。


「カイト様、マリンダお嬢様。止まってください」


「遂にゴブリンのお出ましかい?」


「かも知れません」


 周辺からは特に物音はしなかった。ジャックさんは気配でも感じ取ったのだろうか?

 ただの執事ではないと思ってはいたが、こういったことに慣れているとは思わなかったな。異世界の執事はこのくらいは当たり前なのか?

 もしそうだとしたら執事という職は随分とハードルが高そうである。俺には無理だ。


「ジャック、ゴブリンの数はどれくらいなんだい?」


「複数いることは確かです。ですが、前方からしか気配は感じません」


「それは妙だね。森の中はゴブリンたちのテリトリーなんだろ?なら、左右から挟撃を狙ってくると思っていたんだけど……カイトはどう思う?」


「何とも言えんな。連中は何がしたいんだろうな?」


 本当に分からん。銀髪の魔人がいるのなら、奇襲なんてまどろっこしい真似をせずに、正々堂々と戦いを挑んできても違和感はないが……それはそれで最悪のパターンだ。

 その時はマリンダさんとジャックさんには即座に逃げてもらわないといけない。そして俺は足止めするために勝負することになるんだろうけど、無事に生き残れるか怪しいところだな。


「分かりかねますな。それに私もゴブリンとは何度も対峙したことがあるのですが、敵意を感じないのは初めてですね。本当にゴブリンなのでしょうか?」


「敵意を感じない?」


 余計に訳が分からんな。まさか俺に気づいて恐れをなしたとか?

 ……いやいや、それは自惚れすぎだし、あり得ん話だろ。もっとちゃんとした理由がある筈だ。

 だが、その理由が分かりそうにもない。そうだな……ここは俺一人で先行して確かめてみるとしよう。


「ジャックさん、俺が確認してくる。マリンダさんとここで待っていてくれ」


「承知致しました。カイト様も危険だと判断したらすぐに逃げてください」


「カイト、無茶はするんじゃないよ」


「分かってるって。じゃ、行ってくる」


 やや不安げな視線を受け止めつつ、俺は馬から降りて先を進んだ。

 しかし、どこに隠れ潜んでいるんだろうな。俺が素人ということもあるんだろうけど、ジャックさんはよく気づいたな。

 そう思いつつ暫く歩みを進めると、唐突に左右の木陰から何かが数体ほど現れた。もちろん、一目でわかった。俺たちが警戒していたゴブリンである。

 そして、そいつらは目の前に立ち塞がり俺にこう言ってきた。


「鎧の化け物よ……何をしにここまで来たのだ」


「まーた化け物呼ばわりかよ。どうせ昨日の連中から話を聞いたんだろ」


 良くも悪くも、俺に恐れをなしているらしい。

 油断なく武器を構えていても手足が僅かに震えているし、俺に向けている視線に至っては恐怖の感情が混じっている。これから俺に対して怯えているという明らかな証拠になるだろう。あまり嬉しくないけど。

 まぁ、マリンダさんとジャックさんに危害を加えないのならそれでいい。むしろ助かる。

 さてはて、どうしたものかね?


「もう一度聞く、鎧の化け物よ。何が目的でここに来た?」


「答えてやってもいいが、そういうお前たちこそ何がしたい?」


「……返答次第とだけ言っておく」


「そうか」


 うーん、後にいる二人と相談するべきか悩ましいが、それをしたらコイツ等にあらぬ誤解をされるかもしれんな。

 だが、正直に答えてもいいのだろうか。いや待て、冷静に考えたら銀髪の魔人はここにいないな。

 てことは、俺がコイツ等にとって気に食わない返答をして襲い掛かられたとしても、この場で簡単に返り討ちにできるし、後の二人には被害が及ぶ可能性は低いとみてもいい。

 それなら正直に答えてもいいか。


「街に向かっていた討伐隊について調べているところだ。ま、お前らが潰したって言うし、それが本当かどうかの確認だけどな」


「なるほど……我々の血を集めるのが目的ではないのだな?」


「誰がそんなことするかよ。あんなマズい代物は二度と口にしたくないぜ」


 あぁ、道理で怯えていたわけだ。

 納得であるが、昨日の逃がしたゴブリンたちはどんな風に俺のことを仲間に説明したんだろうな。少し気になるところである。


「鎧の化け物よ……本当に確認するだけというのなら、我々の後についてくるがいい。その眼でしかと確かめるがよい」


 ほほう、俺の目的が血じゃないことを知ってか俺に対する恐怖も薄くなっているな。だから意外な申し出までしてきたのか。

 ただ、どこまで信用していいのか分からないな。ここにいるのは俺だけじゃないし、迂闊な真似はできない。

 そうだな……軽く脅かしてみよう。


「おいおい、いいのかよ。俺が後から襲い掛かることを考慮しないのか?」


「ふん、その気になればこの場で我々を殴り殺すことができるくせに、よく言えたものだな。それと念のために言っておく、そちらから手を出さない限り我々も手を出さないと約束しよう」


「本当なんだな?後の二人にも手を出さないんだな?」


「当然に決まっている。それに後の二人も街から来たのだろう?渡したい物がある。できれば付いて来てもらいたい」


 ゴブリンが渡したい物だと?……想像がつくないな。

 うーん、さすがにこれ以上は俺の独断で決めるわけにもいかないし、ジャックさんの判断を仰ぐべきだ。


「じゃあ、少し待っていてくれ。話をしてくる」

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