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第七話 身辺整理

 重々しく、張りつめる空気。

 向かい合う二人から滲み出る瘴気めいた魔力の本流に、森林一帯がぞよめきたつ。

 業火に染まる家屋が湿った土壌を明るく照らし、空を覆う黒い雲は雷鳴を轟かせて二人を歓迎した。

 唇を指でなぞり、無表情を作るカグヤ。

 華々しく美しい白銀の鎧をより一層引き立てる、艶めいた伽羅色の髪をもつ青年の男。

 右手に握る薄くて長い片手剣は、見た目からは判別出来ない質量と魔力を含んでいた。

 その違和感は、踏み締める大地から感じる。

 両足から魔力を吸い上げている。


 なるほど。

 だとしたら魔導騎士でも、とりわけ厄介な魔剣使いというわけだ。

 魔剣使いは文字通り、魔術原理を施された剣を使用する騎士、または剣士のこと。

 魔剣とは名工ですら簡単に手を出せない危険な代物であり、それを得物として振るっていた中級剣士は、時に、聖級剣士すら討ち果たしたとまで言われている。

 付与されている能力は多岐に渡るが、どれをとっても担い手の個性を伸ばす一点特化型。

 メリットに対してデメリットが一切無いのが売りだ。

 

 故に、脆弱な騎士や剣士がこぞって欲しがる。

 何の努力をせずとも、短期間で誰でも強くなれるのだから。

 実にくだらん玩具だ。

 見れば見るほど滑稽だな。


 などと考えていたら、男と目が合った。

 静観を決め込む俺に気が付いたようだ。

 男は鋭い眼光で口を開いた。


「子連れの魔術王とは、比喩では無かったか…」


 ボソリと呟かれた。

 子連れの魔術王?

 ああ…そのように広まったのだな。

 騒ぎを起こした後悔が今になって来た。


「如何にも。俺が魔術王アビル・スターマインだ」


「だろうな。容姿と得物、そして、その忌々しい瞳が何よりの証拠。本来であれば手合わせを願いたいところだが、今は時間が無い。そこを退け魔術王」


「初対面に随分な挨拶だ。してなんだ。そこを退けだと? 凡兵風情が、誰に物を言っている」


「……もとより、話が通じるとは思っていない」


 臨戦態勢に入った。

 すると、カグヤが背中をつんつんと突いてきた。


「ねぇアビル。この人誰?」


 指し示すのは白銀の鎧を着た男。

 なんと。面識が無いとは思わなかった。

 恩讐の塊のように見えるが…。

 

「貴様ァ! 弟を殺しておいてよくもッ!」


 男は激高し、カグヤに斬り掛かる。

 弟か。

 カグヤの昔話に出てきた兵士が関係するのかもしれない。


「ちょっと待ってよ! ほんとに誰だか知らないんだってば!」


「おれはコレクトだ! 知っているだろう!? お前が殺したルインの兄だ!」


「あ……ん?」


「貴様ァアアア!」


 ともかく、一匹の狼が走り出した。

 流麗な剣戟を見せる魔導騎士コレクト。

 両刃の特性を生かした隙の無い剣だ。

 木々を飛び回りながら縦横無尽に斬り裂く剣技と、あらゆる角度から繰り出される光線の雨。

 並の剣士では視認すら出来ないだろう。


 しかし、それらを全て迎撃し、反撃に転じるカグヤ。

 鈍器で殴るように低い金属音が鳴り響く。

 ここで完全なる攻守交替。

 コレクトが体勢を崩した。


「な…!」


「わっかんないや。でも良かったね。もうすぐ弟さんに会えるよ」


 カグヤの暗い微笑みにゾッとした。

 剣はコレクトの脇腹を抜けた。


「ぐあああぁ!」


「あっはは! ほらー! もっと泣けー!」


 残酷な仕打ち。

 風圧を伴う、水っぽい音が絶え間無く続く。

 少しでも長い間苦しむように、両手両足の皮膚を削ぎ落としたのだ。


「ヒュー…ヒュー…」


 コレクトの息はたえだえだ。

 それでも尚、猛攻は止まらない。

 刀を持ち替えて、コレクトの脳天に突き刺そうとしたので止めた。

 

「どうして止めたの?」


 カグヤは無表情に戻った。

 俺は胸ぐらを掴まれて、木に叩きつけられた。


「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして?」


 拳が胸にめり込んでいく。

 メキと音がした。

 肋骨数箇所にヒビが入った。

 止めなければ良かったとは思わない。止めて正解だ。

 どうも胸騒ぎがする。


「落ち着け馬鹿者。殺す前に、洗いざらい吐かせようとか考えないのか。得意分野だろうが」


「多分、この人には通じないよ」


 確かに。効果は薄いだろうな。

 かと言って悠長に拷問する時間は無い。

 何故、伏兵が出てこないのかは分からないが、機を伺っているのは分かる。

 確実に主人を助けられるタイミングを。

 

 愚かな。

 こちらの戦力を侮るなかれ。

 それに俺の精神干渉魔術なら、頭の中を覗き見ることが出来る。

 事の詳細どころか、その人の過去まで見ることが出来る。

 決定だ。それでいこう。

 

 横槍が入らないように索敵の精度を上げた。

 木陰に潜む連隊と一人の魔術師が居た。

 そして、聳え立つ山の頂上から見下ろす存在。

 消すか。


「カグヤ。前方50名、後方20名、モルロス村方面40名、王国側15名。一匹残らず殲滅しろ。外道魔術師は俺が始末する」


「私の負担大きくない?」


「魔術王の三割を受け切った人間が何言ってる」

 

「魔術王……へー」


 カグヤは一瞬何かを思い浮かべて、視線を逸らして舌なめずり。

 金になると踏んだ顔だ。


「異変を感じたなら殺すな」


「へ? 普通、逆でしょ」


「恐らく、こいつらは操られている」


「!」


 分かってくれたようで安心した。

 そう、お前の父カミノを貶めた者がいるかもしれないんだ。

 そして、そいつが首魁だ。

 カグヤはゴクリと唾を飲み、突風の如く駆けて行った。

 彼女が十分に離れたのを確認して。

 

「この程度で死ぬタマか、貴様」


 俺はコレクトを蹴り飛ばした。

 壁に激突し、血反吐を吐きながらニタリと笑う彼は、既に動かないはずの右手を振り上げた。


 微かに、瞳の奥に眠る光が見えた。

 やはりそうか。

 これは死霊術士(ネクロマンサー)の干渉によるものだ。

 死人を傀儡に作り替え、己が意のままに自律させる悪列極まりない術式だ。

 俺はこれについてよく知らない。使おうと思った事が無いからだ。

 だが、術者を消せば元に戻るはず。

 先刻見せたカグヤへの無謀な特攻は、コレクトの意思によるものでは無い。

 相討ち覚悟を狙うのは剣士だ。

 主君を守るため、命を懸けて最後まで傍らに居続けるものが騎士である。

 それは忠義。誠を体現した者の歩む道。

 復讐心を持つのは悪いことでは無いが、道理から外れるには必ず訳がある。

 分析するまでも無い。


「ウォォォオオオオアァアア!」


 咆哮を上げるコレクトの剣を素手で受け止め、遥か後方へ投げ飛ばした。

 術者は何処か。

 知れている。

 不敬にも、山頂から俺達を見下ろす羽虫がいる。

 気配を隠さず行使するお粗末さに苛立ちすら覚えた。


「コレクトよ。少し待っていろ」


 俺は山頂めがけて飛んだ。

 山を削りながら一直線に。

 数秒掛からず到達し、フードを被る人物に至る。

 筋骨が伝える並々ならぬ歴戦の風体。それから漂う夥しい鉄の残り香。

 

「見つけたぞ…鼠ィ!」


 俺は右手を構えて、紅蓮の炎を放った。

 男の体躯を灼熱の大火で焼き尽くす。

 しかし、フードを焦がした程度でかき消された。

 一筋縄ではいかんか。


「加減するとは、甘いな魔術王」


 男は、おもむろに口を開いた。

 杖を持たない変わりに、五指に大小無数の指輪が嵌められていた。

 

「ハッ! 人の皮を被った死霊術士如きが、今の応酬で何を知れたと言うのだ。俺を招いた時点で貴様らの作戦は未遂に終わった。甘いのは貴様の方だ」


「それもまた一興。次に生かすとしよう」


「ククッ…馬鹿め! 貴様に明日は無い!」


 俺は天に右手を翳した。

 指輪に魔力を溜め、圧縮。

 余波は大地を揺らした。

 指先から放たれた超光が暗雲を晴らし、燦然たる太陽が王国を照らす。

 紋章が刻まれた魔法陣が現れ、更に明るくなった。


「なんだ…この魔力は!?」


 男は慌てて防御障壁を張った。

 逃亡は無意味だと、無い頭で良く考えた末の愚行。

 ここは、夢を志した俺が師と先生に出会い、灰色の人生が七色に塗り潰された思い出の地。

 姓を与えられた始まりの聖地でもある。

 故に、俺が一番最初に編み出した虹蜺級魔術には己の名前を冠した。

 あの日見せてくれた色を真似た、天から撃ち落とす星々の厄災である。


銀狼流醒爆撃ディセント・スターマイン!」


 腕を振り下ろすと同時に、上空から雨のように流星弾が降り注ぐ。


 ――ドガガガガッ! と、激しい音が断続的に鳴り響いた。


 岩山を砕くそれは、不可能な光の速度で降下し、足元を更地にしていく。

 棘や草木はちりじりに霧散し、辺りは砂煙に覆われた。

 瞬く間に、地上と同じ高さに堕ちた。


「ゴファ…!」


 地を這う血だらけの男。

 左腕と右足に欠損が見られる。

 辛うじて命を繋いでいる状態だ。


「お望み通り加減してやったぞ」


「ハァ…ハァ……おのれッ!」


 この期に及んで、殺意の目を向ける男。


「なにゆえカグヤを狙った。吐け」


 俺は男の首を締め上げ、壁に叩きつけた。


「金に…なるからだ」


「成程。頷ける理由ではあるが、小娘一人にそこまでの価値があるのとは思えん。本当は何が目的だ」


 男はククッと笑った。


「まさか知らずに匿っていたとは、おかしな話だ。我々に差し出さなかった事、いずれ後悔するぞ」


「…後ろに誰が居る」


「さあな。ま…教えて欲しいのなら手を離してくれ。命を賭けるほど、この仕事に熱意は無いのでな」


「なら雑兵を連れてさっさと出て行け」


「もう少し観光してからな」


 つまり、手を引く気は無いと。

 他国に雇われた人間であると暴露したようなものだ。

 俺は男の首を更に強く締め上げた。

 指をめり込ませ、返り血を浴びるほど強く。


「ぐふっ…! な…何を!」


「勘違いするなよ。貴様の生殺は俺が握っている。それに…」


 男の首骨を直に掴んだ。


「ここは俺が師より寵愛を賜った約束の聖域。そこに無断で立ち入った挙句、踏み荒らすなど…貴様らの蛮行は目に余る。不愉快だ。消え失せろ!」


 俺は、常人には耐えられない魔力を男に流し込み、爆散させた。

 跡形もなくなり、撒き散らされた血痕だけが残る。

 我慢の限界だった。

 わざとカグヤを挑発して罪を握らせ、主君勅命の元、連れ去ろうとした者がいたからだ。

 許せるはずが無いだろう。

 それに俺の故郷だ。守るべき、愛すべき土地だ。


 権力者達から狙われている無法地帯とはいえ、カランド領の平和は昔から変わらない。

 先住民は皆、口を揃えて幸せを謳う。

 奇しくもそこに一人の少女が舞い降りた。

 その少女は何の罪もない人間で、父が罪を犯してしてしまっただけの潔白少女。

 逃げ続けた先に、彼女は安息の地を見つけたのだ。

 しかし、彼女は理不尽の天秤に載せられ、不幸へ一気に傾けられた。

 抗い続ける日々に、罪を重ね続けることを強要された。

 カグヤが受けた仕打ちだ。


 秩序がある今、こうも大胆に命令を下せる人物など大方予想がつく。

 現国を治める国王の側近だろう。

 黒い噂の正体はアルファルドから聞いている。

 手を汚すのは俺だけでいい。

 頼むから皆殺しは勘弁してくれよ。


---


 俺はカグヤの元へ走った。

 上空から見渡さずとも、現在地はハッキリと分かる。

 森林の奥から伸びる黒手が、木々をなぎ倒しているからだ。

 魔王か何かだろうか。

 悲鳴を上げて逃げ惑う兵士達を、笑いながら殴っている少女が居た。

 カグヤ発見。

 

「よし、ちゃんと言いつけを守っているな」


 死人は居ない。

 横たわる者は皆、気絶している。

 カグヤは刀の峰を使い、兵士達の頭を殴っていた。

 脳を直接揺らして戦闘不能にしているようだ。

 良く考えたな。

 

 彼女に声を掛けようとした刹那、白い光が頭を掠めた。


「グッ…! ムガァー! イライラするー!」


 カグヤの肩に光が当たった。

 後方支援がいるのか。

 取りこぼしの魔術師が潜んでいたらしい。


「カグヤ。あの魔術師は殺していいぞ」


 カグヤの顔がパァと明るくなる。


「いいの!? やったー!」


「ついでだ。お前の身体能力を強化してやる」


 カグヤをギュッと抱き締めて、負傷箇所を治癒。

 肉体強化魔術を全身に付与した。

 

「ふっふっふ…これはいい」


 悪い笑みだ。

 やはり魔王では無かろうか。


「首魁は殺した。あとはカミノを操っていた奴だ」


「それがあの魔術師って事だね」


「そうだ。一瞬でカタをつけるぞ」


 カグヤを背中に乗せて、飛んで来た光を躱して辿る。

 追い掛けてくる兵士は蹴り飛ばした。

 伏兵はカグヤが斬った。

 あっという間に目的地に着いた。

 後退りする黒髪の魔術師の元へ、カグヤを放り投げた。


「砕け、俺の戦乙女(ワルキューレ)


 気づけば。

 魔術師の胴は別れていた。

 あまりの斬れ味に返り血は無かった。

 諸悪の根源をついに裁けた。

 これで一件落着となればいいが、後始末が残っている。

 死霊術者と魔術師の遺体を埋め、傀儡となった兵士達を元に戻さなければならない。

 大規模魔術を行使したので証拠隠滅は出来ない。

 せめて言い訳は考えておう。

 外交問題になるのは避けたいところだ。


「何が俺のワルキューレだ! いつ私がアビルの物になった!」


 ポカポカとカグヤに叩かれた。

 子供らしく頬を膨らませている。


「未来の話だ。それより、コレクトについて本当に何も知らないのか?」


「あー、あれは私が殺した悪い人のお兄さんだよ。まさか…こんな形で出会うなんてね」


「やはりそうか。だが、奴もまた迷える子羊なのは明白。殺すなよ」


「……はーい」


 カグヤは不満げに返事をした。

 死霊術者と魔術師を埋めてから、コレクトの待つ場所へ向かった。

 

 道中。

 会話は一切無く、何度も背後から殺気を浴びせられた。

 それは、地面に転がるコレクトを見つけてからも続いた。

 命令されたのが余程気に入らないらしい。

 治癒魔術でコレクトの体を復元し、腹に衝撃を与えて起こす。


「ぐほっ! い…いきなり何をする!」


「起きろ軟弱者。事の顛末は貴様にこそある」


「それは……あっ」


 突如、身を震わせたコレクト。

 視線の先には刀を抜いたカグヤが居た。

 満面の笑みを浮かべながら歩を進める彼女に、言い知れぬ不安が頭をよぎる。

 待て待て待て。


「カグヤよ。憎しみの連鎖は何処かで断ち切らねばならん。が、手段は選ぶべきだ」


「選んだよ。そして、これが答え」


「カミノと同じになりたいのか」


「……」


 カグヤはだんまりを決め込んだ。

 納得出来ないのだろう。

 父親を殺めた一党の仲間なのだから当然だ。


「殺せ」


 観念したようにコレクトが言った。

 項垂れて首を差し出している。


「潔くて結構。しかし貴様はそれでいいのか?」


「…弟の尻拭いは兄がするものだ」


「年端もいかぬ村娘を消そうとした人間がよく言う」


「いいや…本当は謝りたかった。弟が加担した事件は、到底許されるものでは無いからな。元々そういう奴だったんだよ。卑屈な考えを持ち、乱れた感性を他者にぶつけ、道徳を欠いた身勝手をする死んで当然の人間。救いようの無いクズだろう。それでも、おれは弟を愛していた。兄だからな」

 

「騎士道に反する狂言だぞ、それは」


「だから一人の人間として謝罪しに来た。でもそれは、遂に叶わなかった。彼女と視線を合わせた時、憎しみが視界を覆って怖くなった…」


「だから身体が勝手に動いたとでも言いたいのか」


「…そうだ。狂戦士として振るう剣は重く脆く、辛くて痛かった。彼女が長年感じてきた痛みに、ようやく追い付いたんだ」


 そう言って。

 コレクトは折れた剣を見せてきた。

 難しい表情ながらも、何処か嬉しそうな顔で散らばる破片を手に取った。


「これはな…弟の遺品なんだ」


「私見だが決して業物では無いと断言出来る」


「業物など、このおれが持てるわけ無いだろう。持つべきは…そこにいる戦乙女のみ」


 背後に立つ黒い影。

 今まさに。

 コレクトの首に刃を通らせようとするカグヤが居た。

 血が出るほど強く、痛々しく唇を噛み締めていた。

 手は酷く震えていた。

 頬を、透き通る流水が伝っていた。


「貴方も同じ…なの?」


 カグヤは震える声で言う。


「ずっと謝りたかった。君の父を、もう二度と会えなくしてしまった事を。本当にすまなかった…」


 正座し、両手を前に置き、血に頭をつけて。

 コレクトが見せた一連の動作には、後悔が滲み出ていた。

 凶行を止められなかった後悔だ。

 これでもかと言うほど長い時間、ずっと頭を下げ続けた。


 カグヤはしばらく黙って見ていた。

 涙を拭い、考えていた。

 肉体を縛り付けていた強ばりが、ゆっくりと引いて。

 やがて刀を鞘に収めた。


「私も…ごめんなさい」


 カグヤはそっぽを向きながら言った。

 複雑な心境を悟られたくないんだ。

 コレクトが頭を上げる頃には、元に戻った。

 片膝を着いて手を差し出すコレクトに、戸惑うカグヤ。

 俺は二人の手を繋げた。


「君のお母さんは、まだ生きている。行き先は分からない。だけど…」


 一呼吸を置いて、コレクトが続けた。

 決意を秘めた顔で。


「必ず見つけ出します。メイルイ王国近衛騎士団副団長コレクト・アルネシアの名にかけて誓いましょう!」


 白銀の騎士は吠えた。

 コレクトはカグヤの手を取り、優しく口付けをした。

 慣れた手つきかつ精錬された動きに思わず目を奪われた。

 これは騎士の挨拶では無く、忠義の証である。

 実に天晴れ。

 やっぱコイツ消し――、


 「ふわぁああああ!」


 ガクガクと振動して、暴れるカグヤ。

 羞恥心全開だ。


「感情が希薄だと聞いていたが、あの情報はデマか」


「フンッ…天真爛漫、無邪気無謀の合成獣(キメラ)にしか見えんがな」


「ん? ああ違う違う。お前に言ったんだよ魔術王」


「あ?」


「おれが彼女に触れた途端、目の色が変わった。殺気がダダ漏れだ」


「ッ…!」


 抑えろ自分。

 安い挑発に乗るんじゃない。

 

「さて、事後処理が多い訳だが魔術王。どうしてくれる」


「チッ……一党は全て完治させてやるから、統治はお前がしろ。あとアビルでいい。外見年齢はさほど変わらん」


「そうか、ではアビル殿。頼みましたよ」


「舐めやがって…」


 長年のわかだまりが溶けて浮かれているようだ。

 いつかお灸を据えてやる。

 でもまあ…カグヤの嘘偽りの無い笑顔が見れて満足だ。

 野鳥捕まえ始めたもんな。何やってんだあいつ。

 コレクトは少しでも距離を縮めようと、彼女の横で補佐している。

 お前も何してる、手伝え。

 

 ため息しか出ないが、一先ず解決だろう。

 あとは御礼参りだ。

 裏で糸を引いていた者の面を拝んでおく。

 メイルイ王国宰相。

 奴がミコを攫ったんだ。

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