しがない美術教師の毎日。
キーンコーンカーンコーン
ああ、またチャイムが鳴った。
50分ごとになる小気味よい音を、これまで何回聞いてきたのだろうか。
私は美術準備室でぬるくなったジャスミン茶を飲み干した。
ザワザワと教室を移動して来る声が聞こえる。
「失礼しまーす!」
「誰もいねーじゃん!」
えーと、次のクラスは、あ〜1の3か。
ということはこの声は優等生の山田壱成とお調子者の市沢勇気か。
「はーい。ここにいるよー。」
美術準備室の奥から返事をする私の声にうお、びびった!と市沢が無駄に叫ぶ。
「先生、作品配りますか?」
田中が聞いてくる。田中は毎回一番最初に移動してくる。そして、作品を配る。
田中はたぶんこの役割にある種の生きがいを感じている。
市沢は手持ち無沙汰になったのか、田中に頭が上がらないのか、田中から手渡された作品をブチブチ言いながら配る。
そうこうしてるうちに、1の3の生徒たちがやってきた。カラカラした笑い声を携えながら、美術室に入ってくる。
さて、授業を始めよう。
私は都内の公立中学校で美術教師をしている。ちょうど最近開拓されたようなニュータウンが多く学区に存在して、育ちの良い