7 パーティ結成
ブックマークして下さった方、評価して下さった方、ありがとう御座います。
ザックさんと俺が冒険者ゲートからメインロビーに戻って来ると、インフォメーションデスクの陽炎が話しかけてきた。
「あら、シルバーもうお帰りかい? そっちのモンスターより邪悪そうな人は貴方のお友達?」
ザックさんは陽炎さんの方を振り返って言った。
「ザックだ。」
「ザックね。覚えておくわ。そうそう シルバー、ラウルの森の遺跡に大型の魔物が出て討伐要請が出ているわよ。」
「へー それは面白そうですね。」
俺は仕事が休みの週末にでも行ってみようかなと思った。
「そこへは冒険者ゲートから行けますか?」
「ラウルの森まではいけるけど、ゲートから遺跡までは歩いて2時間くらいだったと思うわ。あっ、でも行くんだったらパーティを組まないと討伐許可がおりないわよ。」
1人では倒せないレベルって事か。
「そうなんですね。情報ありがとうございます。」
ゴードンさんも手を上げて挨拶してくれる。
「ゴードンさん、また来ます。」
と俺も手を上げた。
俺達は冒険者ギルドの隣りに有るラーメン屋に来た。
赤いのれんをくぐると、
「いらっしぇい!」
ラーメン屋のおっさんの野太い声が店に響く。
そこにはカウンターでラーメンと餃子を食べている派手な着物姿のブライアンさんがいた。今日は目の覚めるような青が印象的な波と富士の浮世絵の着物だ。
「あれブライアンも今飯?」
そう言ってザックさんはブライアンさんの隣りに座る。
うわー、小汚いラーメン屋に超ド派手な2人の対比が凄い。
(シルバー(健司)はそう思ったが、彼もまたシルバーヘアーに騎士姿で、決して自分が考える程 地味では無かった。っというより派手だった。)
「こんにちはブライアンさん。」
俺も挨拶をするとブライアンさんは、ラーメンのスープを飲み干して どんぶりをカウンターに置いてた。
「ふぅ〜美味かった! お主達もフィールド行ってたんでしょ、お疲れ様。」
「ああ、シルバーとフィールドへ行って来た。えーと、僕はコッテリとんこつ ニンニク入りと餃子。」
「じゃあ 俺は醤油ラーメンと餃子でお願いします。」
「へい。コットンニンニク、醤油麺、2餃子」
ザックさんがブライアンの方を向いて話し出す。
「さっき、冒険者ギルドにいた女がラウルの森の遺跡で大型の魔物が出没したと言っていたがブライアンは知ってるか?」
「いや 知らない。でも面白そうだ。」
「だろ。パーティでの討伐になるんだが俺達3人で明日行ってみないか?」
「ああ 良いよ。 じゃあ今夜、私の屋敷で飯でも食いながら話そう。6時でどう?」
「6時で大丈夫だ。」
「俺も大丈夫です。」
「ゲートの招待状を送っとく。じゃあ私はフィールドに戻ってレベリングがんばるよ。オヤジさんご馳走様。」
そう言ってブライアンさんはフィールドへ戻って行った。
俺は冷たい水を一口飲みながら周りを見渡した。
昭和風のレトロな佇まい。ポスターや時計。俺が手に持っている この小さなグラスに至るまで、この店は俺がおもい浮かべるラーメン屋のイメージにぴったりだ。
◆ ◆ ◆
ラーメン屋を出た後、俺達は別々にそれぞれの屋敷へ戻った。
俺は今夜も外食なので、セバスチャンさんにお願いして、シェフの大谷さんに、大谷さんの食事が食べれなくて、申し訳なく思っている旨を伝えてもらう事にした。
今日の仕事の報告を近藤さんに送った後に、書斎でラウルの森の遺跡について調べているとセバスチャンさんがやってきて、
「大谷さんからです。」と手提げを渡してくれた。
「本日行かれるブライアン様は大の日本好きと聞いておりますので、大谷さんより《ひれ酒用のセット》をお持ち下さい。と預かりました。」
「ありがとうセバスチャンさん、どうか大谷さんにも宜しく伝えて下さい。」
良い人達に恵まれて俺は本当に幸せだと思った。
時間になり俺は大谷さんが用意してくれた手土産を持ってブライアンさんの屋敷のゲートに到着する。
するとセバスチャンさんの親戚のような老紳士が、
「いらっしゃいませシルバー様、どうぞこちらへ。」
と部屋へ案内してくれた。
ブライアンの屋敷は武家屋敷のようで、通されたのは庭に面した大きな部屋だった。
戸は全て外されて、床には朱色の敷物。庭の金色、赤銅色の木々そして燃えるように赤いモミジがライトアップされて、それはそれは美しい。
「どうぞ、足を崩してお座り下さい。」とフカフカの赤いクッションを勧められた。
色白で黒髪おかっぱの赤い着物が似合うメイド達が用意をしてくれている。
「ブライアンさん 素晴らしい屋敷ですね。」
「結構我儘言って作って貰ったんだけど、本当に武家屋敷にして良かったと思ってるよ。」
俺は頷いた。
「あっ、ブライアンさんこれはうちのシェフからです。《ひれ酒用のセット》だそうです。」
「ひれ酒ですか〜良いですね。後で皆んなで飲みましょう。」
「おう お待たせ。」
ザックさんが黒い着物でやってきた。
「ザックさん着物も似合いますね。」
さすが芸能人。着物での身のこなしも板についている。
そう言えば時代劇にも出演してたもんな。
八寸を食べながらひれ酒を飲んでいるとザックさんが話を始めた。
「今回の大型魔物討伐にはタンク、アタッカー、ヒーラーのパーティメンバーが必要だ。ブライアンと僕はアタッカーで、シルバーはタンクなのでヒーラーが必要になる。」
俺は皆んなの戦闘力について考えた。
ザックさんは魔術士
黒赤魔術士
熱と氷の魔力
サンダー系魔力
レベルは50位だったと思う。
HP低
MP高
OP: 中
魔力MPが非常に高く、HPが低いので敵からの攻撃に弱いので遠距離からの攻撃が得意
暴火のスキル持ち
VRでの戦闘経験有り。
えーと、ブライアンさんは侍で、
飛龍派の侍
刀での物理攻撃
現在の経験値不明
HP 中
MP: 低
OP:高
魔力MP自体は低いが物理的攻撃力OPが高く、接近戦で敵に大きなダメージを加える。このゲームは始めたばかりだが他のVRでは対戦経験有り。
俺 騎士
ナイト
シンボル: 剣
サンダーシャックの就職時の契約でレベル1000
HP高
MP: 高
OP: 高
ナイトはタンクとして囮となり敵の攻撃を受けるのでHPは高く、また入社時に貰ったチートでヒーリングも魔法攻撃も可能。ただ経験値は高いがVRとVLS共に戦闘の経験無し。
……
「おい、シルバー聞いてるか?」
「ああ、すみません。」
ザックは続けた。
「現時点でVLSで入ってきてる奴は殆どが、既にパーティを組んで ここへ来てるから単独でゲームをしてる奴を探すのは難しい。そこでサンダーシャックに相談したら、助っ人がVRで参戦してくれる事になった。そして俺のカメラクルー3名も特別枠で参加が許可されたんだ。」
「じゃあ動画撮るんだね。それなら私は問題無いか確認しなくちゃいけない。」
ブライアンさんも有名人だから、勝手に画像を流されては困るのだろう。
「じゃあ俺も確認しておきます。」
いちおう会社に報告しておこう。
「もし問題があるようなら編集でなんとかするから言ってくれ。」
俺の場合レベルもスケルもチートでかなり強い筈だが、実はVLSだけじゃ無くVRでも経験無しの初見…
戦闘時のリアリティはきっと半端じゃ無いだろう。
段々と不安になってきた。
「そうそう、これが遺跡内のマップです。これ以外は未だ情報が出てないので、結局は行って戦ってみるしかないですね。」
取り敢えず明日は10時に冒険者ギルドで待ち合わせることにした。
お読み頂き誠に有難うございます。